約束を果たしましょう 作:燈台
参考に↓
一:漢数字の1
ー:伸ばし棒
――:ダッシュ(?)
上から下の順で並べてみると 一ー――
読みづらいと思いますが、どうぞよろしくお願いします!
第ゼロ章 01「銀鈴の声の少女」
夜、コンビニの入店音が鳴り響く。
「あーなるほど、ここで引きね」
漫画を閉じて、窓の外に見えるカップルだと思われる学生を一瞥してから、棚に戻した。
「…やっぱ納豆はねぇな」
納豆ヌードルを選ぼうとして、手を引いた。
納豆が特段嫌いというわけではないが、納豆ヌードルよりも豚骨ヌードルの方が全然メジャーだと思っただけだ。
豚骨ヌードルとコンポタージュ味のスナックを手に取り、レジに持っていく。
「363円でーす」
店員に合計金額を言われ、ポケットから財布を取り出すと、珍しいものが目に留まった。
「お、ギザ十」
勿体ないから違う硬貨を探す。青い釣銭皿にお金を乗せると、少年はコンビニ袋とレシートを受け取り、コンビニから出る。
「まぁ、一日部屋に閉じこもってゲームやってりゃ、目も疲れるわな」
歩きながら目をこすり、家へ帰るために駐車場から出ようとした――そのときだった。
×××
……ザァァ、……ザァァ
暗闇の中で、ただその音が聞こえていた。
気のせいだろうとそう思うたびに、その音だけが鳴り響く。
……ザァァ、……ザァァ、………ザァァ
その音がだんだん耳障りに聞こえてきて、少年は重い瞼をゆっくりと開けた。
「――ぁ? 俺いつの間に寝て…」
コンビニの敷地内から出たはずなのに、いつの間にかどこか違う場所に移っている。
自分の姿勢までもが変わり、どこかに寝そべっていた。目の前に見えるのは青い空だ。
「異世界物だったりしねぇかな」
と期待して、一度目をつむり、異世界物のテンプレートを思い浮かべる。
これが異世界物だったのなら、貴族の屋敷だとか、王城の広間だとかの豪華な天井が見えるはずで――、
そう思い、起き上がるが、
「よっ! ――って見えないし」
周囲に見えるのは、先も見えた青く澄んだ晴天の空と、森林、その周りに広がる大海原だった。
これでは、異世界の可能性も薄れてきてしまう――と、こんなことで諦めるほど少年はまともではない。
「よいしょっと」
起き上がって見えないのなら次の段階だ。
少年は砂の上に置いた手に力を入れて勢いよく立ち上がる。
「――っ」
体が妙に重い――否、だるいのだ。
その違和感を思考の外側に除けてから前後左右を見渡しても、座っているときとなんら違いはなかった。
これでは異世界というよりも、日本のどこかの島、といった方がしっくりくる。
「やっぱり異世界じゃねぇじゃねぇか…。あれか? テレビでよくある島から脱出するやつか…?」
ドッキリだとしても、こんな高校生(不登校児)を採用する理由がない。このような島に一人で飛ばされては、サバイバルスキルのない自分では餓死してしまうのが目に見える。
となると、さすがに無人島ではないと思うが――、
「とりま、現地人に話を聞くのが早いよな」
いるかもわからない現地人へ期待を寄せ、森林に少年は踏み入れた。
* * *
「―――ぁ?」
森林に入ってから数分、建物が視界に入る。
建物の周りには緑色の金網フェンスが囲んでおり、綺麗に整備された場所から石段が造られていた。その先にあるのが横に長い建物だ。
建物の真ん中には大きな時計が設置されている。こんな条件がそろう場所を、少年は一つしか知らない。
つまり――、
「――学校、か?」
まだ完全に抜けていなかった森林の端から動かないでずっと観察しているのは、無自覚な警戒心のせいだろうか。
横にあった木の葉に体があたり、カサカサと音を出して余計に少年を急かした。
「こんなところで止まってちゃ、埒が明かねぇ」
学校不登校児とはいえ、ここで何もせずに死んでいくよりはマシだ。
手足の震えを止まらせ、右足を前に出そうとしたところだった。
――誰かが、走っている。
それは、全体が桃色で毛先が白の髪をツインテールに結んだ美少女だった。少女は髪色と近い色のリュックサックを背負い、とんでもない速度で走っていた。
その様子からも、遅刻しているのだとわかる。
「強制イベント発生か…? つってもどうせ異世界じゃないなら意味ねぇか」
ゲームなどの定番、主人公がとある行動をしないと話が進まないイベントだが、そう思ってしまった自分が恥ずかしい。異世界じゃないなら、そんなことはあるはずもない。
ただ、一つだけ、思い立ったことがある。
「この流れに沿って…」
――学校に入れば、何か情報が得られるかもしれない。
なんて考えつくあたり、自分は最低だ。
「待っ――、あれ?」
突如、少女が視界から消えた。学校に入ったのだろうか。
これでは、情報収集する機会もなくなってしまう。
でも、結局学校以外行くところもないので、走り出す、が――、
「……はぁ、はぁ。引きこもってると体力なくなってだめだな」
走り出したものの、体力が落ちているためすぐに息切れをしてしまう。なんとか学校前で立ち止まった。
――あとは、学校に入って聞くだけなのに。
「―――っ」
強引に止めた震えも、学校を前にするとまた始まる。
知っていたんだ、そんなこと。
毎朝八時を過ぎれば少年はとても安堵する。それは、学校に間に合わないからだ。今から学校に行ってもどうせ遅刻扱いになるのだから諦める。
―――諦め”られる”。
少年は、この世で誰よりも不登校の理由が”浅い”と思っている。当然だろう。世の中いじめや学校側との衝突が起こって不登校になる場合が多い。
だが、自分は違う。自分でやって自分で傷ついただけ。まさに、自業自得だ。
だから、このまま一歩も足を踏み出せないまま―――、
「――そんなにぼーっとして、どうしたんですか?」
少し眉を下げ、銀鈴の声を発しながら石段を下りてくる。
それが少女――桃色の髪の、先ほど校舎内に入ったはずの、少女との出会いだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
第ゼロ章は全六話、今日投稿予定です。
第ゼロ章が終わるまでは、一時間ずつ間隔を空けて投稿する予定です。
ぜひ、最後まで読んでいただけると嬉しいです!