お嬢さまが、ちびっ子可愛い悪役令嬢   作:デチャウ

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第三話 その四 できないことは、人まかせが一番ですわ!

 午前中の「アーネスト家謝罪の旅」も大好評のうちに終了いたしました。

 

 特にお屋敷で働く方々の託児施設では子どもたちに大変好評をいただきました。

 

 秋の感謝祭の出し物ででぜひ魔法少女の寸劇をとの熱いご要望もございましたが、『やなこったい』でございます。

 

 お嬢さまはあんなにイヤがってた青白ストライプの囚人服をえらくお気に入りになられて、今でもパジャマとして愛着されております。

 

 ほんとはねすごく疲れた。

 体力も精神力もごっそり削られたよ。

 終わった時にはお嬢さまと2人で魂抜けかけたもん。

 

 でもなんとか苦行を乗り越え、午後も慌ただしく過ぎ、ようやくディナーの前に着替えの為に、お部屋に戻ってまいりました。

 

 王国歴の座学のノートを机に放り投げ、「うーん」と指を組んだ両手を上げ、お嬢さまが背を伸ばす。

 

「でルナリア、わたくし、いい案が浮かびましたのよ」

 

 こっち見てカワイイ瞳をくりくりっとしてる。けど、可愛らしくないこと思いついたんだろーな。

 

「どのようなことでございましょうかお嬢さま」

「どのようなことって、もちろん学園での魔力実習の件よ」

 

「その件は、隠蔽はもう無理とのご結論をお出しになられたのでは?」

「そのとおりよ。あんな小手先で騙せるなんて思う方が愚かよ」

 

 ここ数日その愚かに全力でぶつかって玉砕したの誰でしたか――

 

「無理なものは無理。どんな王様だって貴族だって持っていない魔法は使えないのよ」

 

ここでお嬢さまがドヤ顔で、人差し指を合わせるように振りながら

 

「で・も・ね! 王様や貴族がみんながみんな、なんでもできて優秀ってわけでもないでしょう」

 

 ノリノリですね。

 

「中には才能に恵まれなかった方やちょっと残念な方もいらっしゃいますが、それなりに家格を維持できておりますでしょう」

 

 『自己紹介?』布団の奥でネコ耳ルナリアが、とんでもないこと呟いてるけど聞こえないわ。

 

お嬢さまは、再びドヤ顔決めて

 

「そ・れ・は・ね! その家を守る優秀な武官や文官がいるからよ」

 

「すなわち,自分にできないことは才能ある下にやらせればいいのよ。これぞ上に立つものの不文律の心得よ」

 

「そしてその賞賛を受けるのは、上に立つ者の義務なのよ」

 

 実に清々しいクズ上司ぶりですお嬢さま。

 

 悪役令嬢道の階段をまた一歩上られましたね。

 でもねその階段の上はきっと絞首台ですよ。

 できれば引き返してください。

 

「だからわたくしの魔法も、使える者にやらせればいいのよ。どう素晴らしい発想でしょう」

 

「ですがお嬢さま、従者の魔法じゃ実習は通りませんよ」

「ギフトのわたしもお嬢さま以外の他者に対する魔法は持っていませんよ」

 

「そんなの分かってますわよ。それにあなたはわたくしにも魔法を使えないポンコツじゃないですの」

 

「そんなー! ポンコツだなんてひどいです。そもそも、お嬢さまの体質のせいですよ。ポンコツは、お嬢さまですよーだ」

 

「よくもおっしゃったわね。今すぐそのポンコツの減らず口を首から落として差し上げますわ」

 

 お嬢さまが壁にかけてるサーベルに手をかけてこっちに向き直る。

 

 こうなったらわたしだって後に引けませんよ。

 

「いやですーポンコツっていう方がポンコツなんですよー! イーッだ!」

 

 お嬢さまは頭から湯気をピーって吹き出して、こちらに突進してくる。

 

 でもね、こちらも通常の女の子の一割増しの強化ヒューマノイドボディ。おまけに今この躯体を操作しているのはこの"透香様"だからね。

 

 自慢じゃないけど、オタクの腐女子でも実は運動神経いいのだ。

 

 おまけにお祖父様の実家は剣道場。わたしも昔から習ってて、全国行けるくらいには強いのだよ。エッヘン!

 

 そんなわけでお嬢さまの剣なんてヒョイと交わして逃げ続けられるのよ。

 

 もっとも、お嬢さまも本気ではないんだろうけどね。

 

 要は本日のドタバタのストレス発散。楽しい乙女のコミュニケーションでレクリエーションよ。

 

 ひとしきりドタバタしてもうディナーも迫ってきたから、ヒョイっとお嬢さまから剣を取り上げてレクリエーション終了です。

 

「はぁはぁ……なかなかやるわね。ルナリア! それでこそわたくしのメイドですわ」

「お嬢さまこそなかなかでございましたよ。さすが文武両道のアーネスト家ご息女様ですわ」

 

 と互いを褒め称え合う。

 

 「隙あり」とばかりに再度襲ってきたお嬢さまをいなしてベッドにポイっと放り投げる。

 

 隙ありじゃなくて騙し討ちですよそれ。

 

「はぁー もういいわ。どこまで話しましたかしら?」

「ポンコツのくだりまでですか?」

「ムッー! だからそれはもういいの話を進めますわね」

 

 要は私の代わりに魔法を使えてわたしの評価になるものを使えばいいのよ」

 

《召喚獣のことと推測》

(その手があったのか)

 

「さすがですお嬢さま それ絶対いいです」

 

(あれでもお嬢さまの体質で召喚魔法なんて使えるの?)

《無理です 召喚獣は擬似生命プログラムを使ったナノマシンによる物質生成です》

 

《但し、この世界に存在している魔獣を手懐けて召喚獣代わりに使役することで偽装できる可能性はあります》

 

 やっぱりどこまでいっても誤魔化しの茨の道なのですねお嬢さま。

 

「で、どのような召喚獣をお考えになさってるのですか?」

「知らないわ。あなたが考えなさいルナリア」

 

 ぶっ! 思いついただけなのですね。

 

「そうね、高貴な私にぴったりな優雅で美しくゴージャスで、誰もが認めざるを得ない召喚獣が希望よ」

 

 条件だけは多いし……

 

「結果はまた夜に聞きますわ。まずはディナーに行きますわよ。準備なさい」

 

 お腹が空いてきたので考えるの面倒になって丸投げしたのね。

 

 わがまま、お嬢さまがフリーダムです。

 

 VR空間でネコ耳ルナリアが、アカシックレコード監修「セカイのどうぶつ大図鑑」を読んでる。

 

 わたしも丸投げでディナーにいこうっと!

 

 そうして美味しくディナーも済ませて、なんやかんやと過ごしまして、就寝準備すべて整いました。

 

「ルナリア! わたくしに相応しい召喚獣は見つかりまして?」

 

 寝る前に絵本読んでーってお願いしてくるこどもみたいに期待いっぱいで聞いてきますね。

 

 (ルナリア決まった?)

 

 ネコ耳ルナリアが「セカイのどうぶつ大図鑑」の開いたページをこちらに向けた。

 

 (あっこれがあったか。さすがルナリア)

 《その魔獣は性質に問題が……》

 

 と言いかけるプラムを押し除けてネコ耳ルナリアが親指立ててgoodの決めポーズ

 

「それでは発表いたします」

「お嬢さまに相応しい召喚獣は……」

 

ドルルルルル…………(ドラムロール)

 

「――美しく優雅でゴージャス誰でも知ってる!」

 

 ドルルルルりゅ……ジャン!!

 

「乙女の味方、聖獣『ユニコーン』です!」

 

 ナノマシン発光で「UNICORN」の文字までバックに映し出して盛大にお披露目

 

 どうです!?

 

「ユニコーン! ユニコーンねっ!」

 

溢れんばかりの笑顔です。

 

「コホン、ルナリアにしては、まあまあいい選択ね。褒めてあげましてよ」

「えへへ、お褒め頂きありがとうございます。お嬢さま」

 

 わたしも笑顔です。 

 

「それにですね。ユニコーンといえば乙女の味方って言われる聖獣ですから、優美で可憐なお嬢さまならきっと召喚魔法なんかなくても一発でゴロニャーンいや、ヒヒヒーン!です」

 

「そうですわ、そうですわね!」

「きっと私のそばに寄って来て前足を折り首部を垂れるのね」

 

 メルヘンお嬢さまが、舞い踊り出しましたよ。

 

「そしてわたくしがそっとそのタテガミを撫で頭の一角に指を当てると、嬉しそうに小さく「ブルル」って嘶いて我が守護獣となる誓いを立てるのね。ああ―― 」

 

 お嬢さま、結構メルヘン大好き乙女ですね。

 

 でも、ごめんなさい。汚れたわたしの耳にはイヤなフラグ建てにしか聞こえません。

 

「で、ユニコーンの住む場所ってどこなんですの?」

 

(ルナリア、どこ?)

 

 VRルームのネコ耳ルナリアが、「セカイのどうぶつ大図鑑」のユニコーンのページを開いてこちらに向けた。

 

(うんうん、「魔の森の散華の泉」意外と近いわね)《ルート検索……完了。所要時間:馬車:2時間15分+徒歩:45分》

 

「お嬢さまここから北の「魔の森の散華の泉」ですね。3時間くらいでしょうか」

 

「魔の森ですの、あそこは魔族領との境界線にも近いのよね」

「魔族ですか? どなたか、護衛をつけてもらえるよう近衛の方達にでも頼んでみますか?」

 

「いいえまあ大丈夫でしょう。魔族とは休戦状態ですし、我が領に入ってくるような命知らずそうそういなくってよ」

 

 入ったら何されるんですか?アーネスト領って魔族も恐れる魔境なのですか?

 

 魔族かそんなのも作ってたな……

 (ねえプラム、魔族ってどうなの、わたしのゲーム設定と変わってる?)

 《"透香"記憶ログ検索 該当:魔族=ギフトを体内に融合した人間。この世界でもほぼ同一の認識で大丈夫です》

 

 そうわたしのゲーム設定では、ギフトを剣や盾・可愛いメイドなど道具や使い魔として外部に装備するのが人族。

 それに対して、ギフトと融合して肉体内に内包しているのが魔族。

 基本的にはどちらも同じ人間なのだ。

 

「ルナリア、そうと 決まれば明日は「魔の森」でユニコーン捕獲大作戦ね」

 

「明日の馬車や食事の手配、レッスンキャンセルの先生方への謝罪、ユニコーン捕獲の準備もろもろ任せましたよ」

 

「明日は早いし、もう寝ますわ」

 

 って今から準備ですか、もう夜も遅いんですよー。お嬢さまの鬼。

 

「かしこまりました おやすみなさいませ。お嬢さま」

 

 心の声は奥にしまってにこやかに青筋立ててご返事よ。

 パフン!とベッドに飛び込むお嬢さま。遠足前の小学生みたい、楽しそうでなによりでございます。

そして『即断即決丸投げ』の3連コンボありがとございます。

 

 カーテンの隙間やお嬢さまの机を整えてから寝台のランプを消そうと近づく。

 

 もう、スースーと柔らかい息使い。ほんと眠るの早いなぁと感心。

 

 いい夢見られるといいですね。

 

 消灯

 

 わたしはいい夢どころか寝られるかも心配ですが!

 

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