お嬢さまが、ちびっ子可愛い悪役令嬢   作:デチャウ

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第三話 その五 ユニコーンとお嬢さま

 今日は、魔の森にユニコーン捕縛です。

 早朝に馬車に荷物を積んでいると、執事長のセバス様が現れた。

 

「セシリア様は、まだだな」

「お嬢さまも、もうくると思いますよ」

 

「まあ、いい。本日の作戦行動の確認に来ただけだからな」

「作戦行動ですか?」

「いかにも、作戦行動だ」

 

セバス様が正面に立ち眼光鋭くわたしを見下ろす。

 

「帰着時間はヒトハチマルマル(18:00)厳守のこと‎‎」

 

「なお、護衛は隠密警護とし特定敵対勢力ならびに誘拐など当家に害が認められる場合のみ行動する」

 

「通常考えられる魔獣の襲撃等には自身で対処すること、以上だ!」

 

「ハッ! 了解です、セバス様!」

 

 セバス様の雰囲気に飲まれてつい敬礼しちゃうのよね。

 

「あと、護身用にこちらを持って行け。対馬用装備だ」

「あの、こちらは?」

「野太刀だ。お嬢さまをしかとお守りせよ。頼んだぞ、ルナリア」

 

 そう言って、ニヤっと口角を上げて去って行った。

 

 こんな、大太刀どうしろと……

 

 仕方ないので腰にとりあえず下げる。

 

「重っ! 無理!」

 

 背中に背負い直した。

 

 程なくお嬢さまが、やってきた。

 大太刀を背負った私を見て、

 

「ユニコーン切ってどうするつもり? バカなの? ポンコツなの?」

「ですよねー」

 

 もっともなご意見です。

 

 * * *

 

 馬車から降りて、半刻ほど森の中を歩く。

 

 《もうすぐ、目的地『散華の泉』周辺です》

 

 ルナリアさんは、ナビゲーション標準搭載です。

 

 《泉周辺に、目標の魔獣『ユニコーン』確認》

 

 視界に泉の地形とユニコーンの位置が表示される。

 

 対物レーダーにHUDなしでAR投映可能と機能満載です。

 

「ルナリア! 泉があるわ。馬みたいのもいるわ!」

 

 少し、先を歩いてたお嬢さまが、そう言いながら駆け戻って来た。

 

「やっと着いたのですね」

 

 両手にランチの入った、ハイキング荷物と背中にズシリと食い込む野太刀。

 重たいんです。つらいんです。早く座りたい。

 

「ルナリア、ユニコーンをどうやって捕まえるの?」

 

 しまった! 何も考えて無かった。

 

「と、とりあえず、刺激しないよう隠れて近づきましょう」

「わかったわ。ユニコーン捕獲作戦開始ね」

 

 ユニコーンに見えないように、死角になるルートを辿って近づく。

 

 荷物を降ろし。そこから中腰で草に隠れるようにし、抜き足差し足で泉に近づきます。

 

 泉のほとりで水を飲んでいる、ユニコーンが視界に入る。

 

 白く輝く馬体にレインボーのタテガミと尻尾。

 

 そして、ユニコーンの象徴の額に生えた真珠色の一角。

 

「美しいわ。まさにわたくしに、ピッタリな召喚獣ですわ」

 

 お嬢さまがとろけるような口調で見惚れてます。

 

「思ったよりでかいですね。蹴られたら死んじゃいますね」

 

 ポニーとかサイズを想像してたのに、普通に競走馬とかよりもでかいです。

 

「お嬢さま、ここはひとつ慎重に、あー!」

 

 もう、無防備に近づいて行ってる。

 

 お嬢さまは、スタスタとユニコーンに近づいていく。

 

 ユニコーンと目が合う。逃げない。

 

 ニコリと微笑んで、優雅にカーテシーを決める。

 

 ユニコーンがヒヒンと小さく(いなな)く。

 

 お嬢さま、度胸あるのか無鉄砲なのか、いつ襲われるのかドキドキして見てたけども……

 

 これ、もしかしてすんなり行けるのでわ?

《ユニコーンには、特性上問題が……》 

 

 お嬢さまが、ユニコーンに触れられるぐらいまで近づき手を伸ばす。ユニコーンがその手の匂いを確かめるように鼻先を近づける。

 

「初めまして、ユニコーンさん」

 

 どこから声出してるのってくらいの猫撫で声です。まさに猫をかぶるです。

 

 ユニコーンがお嬢さまに鼻先を近づけた。

 

 《ユニコーンより、精神探査用ナノマシンの射出を観測》

 

「プギャア!!」

「ヒヒーン!!」

 

 《ナノマシン抗体による対消滅を確認》

 

 転げるお嬢さまと後ろ脚立ちで嘶くユニコーン。

 

「お嬢さま!」

 

 (プラム、精神探査って何?)

 

 お嬢さまへと駆け寄りながらプラムに聞く

 

 《緊急事態容認、ユニコーンの特性をダイレクトリンク》

 

「ブッ! 何これまずい! お嬢さま!」

 

 走り込んで、お嬢さまを抱え上げ緊急離脱です。少し離れた木の裏に隠れる。

 ユニコーンも、いきなりのスキル失敗に戸惑ってるので、すぐに行動はしないわね。

 

「イッターい。なんですのもう! あの駄馬、何してくれましたの!」

 

 お嬢さまがオデコを抑えてる。

 

「おっお嬢さま、た、大変です」

「ルナリア、まず落ち着きなさい」

 

 スーハー、スーハー 深呼吸、深呼吸。

 

「お嬢さま、ユニコーンはとても危険な生物と判明しました」

「なあに、毒でもございますの?」

「いえ、毒は無いですが、子供には毒というか、倫理的にマズイ生物なんです」

「??……」

 

 お嬢さまが、キョトンとしてるわ。このヤバさどう伝えましょう……

 

 (そうだ、これだわ。プラム、ホログラム投映準備よ!)

 《思考リンク確認。教育用映像プログラム構築。スタンバイ》

 

「お嬢さま、こちらをご覧ください」

「なあに?」

 

 お嬢さまの前にホログラムを投映。

 

 映し出されたホログラムには『ユニコーンってどんな生き物? (全年齢版)』の文字。その下にネコミミルナリア渾身のクレヨン画のユニコーンの絵。

 

 絵に合わせて私がナレーションを入れる。 そう、紙芝居とかスライド動画です。

 

 絵が変わる。

 

「ユニコーンはね、聖獣と言われるとっても強い角のあるお馬さんだよ」

「わー! かっこいい」

 

「ユニコーンはね、清らかな乙女が大好きなんだ」

「処女厨だね」

 

 (プラム、二行目なにコレ?)

 《透香の、思考からの生成ですよ》

 あーわたしか、納得。うん、わたしらしいね。

 

「ユニコーンはね、清純で心も綺麗な乙女には守護獣としていつも守ってくれるよ」

「ストーカー?」

 

「普通の乙女には、遊んでくれると何かいいもの(バフ)をくれるんだ」

「パパ活?」

 

 (これ、伝わらなくない?)

 《絵もあるから大丈夫でしょう》

 

「そしてね、心が汚れてる乙女は、怒って乙女の証の華を散らし(物理)に来るんだよ」

「犯罪者?」

 

「だから、近づいちゃダメなんだ!」

 

 

 ホログラムは、ベッドでタバコを吸ってるユニコーンと隣で泣いてる女の子の絵で終わる。

 

 (これ、考えたのわたしじゃないからね!)

『がんばって描いた。ピース』

 

「おしまい」

 

 パチパチパチ。

 

「なかなか、興味深い内容ですわ」

 

「わかっていただけましたか」

 

「ユニコーンを学園に放てば、悪いことを考えてる女を泣かせることができるのですね」

 

 確かに、そうですけど……

 

「頑張って捕獲してきますわ」

 

「ノー! なぜそうなるのです!」

 

「プギャア!!」

「ヒヒーン!!」

 

 止める間もなく、ユニコーンに近づいて、転がってる。

 

 善悪以前に、中身が足りないのですね。お嬢さま……

 

 でも、待てよ。ユニコーンがお嬢さまの心をのぞけないならチャンスがあるんじゃない。お嬢さまは自分を善だと信じて疑ってないし、見た目は、清純そのものですもの、うまくいけば、ユニコーンを騙せるのでは?

 

 お嬢さま、いけるわ、いけますよ!

 

 ユニコーンが、ほら興味あり気に倒れてるお嬢さまに顔を近づけてます。

 

 

 ユニコーンがお嬢さまのお腹の下にグイッと角を差し込んで……よっこいしょって感じで頭を上げる。

 

「ぷぎゃ」

 ゴロゴロ

 

 もう一回。

 

「ぶぎゃ」

 ゴロゴロ

 

 ブヒィヒィ♡

 

「プギャ」

ゴロゴロ

 

 あの駄馬! 楽しくなってきてますね。

 

 それは、お腹押せば鳴くソフビ人形じゃありません! 第一にそれは、わたしのオモチャだ!

 

「お嬢さま、今お助けします!」

 

 お嬢さまに、覆い被さるように間に入る。抱きかかえて、キッとユニコーンを睨む。

 

 《ユニコーンよりの、精神探査用ナノマシン射出されました。ナノマシン侵食を確認。防御展開:ブロック》

 

 (わたしも、対象なの? イヤなんですけど)

 《ハッキング対象は、セシリア・フォン・アーネストの心象イメージです》

 

 お嬢さまが覗けないから、わたしのお嬢さま像を対象にする気なの? ゴクリ!

 

 タイミング悪く、お嬢さままで、気がついちゃった。

 

「わたくしに向かってなにしやがりますの! この駄馬!」

 

ブヒヒヒィン!!

 

 ユニコーンの嘶きと共に頭の一角がパールからピンクに変わった。

 

「ショッキングピンクとか、なんか下品ですわね」

 

ユニコーンがほっぺたを膨らませたと思ったら、か鳴き声じゃなくてブザー音が響いた。

 

ブッブー!!

 

 頭の上に「BAD GIRL」の文字と散る花びらのホログラムが投映されてる。

 

 ユニコーンが、頭をヒョイと下げて、ピンクの角を、固まってるお嬢さまのスカートの下に差し込んで、捲り上げた。

 

「キャー!!」

 

 慌ててスカートを押さえるお嬢さまを見て、

 

 ブヒィブヒィヒヒヒ♡

 

 なんか、すごく脂ぎった鳴き声を上げた。

 

あまりに下品! あれじゃ聖獣じゃなくて性獣です。

 

 頭の中で先程のスライドショーがリフレイン

「そしてね、心が汚れてる乙女は、怒って乙女の証の華を散らし(物理)に来るんだよ」

 

 血の気が引きそうになる。

 

 お嬢さまが青ざめた顔で、こっちを見る。多分、お嬢さまも同じですね。

 

「「イヤァァァァー!!」」

 

 ダッシュです! もう全身全霊の猛ダッシュです。

 

 ブッヒィヒーン♡

 

 ニヤけた鳴き声でおっかけてきやがりますです。あの駄馬!

 

 走りながら、お嬢さまがドンと横に体をぶつけてきた。

 

「おかしいですわ、わたくし魔法が効かないはずなのに、なんで悪い子判定なのかしら?」

 

 ちっ! イヤなとこに気づきますね。

 

「今、チッ!って言いましたわね」

 

 耳まで、良いし。

 

「ごめんなさい。なんかわたしの頭の中を覗かれたみたいで、それで……お嬢さまのイメージが……みたいな」

 

 ドンってまた体ぶつけてきた。怒ですかお嬢さま

 

「……ちょっと待って?」

「つまり何ですの」

「わたくしが、貴女の中では」

「虚勢張りで」

「無能を隠して」

「他人を使い潰そうとして」

「自分だけは安全圏にいる女だと?」

 

 あっ、自覚はあったんですね。自分の欠点に気付けてエライです。お嬢さま。

 

「そんなこと思ってませんよー」

「プライドが高くて傲慢で面倒なことすぐ人に押し付けてくるけど」

「本当は頑張り屋さんで努力家の優しいイイ子だってちゃんと思ってますよー」

 

 またドンしてくる。青筋立ってるし怖いです。

 

「嘘おっしゃい!じゃーなんであの駄馬がこんなに追っかけてきますの」

「本当はもっと別なこと思ってたんでしょ!」

 

 うーんそう言われればおかしいよね うーん……

 

 あっそうか!

 お嬢さまをのイメージといえば、あれよね。ズバリ!

 

「悪役令嬢」

 

 うん、BADだね♡

 

 一瞬気が抜けて速度の落ちたわたしは、後ろから追いついたユニコーンに、ツノでヒョイっとお尻から持ち上げられて、後ろに放り上げられた。

 

「ルナリアァ!」

 って叫び声が離れてく、わたし,飛んでる……

 

 と思ったら急激に襲ってくる落下感。

 

「落ちっー!」

 

 ドボン。

 泉に頭から落ちました

 

「ブクブク、ブクブク――!」(あの駄馬、覚えてろ!)

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