デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING -Outside the screen is shadow-   作:通りすがりのヌメモンA

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こんばんは。
新たに開いて下さった方、はじめまして!
もしも読んでくださっている方がいましたらお久しぶりです!!

まずは、後編を出すに辺りここまで時間がかかってしまった事に懺悔致します。
とりあえず、活動報告辺りに謝罪文を投函致しますのでご容赦を…!

最終的に妄想を書き殴った内容なので、捏造設定、独自設定、妄想乙…などなどをご留意の上、お読みください。

初めてお読みになる方は、前編とその前日譚となる短編も併せてお読みいただけると幸いです。






ミレニアモン VS クレニアムモン! データ制限コロシアムでの闘い!(後編)

 

☆

 

 

デジタルワールド西方、深緑に包まれた美しき島。

土地の殆どが樹木であり、昆虫系・植物系デジモンの楽園と思える程の肥沃なエリアである。

 

しかし、その緑溢れる島の大地に巨大な戦痕が刻まれていた。

島を真っ二つに横断するかのように刻まれたその一撃は、森林を蒸発させ土を剥き出しにしており、地面は未だに高温を放ち赤熱している。

ところどころ色が違うことから下部の地層が掘り出される程の深さだとわかる。

平均して20〜30m程度だろうか。

深さこそややバラつきがあるものの、その傷跡は真っ直ぐ一直線に刻まれていた。

この島に座すイグドラシルの神殿、そしてそこから結ばれた直線上の山を幾つか抜けて、森の中で少しばかり迫り出した崖の上。

 

崖の上で不自然に蠢く、森ーーー

 

その森が突如、文字通りひっくり返った。

地盤ごと天地が反転したかのように土埃と木々が舞い、森の下から巨大な影が立ち上がった。

影は切り出した崖や岩の様な姿では無く、とある生き物を模った姿をしていた。

現実世界においては幻想上の生物。

その中で最も有名と言っても過言ではない知名度と、強大な力を持つモノとして伝わる存在。

ドラゴン。

それも東洋における龍ではなく、西洋における竜と呼ばれる姿のソレだった。

 

しかして、その正体はただの竜にあらず。

この島に座すイグドラシルを守る為の守護騎士たる一柱。

聖騎士型・究極体のデジモン。

ロイヤルナイツ、エグザモンである。

 

立ち上がったエグザモンはロイヤルナイツ間で結ばれた特殊な回線を通じ、遠く離れたクレニアムモンへと思念を飛ばした。

 

『無事か?無事だな!?クレニアムモン!!!!』

 

『ええい、五月蝿い!

何故貴様の声は通信越しだというのに、ここまで大きく響くのだ…!?』

 

近隣に潜んでいたのだろう、ロードナイトモンの声が思念通信に割り込んだ。

空間ごと焼き払うような攻撃の後だ。

専用回線であるとはいえ、同期している他の騎士との混線が起こった様である。

ロードナイトモンの苦言に対して『相すまん!!』という胴間声が回線に木霊した。

頭を揺さぶるような再びの爆音にロードナイトモンが苦しんでいると、ややあってクレニアムモンからの応答が入電する。

 

『…問題無い。作戦通り、攻撃のタイミングも完璧だ。

貴様の大声さえなければ私の傷もより少なかったろうな』

 

端的に現状を伝えるだけかと思えば、この皮肉。

鉄壁を誇るクレニアムモンであっても、頭の内側からの音響攻撃には対処出来なかったようだ。

そして続く『無事か!!よかったァ!!!』という相槌により、通信先の2体は苦悶の声を飲み込んでいた。

 

頭痛を抑え込みながら、ロードナイトモンは現状を思い返す。

 

ゲンガイとの戦闘を想定するにあたり、ロードナイトモンとドゥフトモンの2体は、ミレニアモンという脅威よりもゲンガイが保有するであろう大量の手数(デジモン)と未知の切札、そこに備わった知略奇策を強く恐れた。

ミレニアモンと合わせて結界で押さえ込む策こそ決まったものの、エージェントとしての演算や解析といった能力は健在。

時間をかけてゲンガイの手札を全て晒すことが出来たとしても、こちらの戦力が揃ったタイミングで逆に奇策を用いてひっくり返されてはたまったモノではない。

策士たちはゲンガイを微塵も侮っていなかった。

 

そして幾つかの策を練る中で、クレニアムモンによる一騎打ち(ゴリ押し)こそが最も勝機の高い戦術であると位置付けた。

戦闘中、意識の外ーー結界の外から攻撃する策を組み込むことにしたのも、クレニアムモンであれば必殺技・ゴッドブレスによる防御で巻き添えを回避できるからだ。

攻撃のタイミングは"クレニアムモンがゴッドブレスを発動していること"、その上で"結界が解除されていること"。

序でに言えば、攻撃の照射時間は1.0秒に収めることも条件だった。

無論これらは主軸に据える策では無く、あくまでも次策。

本命は始めからクレニアムモンによるゴリ押しだ。

 

しかし、予想以上の一手となった。

現にゲンガイの手数を大きく減らし、結界が再展開されようとしている。

このままいけば、順当にクレニアムモンが勝つだろう。

 

『作戦はこのまま続行だ。

クレニアムモン、貴兄の槍で必ず奴を倒せ!』

 

『ああ、任せておけ。…では切るぞ』

 

ロードナイトモンからの冷静ながら熱の込められた激励に返答すると、クレニアムモンは早々と回線から離脱した。

結界が再展開されれば、ロイヤルナイツの特殊回線であっても通信は機能しない。

 

しかしそこに居るもう一体、エグザモンは慌てた様に通信で声を上げる。

主にクレニアムモンから己への扱いの悪さ故だ。

 

『おおい!?待て待て!!

お前を心配していた俺に対しては何も無しか!?

幾ら俺とて、必殺技ぶち込むなんて暴挙は思うところが…』

 

「「「エ・グ・ザ・モ・ン・さ・まーーー!!!!」」」

 

通信で大声をぶちまけていると、どこからか己を呼ぶ小さな声に気付き、エグザモンは通信での声を止めた。

キョロキョロと見回している内に、自身の足元に多数のデジモン達が群がっていることに気がついた。

デジモン達はどこか殺気立ってる様子であり、その様子に首を傾げながらエグザモンはのんびりとした口調で問いかける。

 

「んお?どーした、オマエら」

 

「「「どうしたじゃ無いわ!」」」

 

エグザモンに比べれば余りにも小さな…実際にはかなりの声量でデジモン達は怒りの声を上げた。

このデジモン達は先程までエグザモンに協力していたこの島の住人なのだが、その内容はエグザモンが森の中で潜伏する為の偽装を施すことである。

集まったデジモンはウッドモン、ベジーモン、ブロッサモンといった植物系から、デラモン、キウイモン、ギリードゥモンといった木属性の性質を持ったデジモンばかり。

つまるところ、彼らはその外見を活かしてエグザモンの背中に貼り付き、彼の即席ギリースーツへとなっていたのだった。

 

「アンタがいきなり立ち上がるモンだから、背中に乗ってた俺らはいきなり自由落下だぜ!?」

 

最初に声を上げたのは年若いウッドモン。

よく見れば身体の一部が割れたり折れたりしている。

落下の衝撃によるものだろう。

 

「色々と手間が惜しいって話だったから、ロードナイトモン様のお願いでカモフラージュに協力したのに、こんな仕打ちったら無いよ!」

 

次に文句を言ったのはオウリアモン。

頭を打ちつけたのか、たん瘤をこさえており涙目だ。

ウッドモンに比べれば柔らかい体ではあるものの、流石に衝撃を殺しきれなかった様だ。

 

「戦場になるって理由で周辺から避難してきた成長期や幼年期だっているんですよ!?

アナタ、デカいんだから少しは気を遣って下さい!!」

 

最後に声をかけたのはジュレイモン。

彼の緑が茂った頭部には、ぐずって泣きそうな幼年期が多数とそれを宥める成長期たち。

一部の恐れ知らず達は自由落下が楽しかったのかキャッキャと明るい声を出しているものの、実際は生命の危機と変わらなかったのだ。

 

通信越しに彼らの文句を聞いていたのか、ロードナイトモンは疲れた様な声でエグザモンへと釘を刺す。

 

『貴様という奴は…。

とっとと謝って次に備えよ。後が詰まってる』

 

短くそれだけ言って、ロードナイトモンも回線から離脱した。

残っているのはいたたまれない雰囲気で頬を掻くエグザモンと、じっとりとした視線を向ける数十体を超えるデジモン達。

エグザモンは足元に気をつけてながら一言。

 

「あー…ゴメンな?⭐︎」

 

「「「さっさと去ねーーー!!!」」」

 

巨大ドラゴンのテヘペロとは誰得なのか…。

激怒するデジモン達から逃げるようにしてエグザモンは翼でもある生体鎧・カレドヴールフを勢いよく羽ばたかせ、その場を離脱した。

 

…当然、凄まじい暴風が吹き荒れたことで三次災害が起き、デジモン達の死屍累々な様が転がっていたことは忘れてはいけない。

 

 

☆

 

 

僅か1秒の高出力レーザーの照射により、焼け野原に変えられ破壊された神殿。

神殿の外郭辺りからは、結界が再びドーム状に展開され始めていた。

天井は崩れ、そこらな覗く空には巨大な影が飛翔している。

 

それは先程攻撃を行ったエグザモンではない。

空に座すのは、古代デジタルワールドを席巻していた巨鳥・オニスモン。

今回の作戦の為、クレニアムモンが力を示して従えた空の乗騎。

 

《〜〜〜〜!》

〈ありがとう、私は無事だ。

それよりも、お前が奴に取り込まれる事の方が厄介だ。

先に伝えた通り、この空域から離脱しろ〉

 

言葉でこそないが、主人を慮る鳴き声が思念に乗りクレニアムモンへと届く。

繋がったオニスモンを安心させるように思念を飛ばすと、オニスモンは命令に従って渋々ながら空域を離れていく。

 

オニスモンの役目は陽動。

それもエグザモンが神殿の上空域に存在していると思わせる為だけのものである。

データ規模の大きいオニスモンだからできた事であり、事実気を逸らされていた故にゲンガイは横方向からの砲撃を警戒出来ず、完全に防ぎ切れてはいなかった。

 

ゴッドブレスで身を守り切ったクレニアムモンに対して、一方のゲンガイはズタボロ。

肉体のテクスチャはところどころ解れ、一部はワイヤーフレームが剥き出している。

ミレニアモンは原型を保てずデータ片となって分解されていた。

必殺技・タイムデストロイヤーで出来る限り砲撃を相殺したにも関わらずこの様だ。

顕現していた筈の3体の究極体に至っては見る影もない。

エグザモンの一撃に巻き込まれ、抵抗する間も無く一瞬で蒸発、デリートされたからだ。

 

よろよろと立ち上がりながら後ずさるゲンガイ。

止めを刺す為、ゆっくりと近づくクレニアムモン。

 

照射完了から1秒の時点で再展開された結界(檻)は、約4秒をかけて完成した。

ゲンガイの残った手駒は不明だが、このまま仕切り直し振り出しに戻すのではなく、決着をつけようと刃を振り上げるクレニアムモン。

ゆっくりと進めていた足が大地を踏み砕き、その間合いを詰めようとする。

 

ーーーそしてクレニアムモンが再び危機を直感する。

 

背後から飛来するのはブレイドクワガーモン。

砲撃の照射角と位置取りの関係で(ゴッドブレスが盾になり)運良く攻撃から逃れていた。

気絶から復活していた彼は地中を掘り進んで期を伺い、最初に命令された「敵の命を狙う」という指示をマシーン型らしく機械的に実行していた。

 

しかし種が割れていればクレニアムモンは対処できる。

武器も体勢も問題無い。

立ち止まるも振り返る事なく槍の石突で弾こうとして、

ーーーその一撃が空を切る。

 

そしてその致命の一撃が遂に胸へと突き刺さっていた。

 

「…な……に…!?」

 

反射的に背後へと斬撃、そして何も無い筈の空間に手応え(・・・)。

空間が揺らぎ真っ二つになったデジモンの姿が現れる。

シールズドラモン。

暗殺を専業とする機械化旅団の尖兵。

この個体はゲンガイが育成した、進化前のコマンドラモンのテクスチャ(擬態)能力を引き継いだ特殊個体。

必殺技を用いて弱点を見切り、ブレイドクワガーモンという武器を用いてこの一撃を叩き込んだ。

 

「…ニ、…ニンム……カ、ン……リョ……」

 

クレニアムモンは消え去る暗殺者には一瞥したのみで、今度は胸元に突き刺さった刃を折り砕いた。

そして地面に転がり、無様にひっくり返った姿を晒すブレイドクワガーモンの本体を踏み潰す。

 

逆転に次ぐ逆転。

ハマった奇策も含め、今度こそ追い詰めたと思った所で致命となった思わぬ反撃。

デジコアこそ直撃を避けた故に辛うじて無事だが、間違いなく重傷だった。

この負傷による機能不全で、クレニアムモンは結界の再展開が不可能となる。

今ある結界の維持のみがせいぜいだろう。

故にこの結界の破壊・解除を許せばゲンガイを逃す要因となる。

 

しかし一方でゲンガイは、結界を破壊でき得るだけの火力が無く、弱っているクレニアムモンの撃破へと方向を定めた。

焼け爛れて剥き出しとなったアバターのワイヤフレームを無視して、今度こそ奥の手を呼び出した。

完全体・魔人型のアスタモン。

完全体・突然変異型のディノビーモン。

 

究極体に匹敵する力を秘めた魔人型のアスタモンは容量が大きいものの、完全体故に結界内でも十全にパフォーマンスを発揮する。

ディノビーモンはその獰猛さに加えて、必殺技の一撃は直撃すれば究極体にすら届き得る火力を持ち合わせていた。

 

負傷から構え直したクレニアムモンの僅かな隙に差し込むように、ゲンガイは嗤いながら口を開いた。

 

「やれ」

 

その一言を皮切りに火を吹くマシンガンと、四方八方から襲い来る爪と刺突。

疲弊・消耗したクレニアムモンはブラックデジゾイドの鎧があれど防ぎきれない傷が増えていく。

回避、反撃、修復を高速で行っているものの、負荷が形となって現れ、目に見えて追い詰められているのがわかる。

 

しかし、同時に彼は確信を得る。

 

(このタイミングで究極体に匹敵するアスタモンを呼び出した。

だがアスタモンはどこまでいっても完全体、余程の鍛え抜かれた個体でなければ上位の究極体には及ばない。

つまりは本当の本当に最後の戦力!

ゲンガイの手駒にはもう究極体がいない。

私(クレニアムモン)に対抗し得る戦力はここで打ち止めだろう!)

 

クレニアムモンの推測は正しい。

ゲンガイが手駒としたデジモンの多くは、制御可能な完全体以下が殆ど。

ミレニアモンのようにデータ復元によって手に入れた存在がそもそも例外。

テイマーの様に育成・トレーニングを行い、時に自ら蠱毒の様な状況を作り上げて戦闘経験を積ませ、ようやく究極進化まで至ったのが先の3体である。

 

アスタモンはダークエリアに出向いた際、偶然転げ落ちて来たボタモンのようなもの。

何らかの抗争で敗れ去った個体を鹵獲した後、回復・強化を以て仕上げたとっておきの一つ。

ディノビーモンは人工的なジョグレス進化の実験で偶然成功した失敗作(・・・・・・・・・)。

竜と虫の因子を掛け合わせる際に凶暴過ぎる虫系デジモンのデータを組み込んだ故に産まれた狂戦士(バーサーカー)。

そしてこの2体の潜在能力の高さ故、ゲンガイは完全な制御下に置く事が出来ていない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)。

それ故の奥の手。

 

クレニアムモンはお互いに余裕の無い、決戦のタイミングであることを理解していた。

それはゲンガイもまた同じ。

 

アスタモンが完全体であるが故に、ほんの僅かに浮いたリソース。

その僅かに残ったリソースがあれば成長期の1体程度ならば顕現出来る。

ルドモン程の性能が無くとも、この局面であれば僅かコンマ1秒の妨害・遅延すら致命の隙となり得る。

 

双方が極限の状態で勝利を狙う思考へと傾く。

故に両者共に気づくことができなかった予想外。

それはこの攻防の終わり、結界の再展開から約300秒後に訪れた。

 

攻防の中、遂にクレニアムモンの態勢が崩れる。

アスタモンのヘルファイアがクラウ・ソラスを弾き飛ばした。

そこにディノビーモンのヘルマスカレードが直撃し、顎を揺らした。

人間で言う脳震盪を思わせる状態へと誘う致命の一撃。

しかしクレニアムモンは倒れない。

 

そして最初の発動から300秒。

ゴッドブレスのクールタイムが終了する。

 

この時点でゲンガイは勝ちを確信する。

2度目のゴッドブレス。

それさえ往なせば確実に堕とすことができる。

だが、面制圧のアスタモン、支配領域を飛び回るディノビーモンの二体の攻撃を凌ぎ、この状況から態勢を立て直すにはそれしかない。

 

対するクレニアムモンも万事休すかと頭に過ぎる。

ゲンガイの思考通り、現状打開の最善手はゴッドブレス。

しかし同時に最終手段。

先に受けた傷もあり、発動後訪れる300秒のクールタイムの内に、討ち取られるだろう。

 

しかし、それでも勝ちを諦める事はない。

先のゲンガイの予想に反して、聖騎士達はイグドラシル本体の護衛役を除けば、未だ島の各地に点在していた。

これは、ゲンガイの奇策や仕込まれた罠を警戒したモノであり、集結の前に島全体を改めてクリアリングする為の行動だった。

故に少しでも時間を稼ぎ、増援が来るまで耐え凌ぐ。

クレニアムモンは決死の覚悟で盾を構えた。

 

(耐え凌ぐことが出来ないとしても…!)

 

クレニアムモンが構えるのと同時に、ゲンガイは背後にゲートを展開した。

ゴッドブレス発動中、クレニアムモンは攻撃・反撃を行うことが出来ない。

その間に手駒のデジモンを安全に顕現させ、確実に隙を作る。

クールタイムを数えることなどせず、3秒後きっかりにクレニアムモンを倒す。

ゲンガイはそう思考して手駒を呼び出した。

 

『ゴッドブレス!!』

 

「来い…ーーーー!?」

 

 

 

瞬間、双方が予測していなかった事態が発現する。

ゲンガイとクレニアムモンの動きが止まった。

それだけでは無い、アスタモンは銃の引き金を引いたまま、ディノビーモンは空中で羽を広げたまま、躍動感のあるフィギュアの様にフリーズしている。

 

結界の容量超過による強制停止。

警戒し、されど既に両者の思考から抜けていた要素。

 

クレニアムモンはゴッドブレスに包まれたまま、この事象に困惑する。

彼が何かを仕組んだ訳では無く、仲間の策とするには余りにも不可解な事象だった。

 

一方のゲンガイが感じていたのは焦りだった。

ゲンガイはクレニアムモンよりも先にこの状況の要因に勘づいていた。

先のブレイドクワガーモンによる強襲を遠因として起こったクレニアムモンの負傷が、出力低下という形で現れたのだ。

 

これはゲンガイが見落としていた結界の効果。

結界の容量制限は結界の起点であるクレニアムモンに与えられる容量を始めに決定・参照し、その後結界内の両者に適応される。

最初から一律の数値で結界に数値が紐付けられているものではない。

負傷の影響でクレニアムモンに許されていた出力低下に比例して、容量制限のラインを引き下げた。

 

部分解析とこれまでの戦闘で得た情報を参照していたこと、そして戦闘の高揚による短略化された思考が引き起こした落とし穴。

ゲンガイを追い詰めたのは彼自身が尊び、ホメオスタシスが排そうとした人間性という隙だった。

 

結界に影が差す。

天井から溢れていた日光が遮断され、巨大な影が神殿にせまりつつあった。

周囲一体を夜に変えんとばかりの巨体は、オニスモンのモノでは無い。

 

ゲンガイは見た。

天井の隙間から覗く赤い巨影を…!

 

ドラゴニックインパクト。

これこそ、ゲンガイ確殺の為にロイヤルナイツが仕組んでいたもう一つの策。

クレニアムモンにすら知らされていない、奇策にして自爆策。

 

デコード限界ギリギリの超データ量を誇るエグザモンを用いた無差別質量爆撃である。

エグザモンが結界に触れると同時に、その天央に罅が入る。

しかし僅かな遅延にもならず、侵入した巨体がフリーズした内部全てを押しつぶしながら轟音と共に地に伏した。

 

 

☆

 

 

エグザモンの身体がデータに分解され消えていく。

イグドラシルの神殿と結界を攻撃・破壊した行為が反逆罪として機械的に処理され始めたのだ。

自ら背負った罪、その咎を受けて暫くの休眠に着くのだ。

この消滅もまたロードナイトモンとドゥフトモンによって最初から組み込まれていた策の一部である。

 

クレニアムモンは押し込められていた土の中からムクリと起き上がる。

直撃こそ防いだものの、十数秒に渡り倒れていたエグザモンの重みを受けてはこうもなる。

 

「今度も無事だな!?クレニアムモン!!」

 

「だから煩い…!」

 

満身創痍、しかしトドメが身内という笑えない展開とならなかったのは、展開に成功していたゴッドブレスで着弾時の衝撃と質量を無効化していた故であった。

分解されながらも胴間声を響かせる竜帝を素気無くあしらいながら、その巨体に手をつくようにしてクレニアムモンは立ち上がった。

 

「しかし、助かった…。

私に作戦を伝えない(・・・・・・・・・)事で奴に悟らせない策が上手くいったな」

 

「ハハハハ!!参謀たるロードナイトモンと我らが頭目たるドゥフトモンに感謝せねばなぁ!!」

 

「…ああ。貴殿もな、エグザモン」

 

消え際のエグザモンがまた大声で叫ぶ。

クレニアムモンは頭を揺らされながらも、別れを前にして労いの言葉をかけた。

そしてエグザモンのデータ分解が進んでいく。

 

エグザモンの再攻撃に関しては、クレニアムモンには全く知らされていなかった。

先のクレニアムモンの言葉通り、これまたロイヤルナイツの軍師二人による采配だ。

一度目の長距離狙撃(ペンドラゴンズグローリー)、更には滞空させていたオニスモンの存在により、不介入と思われたエグザモンの用兵をブラフと併せて開示。

目紛しく変わりゆく戦場であっても、充分な印象付けと予想外の一手だったろう。

 

クレニアムモンの目線の先には、倒れ伏すゲンガイの姿。

とはいえ、先の一撃で流石のクラウソラスも全損していた。

アヴァロンなど、重量によって更なる負荷が祟ったのかゴッドブレス解除後には砕け散っている。

クレニアムモンはやや身体を揺らしながらも赤壁から片腕を離し、今度こそトドメを刺す為に新たに槍を生成した。

しかし最早この距離でさえ、歩くのも億劫だ。

残った力を右腕に集め、投擲の構えを取る。

 

 

投擲しようとした所で、その身体が上下に両断された。

 

 

 

「………は?」

 

「え、あ?おい、クレニアムモ……!?」

 

 

 

驚愕のまま身体を地面に投げ出されるクレニアムモン。

消えゆくエグザモンが目を見張るも、次の瞬間声を出す間もなく完全に消滅した。

彼が今まで保っていたのは、身体を構成するデータ量があまりに強大だった故。

そして、それが最後の攻防の決め手となった。

 

「大規模攻撃は確かに周囲のデータを乱し、相手の感知機能を低下させる。

だが、それは君も同じことだろう?

感知機能を補助する為の結界が破壊されれば、尚のことね」

 

クレニアムモンの背後にゲンガイが現れる。

先と変わらずテクスチャが崩れたままのボロボロ具合だ。

そしてその背後で揺らめき、蠢く巨影。

 

ズィードミレニアモン。

肉体の軛から解き放たれたミレニアモンの真の姿。

先程まで使役していたミレニアモンの肉体は確かに消滅している。

しかし、復元の元となったデータは未だゲンガイの手の内。

時間さえかければ量産は可能ではあるものの、そうしなかったのはゲンガイがデジモンを制御する為の許容限界に過ぎない。

 

しかし、この戦闘に参加させる程の状態での復元はこの場では不可能。

故にゲンガイは元データのカケラにX(・)プ(・)ロ(・)グ(・)ラ(・)ム(・)そ(・)し(・)て(・)X(・)抗(・)体(・)の(・)双(・)方(・)を(・)直(・)接(・)注(・)入(・)という荒技に出た。

 

データ片であっても確かに一つの生命として残存する生き汚さ。

しかして、生命の危機に対する本能が刺激されるも肉体は存在しない。

故に精神データだけが生存本能に駆られて暴走し、ズィードミレニアモンは顕現した。

 

とはいえ、これもまた不完全な復活。

コアとなるムーンミレニアモンも存在せず、ゲンガイは死にかけたデータから溢れ出した力の奔流を、辛うじてコントロールしているだけだ。

 

クレニアムモンは両断されながらも未だ生きていた。

その視界に未だ倒れ伏すゲンガイの姿が映る。

しかし、その姿が徐々にノイズに覆われて本来の姿が露わとなる。

そこにいたのは金毛碧眼の獣人型デジモン:レナモン。

必殺技:狐変虚による偽装だったのだ。

 

二度に渡るエグザモンという巨大データ攻撃の投入によって、周辺一体のデータは攪拌され乱れていた。

クレニアムモンが相手の気配を読み違える程に。

 

のそりと立ち上がったレナモンがゲートへ消える。

結界は既になく、ゲンガイが遠隔でデジモン操作をする能力を取り戻している証左だった。

そして同時にズィードミレニアモンも消滅していく。

データに分解されるというよりは、塵の様なより細かい粒子となって跡形もなく消えていく。

再び暗黒の海へ辿り着くかは定かでは無いが、少なくとも直ぐにゲンガイの手駒として舞い戻ることは無いだろう。

 

クレニアムモンの下半身が遂にデータへと還った。

残った上半身も切断面から分解されているが、それでも尚残された力でクレニアムモンはゲンガイを睨む。

 

「まさか…ここまで…!!」

 

「いや、読んではいなかったよ?

七面倒くさい結界もそうだけど、まさかエグザモンを使い切り前提で二度も投入するなんて、ロイヤルナイツも随分と野蛮になったじゃないか」

 

楽しげにそして愉しげにゲンガイは笑みを浮かべている。

事実、追い詰められこそすれど、心踊るような戦い(遊び)だったのだろう。

 

「ただ、本気で私を殺すつもりであれば、最初から島ごと(他のデジモンを見捨てて)エグザモンで砲撃するべきだったね。

それも二段構えでは無く一撃目、最速かつ最大出力でだ。

その上で足止めが必要なのであれば、君や他の騎士を完全に使い捨てる(捨て駒にする)前提とするべきだった。

その選択肢が無かったから、わざわざ一騎打ちなんて仕組んだんだろうけど」

 

どこかリラックスした様子で話しながら、ゲンガイは肉体の修復を始めている。

徐々に戻りゆくアバターのテクスチャを、クレニアムモンの手も槍も届かない位置でゆっくりと見せつける様に。

 

「ただやっぱりーー私はほとほと戦闘には向かないね。

構成要素の芯が探究・研究に傾いている(オリジナルの影響が色濃く根付いている)からかな。

君ほどの究極体相手だと、兎にも角にも色んなデジモンの力を試してみたくて仕方がない!

…故に、遊びが過ぎる余りに何度か足を掬われた訳だけどね」

 

自身も戦闘の高揚で判断を誤った部分があると言葉にするものの、先の失敗に反して楽しげだ。

ゲンガイは自身の人間性を見せつけるようにして語り続ける。

 

「だが、それを差し引いたとしても、君たちは"戦う者"を相手にした戦略は出来ても、"研究者"相手の戦略をわかっていなかった。

私にとって、戦闘での未知もまた楽しんで乗り越えて然るべきモノだから、奇策も過ぎれば一周回って予想がつくものだよ」

 

己の敗北した理由を聞き入れるクレニアムモンに対して、奇策が悉く裏目に出たことを揶揄するゲンガイ。

ロイヤルナイツは警戒を怠らなかった。

だが警戒が過ぎた故、策を弄し過ぎた余り、ゲンガイに隙を突かれることとなってしまった。

 

しかし、クレニアムモンはここで笑った。

 

「……フッ…!」

 

「?」

 

「確かにこの戦いは貴様の勝ちだ。

…だが、目的は果たした…!!我々の勝利だ…!!!」

 

「…!?…なるほど、そういうことね」

 

クレニアムモンの勝利宣言。

それは戦術的ではなく戦略的な勝利である。

今までの戦いは時間稼ぎでもあった。

ゲンガイも理解していた事実ではあるが、ロイヤルナイツの狙いはゲンガイやミレニアモンの討伐では無かった。

 

彼らの目的はイグドラシル本体、コアプログラムの退避だった。

物理的・データ的に切断、保護したそれを、今頃はスレイプモンとドゥフトモンが移送していた。

これによりゲンガイが再びイグドラシルへアクセスし、権限や機能に手を出す事は直ぐには不可能となった。

しかし、それを告げられたゲンガイに動揺は微塵も無い。

 

「いや、別に今はその辺には興味無いんだよね」

 

「何…?」

 

しかし、ゲンガイは寧ろ好都合だと嗤った。

怪訝に思うクレニアムモン。

 

「まぁ、あれば便利だとは思うけれど、最早無用の長物になりそうだし」

 

冥土の土産だとばかりにゲンガイは語り始めた。

彼の目的はイグドラシルの権限(・・)ではなく機能(・・)。

しかし、機能とはいってもそこにイグドラシル本体やコアプログラムは必要無い。

彼が求めていたのはイグドラシルが記録していたであろうデジタルワールドの全てが記されたサーバー。

そして残されている外付けの演算装置:スーパーコンピューターの二つ。

そこへアクセスし、とあるデジモンについて調べる為だった。

 

クレニアムモンは困惑した。

かつてイグドラシルに接続した折、過去に記録されたデジモンから未来に現れ得るデジモンに至るまで、あらゆるデジモンのパーソナルデータを調べ上げたゲンガイだ。

今更になって執拗に調べようとするデジモンとは一体何だというのか…?

 

クレニアムモンの疑問にゲンガイは朗々と答えた。

 

「私の目的は…『パラレルモン』だよ」

 

 

☆

 

 

パラレルモン。

並行世界を自由に渡り、時空を跨いで移動する権能を持つ究極体デジモン。

その存在は特異であり、デジタルワールドに現れなければ絶対に記録されない。

そして、この世界のデジタルワールドについ先日出現したばかりである。

 

現れたばかりでクレニアムモンですら存在を把握していなかった…否、恐らく知っていたのはイグドラシルの意思か、ドゥフトモンやロードナイトモン位だろうが。

そのイグドラシルの記録に刻まれて新しい筈の、未知の存在について何故知っているのか。

目の前でその存在と対峙したから(・・・・・・・・・・・・・・・)に他ならない。

 

 

突然の強襲だった。

ゲンガイがミレニアモンを調整している最中である。

なんの予兆も無くパラレルモンは現れた。

 

同時に、何の因果かとあるテイマーとデジモンも。

 

並行世界を跨って繰り広げられた知られざる戦い。

ゲンガイはそこに巻き込まれる形で参戦せざるを得なかった。

パラレルモンの力で断絶された空間に閉じ込められていたのも理由だったが、突如現れたテイマーはゲンガイからして未知の存在だったからだ。

 

既知のデジモン、未知の進化。

未知のデジヴァイス、未知の独自技術・戦術。

いつの間にか興味を唆る未知が増えていた。

 

どうにかパラレルモンを撃退することに成功した後、テイマーとゲンガイは束の間の交流を持つことになる。

その中でゲンガイはようやく並行世界について知る。

 

かつてイグドラシルに接続した際に閲覧した、荒唐無稽な戦いの記録。

イグドラシルが演算したあり得た別の可能性として、深く考えることなくゴミの様にスルーした記録。

それが、もし時空の彼方で本当にあった出来事だったら?

 

こうしてゲンガイは『クロスウォーズ』という特殊事例を例外的に知覚することとなる。

そしてテイマーが帰還した後、改めてゲンガイは並行世界への興味を強めていった。

ちょうどその頃、今いる世界での活動に窮屈さを感じ始めていたからでもあった。

 

しかし同時に干渉する方法については頭を悩ませた。

何せ、ただゲートを開くのとは異なる技術だ。

テイマーとそのデジモンは、自身の属する世界の助けがあっての来訪であり、並行世界を移動する術は持たなかった。

 

そこでパラレルモンに目をつけた。

だが、神出鬼没の奴を捉えるのは容易では無い。

何より、

時空の乱れが頻発する世界線でも無かった(リブートは実質的にノーカン)為にその兆しすら見つけるのが困難だった。

 

イグドラシルのサーバーに記録された情報から、再びパラレルモンがこの世界に現れるタイミングを演算する。

再び偶然の遭遇を待つのを除けば、それが一番確実性が高い目算となった。

 

この世界においてパラレルモンを唯一知る故の縁を持ち合わせてはいるが、それだけでは弱い。

時期や場所、時空間の歪みに関するetc.そういったデータを総合して、より確実な遭遇を求めていた。

 

そして計算の為の高精度のスーパーコンピューターを検討する中で、デジタルワールドの情報を網羅するであろうホストコンピューターでもあるイグドラシルを選んだのだ。

 

 

☆

 

 

ーー現在。

 

クレニアムモンの消えかけの身体。

傷口からゲンガイは手を突っ込んでいた。

人間で言うなら、内臓を直接手づかみにされるような激痛。

ゲンガイが干渉していたのはデジコアだ。

 

そこから抜き出されたのは先程までゲンガイを苦しめていた結界の構築データ。

手に掴んだ光球の様なソレを握りしめるようにして取り込み、自身を中心として展開。

展開するだけで思った以上に自身のリソースを喰われるのがわかり、ゲンガイは眉根を寄せる。

激痛に耐えていたクレニアムモンは耐えかねたように静かにデータへと還っていった。

 

ようやく本命のサーバに向かえると足取り軽くゲンガイが歩みを進める。

 

 

 

その瞬間、ゲンガイの首が落ちた(・・・・・・・・・・)。

 

 

 

 

理解できないという顔のゲンガイの頭がゴロリと転がる。

現在のゲンガイは結界を展開したまま。

自身のリソースを削られている(現在は出力が低下している)関係上、究極体であるロイヤルナイツが結界に侵入すれば、その時点で容量超過となり即座にフリーズが起こる。

それにも関わらず、ゲンガイの首が見上げた先には全身を赤いマントで覆い隠した騎士の姿が。

 

…否、纏ったマントがめくれてその姿が露わとなる。

ソレはゲンガイと縁ある聖騎士・ジエスモンとよく似た姿。

だが、特徴とも呼べる筈の両手と尾に装備された刃はデジ文字が無くどこか短く荒削りな印象。

体長も幾分か小柄に見え、人を模した聖騎士というよりも竜の特徴が濃く現れている。

完全体(・・・)・セイバーハックモン。

それが今の彼の名前だった。

 

ゲンガイはここに来てようやく理解する。

自身もまた最初から外していた選択肢。

そうなるように仕向けた(・・・・・・・・・・・)知将たちの計算。

そして、結界を考慮してのわざわざ完全体まで退化しての強襲。

保険に保険を重ねた最後の一手がコレだった。

 

結界が解ける。

立ち尽くしていたゲンガイの身体がゆっくりと倒れた。

 

仰向けとなった頭部の先には刃を向けるセイバーハックモン。

袂を分かったとはいえ仲間である聖騎士の最後を見殺しにせざるを得なかったからか、その目には涙が浮かんでいる。

 

「まさか、君が来るとはね。

残念だよ、もう少し楽しみたかったんだが」

 

ゲンガイは死を目前にして尚、ニヤニヤと嗤っていた。

目的は果たせないだろうに、今 心(・)に感じているのは間違いなく感動だった。

 

「いやーまさか…本当に聖騎士2体は捨て駒にしていたとはね…!!

…残念なのは、私の価値はせいぜいたった2体と釣り合う程度だった、と言う事かな?

散々こき下ろしておいて何だけど、実に冷徹な策だ!

『お見事!』とでも伝えておいてくれるかい?」

 

死にゆくゲンガイの戯言を無視し、セイバーハックモンは鋭く視線を強めた。

そして苦しげながらも吐き出すように、因縁の終わりを告げるのだった。

 

「…ようやくケジメをつけられた。

これで終わりだ…!」

 

「どうかな?

今この瞬間、世界のどこかで、また新たな悪意は既に芽生えている…!」

 

 

 

 





お読みいただきありがとうございます!

後、無駄に長い後編ですみません…。
多機能フォームで遊んだ部分もあり、重ねてすみません…。

恐らくですが、作中にて匂わせてるような描写・発言につきまして、必要最低限の設定開示もできていないと思います…。
設定について質疑、批評などありましたら、感想にいただけると幸いです。

改めてお読みいただきありがとうございました!
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