勇義がPSPでモンハンをしていると新田が慌てて声を掛けてくる。
「勇義君!大変っす!」
「どうしました?」
「同級生の虎杖君が死んだって知らせが…!!」
勇義は目を見開く。
今日は勇義と虎杖達は別行動だった。
勇義と他三人で別々の任務を割り振られたからだ。
勇義は虎杖達の任務内容を聞かされていない。
故にこそ何が起きたのかは推測するしかない。
(虎杖が死んだ…?それだけ難易度の高い任務を突然与えるか?……いや、今はそれより他の皆の心配だな)
勇義は思考を切って新田に質問する。
「他の皆は?」
「軽い怪我はしてるみたいっすけど、無事みたいっすよ」
「そうですか。教えてくれてありがとうございます」
「いえ、そんな……」
新田は暗い表情をする。
対照的に勇義の顔は明るい。
「術師なら命を懸ける場面は数多ある。虎杖の場合は今回がそうだったんでしょう。俺達がうだうだ言っても仕方ないことです」
「うーん…強がりめ!」
新田は勇義の頭を無理矢理撫でる。
勇義はされるがままだ。
「辛い時は大人に寄り掛かって良いんすよ。友達失って辛くない訳ないでしょ?」
「出会って二週間やそこらですよ。その程度で……絆される程………」
勇義は最後まで言葉を紡げずに唇を噛み締める。
勇義は強いことで忘れられがちだが、未だ十五歳の子供である。
そう簡単に仲間が死んだことを割り切れる性格もしていない。
「勇義君は強いっす。でもまだ子供っすよ」
「………」
勇義は新田の優しさに素直に甘える。
人に頼るということをして来なかった勇義には慣れないことである。
「新田さんは仲間が死んだ時、どう割り切ってます?」
「割り切れてなんかいないっすよ。いつも引き摺ってます。だからそういう時は、酒飲んでパァーッと忘れるようにしてるっす!」
「そっか。そういうもんか」
(割り切る必要なんてない。それも含めて人間らしさだから……あぁ。良かった。俺はちゃんと人間だ)
生まれた頃より莫大な呪力を持って生まれた勇義は人間性に拘っていた。
禪院家のみならず、他の術師からも向けられる畏怖、妬み、嫉み、恨み。全てが憂鬱だった。
勇義は怪物だと言われ続けて来た故に、自分が人間であることを確認して安堵する。
そしていつまでも撫で続ける新田に文句を垂れる。
「いつまで撫でてんですか。自分は猫じゃないですよ」
「勇義君の髪ってサラサラしてるっすね。ずっと触っていたいっす」
「髪が乱れるのでやめて下さい」
勇義はそう口にして離れる。
新田は名残惜しそうにしながら諦めたのだった。
◇
翌日。高専内の神社の拝殿前の階段に一年生三人が腰掛けていた。
伏黒が虎杖の遺言を口にする。
その内容に釘崎が不満を顔に表した。
「長生きしろよって…自分が死んでりゃ世話ないわよ…アンタら仲間が死ぬの初めて?」
「
「俺は初めてだ。自分がいる時は護れるから」
「ふーん。伏黒は平気そうね」
「……お前もな」
「当然でしょ。会って二週間かそこらよ。そんな男が死んで泣き喚く程チョロい女じゃないのよ」
そう言う釘崎だったが、口元は歪んでいた。
勇義も伏黒もそれを見ても何も言わない。
下手な慰めなんて釘崎は嫌うだろうという判断だ。
伏黒が重たい空気を切り替えるように口を開いた。
「暑いな」
「…そうね。夏服はまだかしら」
そこに割り込む人物がいた。
髪をポニーテールに纏め、眼鏡を掛けた女子生徒である。
肩には刀袋を下げている。
「何だ、いつにも増して辛気臭いな。恵。お通夜かよ」
「真希先輩」
余りにも不躾な物言いに勇義が眉を顰める。
「真希ちゃん。一人死んでんだよね」
「げ。マジかよ……あー…なんかすまん」
「ハハッ。地雷踏んでら」
咎められた真希は素直に謝る。
そんな真希の姿を笑いながら現れる二つの影。
一つは口元を覆い隠した男子生徒。もう一つはパンダである。
釘崎が疑問を口にした。
「誰、この人達?」
「二年の先輩。真希先輩、呪具の扱いが勇義の次に上手い。呪言師狗巻先輩、語彙がおにぎりの具しかない。パンダ先輩。後一人乙骨先輩って唯一手放しで尊敬できる人がいるが、今海外」
「アンタ、パンダをパンダで済ませるつもりか。ってか禪院って…」
「そう。俺の親戚」
「似てないわねえー…」
釘崎は勇義と真希の顔を見比べてそんな感想を溢す。
パンダが手を合わせて話し始めた。
「いやーすまんね。喪中に。だがお前達に京都姉妹校交流会に出て欲しくてな」
「京都姉妹校交流会ぃ?」
「京都にあるもう一校の高専との交流会だ」
「でもニ、三年メインのイベントですよね?」
「その三年のボンクラが停学中なんだ。人手足りねえ。だからお前ら出ろ」
「交流会って何するの?スマブラ?」
「二日間掛けて団体戦と個人戦を行うんだよ。殺す以外なら何でもありの呪い合いだ」
勇義の言葉に釘崎が驚愕する。
「戦うの!?呪術師同士で!?」
「お互いに競い合わせることで実力を高め合ったり、後は名を売ったりっていう目的がある」
「逆に殺されないようミッチリしごいてやるぞ」
「…ん?っていうかそんな暇あるの?人手不足なんでしょ。呪術師は」
「今はな。冬の終わりから春までの陰気が初夏にドカっと呪いとなって現れる。繁忙期って奴だ」
「年中忙しいって時もあるがボチボチ落ち着いて来ると思うぜ。で、やるだろ?仲間が死んだんだもんな」
「「「やる」」」
三人は声を揃えて答えた。
釘崎が不遜な物言いをする。
「でも、しごきも交流会も意味ないって思ったら即やめるから」
「まあこんくらい生意気な方がやり甲斐あるわな」
「おかか」
「ちなみに勇義は私達の指導役な」
「そりゃそうか。俺の方が呪術師として長いもんな」
呪術師としてのキャリアは五歳から任務に当たっている勇義の方が長い。
故に全員の指導役として抜擢される。
そうして交流会へ向けた特訓が開始されたのだった。
◇
特訓を開始してから一時間。
各々が休憩を取っているタイミングで真希が勇義に質問する。
「そういや、勇義の術式って具体的にはどんな条件があるんだ?無条件?」
「無条件だよ。でも何でもかんでも適応しちゃうと人間性を失っちゃう気がして制限してる。生命が脅かされるってなった時は肉体がオートで術式を使うけどね」
勇義の術式【適応】は基本的には自身の意思で適応を行う。
例外として生命を脅かされる時は肉体がオートで術式を発動させる。
疲労や倦怠感など生物として最低限存在する機能は失わないように術式の発動を制限している。
しかし疲労が溜まり過ぎると過労死しないように肉体が適応を始める。
今のところは疲労がそこまで蓄積したことはないので発動していない。
真希の疑問が解消されたところで、勇義がそう言えばと話しを切り出す。
「この前物を出し入れできる呪霊を見つけたから捕獲しておいたよ。今は呪力の登録も済ませて俺の部屋に置いてる」
「マジか!?それ私にくれ!!何でもする!!」
「良いよ。元々あげるつもりで捕まえたからね。お礼はそうだな……今度一緒に映画見に行こう」
勇義は何でもすると言った真希に対して下心もなく返答する。
真希は大喜びで笑みを浮かべた。
真希は呪具を頼りにした戦闘スタイル故に呪具の持ち運びがネックとなる。
それを解消する格納型呪霊の存在は必須なのだ。
「映画か。何見るんだ?」
「最近話題の恋愛映画。泣けるらしいよ?」
「私そういうので泣いたことないんだよな」
「確かに、そういうとこ冷めてそう」
「あ?」
勇義は真希の怒りを受け流す。
真希も別に本気で怒っている訳ではないのでそれ以上何も言わなかった。
そうして休憩を終えて再び生徒達は特訓に励むのだった。
・オリ主
実は映画とかあんまり見たことないので楽しみにしている。
・真希
オリ主とは子供の頃からの付き合い。
直哉や他の禪院家男児による暴行から真依共々助けられて感謝している。