お嬢さまが、ちびっ子可愛い悪役令嬢   作:デチャウ

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大三話 その七 瑞獣「白択」とお嬢さま

 ハクタクくんの謎のカウントダウン決行中です。

 

 お嬢さまは倒れたまま。

 

 転ばせたのわたしだけどね。テヘッ。

 

 すでに変態ユニコーンが火を吹こうと息を溜めてます。

 

 いわゆる絶体絶命です。

 

 どうする? ルナリア!

 (前回のおさらい)

 

 * * *

  

 《……4》

 

「バカ言ってないであっちいって!」

 

 《……3》

「い・や・で・すー!」

 

 《……2》

 

「変な笑顔浮かべないで、ひっ!」

「お嬢さま、伏せますよっ。エーイ!」

 

 お嬢さまにフライングダイビングアタックで覆い被さるように地面に突っ伏す。

 

 《……1》

 

 ユニコーンは火を吐く寸前。

 

 でもわたしは確信していた。

 

 瑞獣「白択」をギフトに持つあのキャラなら、次の一撃が生まれる場所に、当然のようにいるはずだと!

 

 《……0》

 

 突っ伏した視線の先、突然、獣の下肢が出現した。

 ユニコーンと相対する位置。

 

 大きな褐色の大山羊が後ろ足で立ち上がっていた。

 

 まさに、頭を振り下す瞬間そのままで――

 

 自然にさも当然のように突然そこにいた。

 

 ゴンッ!!

 

 振り落とされる頭部!

 

 ユニコーンの鼻骨を押し潰す。

 

 内に蓄えられた炎が逃げ場を無くし溢れ出る。

 その炎が、自らを焼いた。

 

「な、なんなんですのこれ!」

 

 覆い被さっているわたしより、仰向けで倒されてる、お嬢さまのほうが大迫力で見てるものね。

 

 現在、突然出現した大山羊に跨がれて見上げてる状態。

 

 多分何が起きたか、なんてミリも把握できてないよね。

 

 獣が私達の上を跨ぎ切る。

 

 ユニコーンに近づく。

 

 立ち上がるともう一度勢いつけて頭突き!

 

ゴン!!

 再度の轟音!

 

  炎上中のユニコーンが突き飛ばされる。

 

 背中から地面にひっくり返って全身に火が回る……

 

 大型魔獣同士の大迫力バトルです!

 

 * * *

 

 それでね、今はというと。

 

「お嬢さま、飲み物を振り回しちゃダメですよー」

「そこですわ! イケー! 駄馬を転がせ!」

 

「もうこっちにピシャピシャ飛んできてますって」

 

 魔獣大戦眺めながらの、ほのぼのランチです。

 

 助かったと安心すれば、次は『お腹すいたーっ』て欲求してくるのが、人の(さが)です。

 

 もうとっくにお昼過ぎてますし、これは致し方ありません。

 

 2匹の魔獣の戦いをお嬢さまは、サンドイッチと飲み物を片手に大興奮で観戦中。

 

 わたしはぶつかり合う魔獣をボーっと眺める。

 

褐色の大山羊、瑞獣『白択』

 

 見た目は、背中にまで角の生えた大山羊、額に赤い魔石のような第三の目をもつ獣。

 

 ゲームの設定では、戦闘予知のスキル持ち。 

 

 あんなのと戦ったら秒で殺されちゃうよなーとか、同じギフトとかありえないでしょー。なんて考えながら、のほほんとサンドイッチ食べてます。

 

 戦いの方は白択のワンサイドゲーム。

 

 それでも最後の抵抗とばかりに、駄馬が全身に真紅の炎を纏った。

 

 離れてるのに熱気ここまで来てる。

 

「暑苦しい駄馬ですわ。ムキー!」

 

 そんな興奮したら、サンドイッチ握り潰しちゃいますー。

 

 二匹が、ジリジリと間合いを測りながら周りこむ。

 

 泉を背にしたあたりで白択が不意に体勢を崩した。

 

 その隙を見逃さずユニコーンが突進!

 

「あっ!」

 お嬢さまが隣で小さく叫ぶ。

 

 あれわざと誘ったよね。

 

 案の定、白択はヒョイと横に飛んで突進を躱す。

 

 勢い止まらずユニコーンがそのまま泉にダイブ!

 

 「ドゴオオオオオオッ!!!!」

 

 水が一気に蒸気となって轟音をあげる。

 

 水飛沫があたり一面に舞い上がる。

 

 あんなマグマみたいに燃え盛って水に落ちれば、水蒸気爆発もするわよね。

 

 白択は、もう爆風から、私たちを守る位置に佇んでいた。

  

 勝負ありです!

 

「あら、まだ生きてましたの」

 

 泉から満身創痍のユニコーンが這い上がってきた。

 

 白い毛もところどころ焦げ禿げ上がり尾もタテガミもチリチリカールで見る影もないですね。

 

「ざまぁですわ!」

 

 それでも、ブヒブヒブヒ――ン! 捨て台詞みたいな、鳴き声を吐いて逃げてった。

 

「おとといきやがれですわ。たわいもない。フフン!」

 

 お嬢さまが、勝ち誇る。

  

 「でも、お嬢さまは、何にもしてなくないです? むしろベソかかされてましたよね」

 

「だまらっしゃい! まあ、それはともかくですわ」

 

 お嬢さまが立ち上がると白択の方に近寄り

 

「この度はわたくし セシリア・フォン・アーネストの危うきところを、お救いくださいありがとうございます」

 

 とスカートの裾をちょいとつまんで腰を落として淑女のご挨拶。

 

 お嬢さまがお礼をのべられるなんてすごーい。

 

 と思ったけど、よく見れば目が獲物を狙う猛禽類です。

 

 そのままススっと白択に近づく。

 

「つきましてはぜひ! お礼を―― 今ですわ!」

 がばっと首を抑えようと飛びかかる。

 

 ヒョイっとかわされお嬢さま地面に突っ伏す。獣は少し距離を取って佇んでる。

 

「なかなか、やりますわね」

 

 立ち上がって、両手をワシワシしながら白択に再度向かってく。

 

「はーもう!」

 

 後ろからワシワシの手を捕獲。

 

 あらやだこっちの捕獲は簡単でした。

 

「放してよ、ルナリア!」

 

 吊り下げられて、足をバタバタするお嬢さま。ランチを広げてた敷物まで連行。

 

「なにをなさってるのですか、お嬢さま」

「いや,そのね。捕まえてちょっと召喚獣にできないかなーなんてねっ!うふ♡」

 

 はーやっぱり、その作戦まだ諦めてなかったのですか。しぶといですね。

 

「はぁー。 先ほどの戦いご覧になられましたよね」

「見ましたわよ。すごかったですわ!」

「では、あれがお嬢さまの力で、どうにか出来るわけないじゃないですか」

 

「でもー。こんな可愛いわたくしに抱きつかれたら案外メロメロってなるかもしれないじゃない!」

「ダメです!そんなお考えは許しません!」

  

「お嬢さまは公爵家令嬢なんですよ。自分から媚びへつらい、それを武器にしようなんてもっての外です」

 

「それに、お嬢さまの色仕掛けが通じる相手なんてロリコンの変態だけですよ」

 

「言ったわね! じゃあ代わりにルナリア大人の魅力でやってよ」

 

 よし! お姉さんに任せなさい。じゃないです!

 

「人にやらせるのはもっとダメです!」

「冗談ですわよ」

 この嘘つき娘は――

 

「とにかくお嬢さまが本当にそう望まれるなら、誠意と真心を持って真摯にお願いしてみればいいのです」

 

「相手は瑞獣「白択」知恵の獣と呼ばれる者ですから無下にはしないと思いますよ」

 

 あっヤバい思わず言っちゃた。

 

 内緒にって言ってたのにごめんね白択 ま、名前ぐらい許してくれるよね。

 

「知恵の獣!知恵の獣って、なんて素敵な呼び名なの!」

 

 ぴょんぴょん跳ね出す。

 

「ねえ、ルナリアあれこそ高貴なわたくしにピッタリじゃありません」

 

 あー。食いつくのそっちかー。

 

 そうだよね そのフレーズかっこいいものね。

 

「決めた決めましたわ。わたくしあの子に決めました! ぜひ我が召喚獣として飼いたいわ。ねえどうすればよくって?」

 

 また即断即決丸投げですか懲りないな――

 

 とため息をついたとこで、ふっとあるフレーズがダンディーな声で頭をよぎった。

 

 “帰着時間はヒトハチマルマル(18:00)厳守のこと。”

 

 ハッと、懐中時計を確認すると午後2時40分。

 

 お屋敷までは3時間はかかるからマズイ、今すぐ帰路に着かなきゃ!

 

「お嬢さま、この件はまた日をあらためてということで今すぐ帰りますよ!」

「なによまだお願いしてませんのに」

 

「いえそんなことよりお屋敷に18:00までに帰るようセバス様に申しつけられております」

「もし間に合わなかったらお嬢さまにも想像つきますよね」

 

"320秒遅れだ!セシリア様・ルナリア その場で各自、腕立て伏臥腕屈伸320回だ! はじめ!"

 

 鮮やかに、脳内再生された。

 

「かっ帰りますわよ ルナリア」

 

 ふたりで、でそそくさと後片付けをする。

 

 白択に目をやると、足を崩して伏せてのんびりと草をモグモグ喰んでる。

 

 ちょっと待って,あなた白択でなく「ギフト白択」内包の人でしょ?

《魔族で間違いありません》

 

 なんで雑草を平然とモグモグ食べてるの人としていいのそれで?

 

 わたしが人のアイデンティティに思い悩んでいる横で、お嬢さまは推しの勧誘に余念がないです。

 

「本日は助けていただいたことあらためて感謝いたします」

 

 お嬢さまスマイル全開です。

 

「本日はこれにて失礼致しますが、まだお話ししたいこと、お願いしたいことがたくさんございます」

 

「明日も……明日も来るのは無理よね――」

 

「そうだわ、ぜひ我がアーネスト家にお越しください」

 

「家人には申し伝えておきますので、特上の牧草用意させておきますわ。明日の午後でどうでしょう。うん、約束ですわよ」

 

「でわ、ごきげんよう。失礼致します」

 

 屈託のない笑みで、一方的に約束押し付けたのね。

 

 白択が「メェェェ――!」と鳴いた。

 

 ……それ、了承……でいいのかな?

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