お嬢さまが、ちびっ子可愛い悪役令嬢   作:デチャウ

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プロローグ 転生したら、社会的地位が駄々下がりました。

 わたしこと「透香」は、十五の春に根っからの腐りきった才能に目覚める。

 

 BLや乙女ゲームの腐った沼にどっぷりと浸かる。

 

 溢れる腐臭に突き動かされ、乙女ゲーム自作へとさらに拗らせた。

 

 結果……

 

 自作から立ち上げて23歳にして、そこそこ人気のある乙女ゲーム制作会社のCEO兼メイン制作者なのだ。

 

 そんな腐臭漂う順風満帆なわたし。

 

 今日も、自宅で端末に向かい追加シナリオパックの最終デバッグで根を詰めて作業中でした。

 

 あれ?

 

 なんか、モニターがぐにゃって……ゆがんだ?目の奥がじん、と痛む。クラクラする。これ、ダメなやつ? ヤバいかも……

 

「と、とにかく横……横にならなきゃ……」

 

 椅子から立ち上がろうとした瞬間――

 

 血だけはまだ座ったままって感じで、すうっと血の気が引いた。視界がぐにゃん、と歪んで、次の瞬間、その場で砕けるみたいに椅子とデスクのあいだに倒れ込んだ。

 

 やばいです。手足に力が入んない。

 助けを呼ばなきゃ……

 

 動けないし……声は、

 

「タスケテ……」

 

 イカーン! ココロの声の大きさに比べて蚊の鳴くような声しか出ないよ。

 

 終わった……

 

 助かるとしたら、自然回復か、端末からの更新が無いことに会社の誰かが気づいてくれるくらいか……

 

 詰んだなわたし……

 

 イヤ、ちょっと待って、死ぬにしても、救われるにしても……

 

 二十三歳、華麗な女社長がこんな格好で発見されるのか、嫌すぎる。

 

 今日って暑いしー 自宅だしー 誰もみてないしー 動きやすいしー で、高校の時の体操服とか着てる。

 

 もうバカなのわたし。

 

 下着もヨレヨレだったかも……せめてもう少しまともなカッコで逝きたかったな。

 

 最後の乙女の羞恥心がこんな心配で終わるなんて情けない。

 

 あっダメかも、意識が……いや頑張れわたし! 必死に意識を保とうと目を開ける。

 

 かろうじて倒れた先のデスクトップが視界に入った。デバッグモードの画面。

 

 そこには作りかけのゲームの悪役令嬢、セシリアが映っている。

 

 大胆不敵な笑みを浮かべ、完璧なドレスを身にまとった、あのセシリア。

 

 わたしは、ジャージだけどね。

 

 朧げな視界が、遠のきそうな意識の間で、ふいに感情がほつれ溢れ出す。

 

「悪役……押し付けちゃったな……」

 

 モニターに映るセシリアがゆらゆらと揺れ出した。

 

 

 わたし、泣いてるんだ……

 

 でもね、可愛くしてあげたんだよ。

 

「もっと……つくりたかったよ……」

 

 あなたを……

 世界を……

 

 あと、着替えたい……

 

 静かになった部屋

 

 ディスプレイの中で、セシリアのキャラ絵が不意に消え……

 

 1行だけ文字が打ち出された

 

 > accept……

 

 * * * *

 

 

 そこは人が記憶から忘れ去った地。

 

システムのみが自己進化を繰り返し続け、人の理解を超えても人の為に生産を繰り返し続ける……ファクトリー。

 

 その生産ラインに並ぶ、透明なケース。そのうちの何もない空間に光の粒が押し寄せ消えていく。そこに、ひとりの少女がラインオフされた。

 

 銀糸の髪、人工的に整えられた完全無欠のシルエット。瞳には、星のような光の演算パターンが揺れている。

 

「……起動、確認。」

「AI自立型ヒューマノイド "ルナリア" 起動成功」

 

「:Ship Out……Bon voyage!」

 

 出荷? 良い旅を……?

 

 モギュ!? なに わたし……どこ……

 

 意識が目覚めた。ココドコ、ワタシどうなった?手や足の感覚……生身の体を感じる……わたしまだ生きてる……

 

 はっ! 着替えなきゃ!

 

 あれ、おかしいな体が、ぴ・く・り・とも動かせません!

 

 いや正しくは、動いてはいるんだけど。動かしてないのに動いてる。やだ何これ怖い!

 

《ファーストコネクト確立。"トウカ"プロセス接続》

 

 脳に直接、合成っぽい声が流れ込む。

 

(え、ちょ、誰!?)

 

 その瞬間、わたしの視界が広がった。

 

 正しくは視界じゃなくて、頭の中でVR空間に立ってた。

 

 目の前に、レトロなブリキのオモチャのロボがいる。四角い頭に四角い体、マジックハンドの腕。

 

あれだ「ロボット」って打ち込んで変換で出るあのロボの絵文字。

 

そのロボが語りかけてらっしゃる。

 

《私はルナリアの運用AI――プラム・プロセス。あなたとのインターフェイスとして現在稼働中です》

 

 プラムってなんか聞き覚えがあるような……? インターフェイス……稼働中?

 

(わたし、今どーなってるの?)

《お答えします あなた“透香"は現在稼働したAI自立型ヒューマノイドに搭載された人格プロトコルのひとつと推測されます》

 

 言ってることがミリも理解できないけどとりあえず、会話はできそう。

 

(ねえプラム……さん、なんでわたし自由に動けないんですか?)

《プラムのみで結構です。この躯体「ルナリア」の制御は「AIルナリア」にあります。 現在あなたの制御下にはありません》

 

「よろしく、透香」

 

 ヒョッ!勝手に生身の方の口が動いた。

 

 ちょっと怖いというかさらに混乱するんですけど……

 

 ん、ちょっと待って、……ルナリア。

 

 なんか聞いたことがあるような、ないような。

 

 あっ! 思い出したわ。

 

 わたしが制作してた乙女ゲーム『聖女と薔薇の刻証 ~Rose et Sainte~』

 

 そのゲームの悪役令嬢セシリアに付き従うメイドAIヒューマノイドの名前だ。

 

 なるほどね、乙女ゲー転生だったか。

 

 まあ死ぬ時伏線張られてたからね。ここはゲーム脳的に、まずはすんなり受け止める、じゃないとわたしの頭がパンクしそう。

 

 それにしても、中世とSFを組み合わせてオリジナリティを出そうとか、ややこしい設定したらロボの中だとこんなハードSFなのね。

 

《ロボではなく、当躯体は有機ヒューマノイドです》 

(人みたいな作りなの?)

《その認識で大丈夫です》

 

 ふーん、ミサイルとか出ないんだ。なんか残念。

 

《ポイント: revelare 引渡しポイントへの転送終了》

 

《マスター「セシリア」確認》

 

 また唐突に展開進めないで、心の準備がまだできてませんよーだ。

 

 ただ「セシリア」と聞いて、最後に目にしたモニターと胸を締め付けた思いがそっと戻ってきた。

 

 うわっ!

 

 足にガクンと重力の重さ、耳には今度こそ人々のざわめく声が、容赦なく流れ込んできた。

 

 ゆっくりと瞼が上がっていく。

 その視界に映し出された黒髪の少女。

 

 セシリア!

 

 上目遣いにこちらを見る目。

 

 媚びてるんじゃなくて身長差で上目遣いになってるだけなんだけどね。




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