お嬢さまが、ちびっ子可愛い悪役令嬢   作:デチャウ

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第五話 その一 お嬢さまは、お片づけができません。

わたくし特級メイドのルナリアは、今大変なピンチです。

 

正門でのいざこざの後、お嬢さまとリリィさまの入学手続きを終えて、今度は入寮の手続きですね。

 

なんて具合で、てきぱきと手続きをこなして寮のお部屋の鍵を受け取りました。

 

「リリィ、相部屋があなただなんて、わたくし達、本当にご縁がありますね。嬉しいですわ」

「わたしも嬉しいです。よろしくお願いいたします、セシリア、いえ、セシリー様」

 

そんな、百合百合の会話をバックにバッグをもっていざ、お部屋に!

 

と思ったら、寮の事務員に呼び止められました。

 

「申し訳ありません。寮内への立ち入りは原則生徒のみです。お付きの方は、ここまでですよ」

「へっ?」

「ちょと待って、それはわたくしのギフトですわ」

 

事務員さんが、驚いた顔で、手元の書類を見返す。

 

「確かに、セシリア様のギフトは人型タイプの記載はありますが……」

 

疑いの眼差しの事務員さんに、唯一の特徴の量子光が流れる瞳を指差して、可愛くギフトアピールです。

 

「本当に、ギフトなんですね。失礼いたしました。あっ、でもギフトでも、寮内での不必要な顕現化は控えてくださいね」

「わかりましたわ。では、改めてお部屋に行きますわよ」

 

お嬢さまも、何食わぬ顔してますが、ダラダラと嫌な汗かいてますよ。もちろん、わたしもですが。

 

寮の部屋は、左右対称にベッドと書机が配置された二人部屋。それほど狭くはないが、豪華絢爛のお嬢さまの自室に比べれば三分の一にも満たぬ広さです。

 

旅行鞄をとりあえず床に置いて体を伸ばしてリラックス……

 

なんて、場合じゃありません!

 

「ど、どうしましょう、お嬢さま?」

「こ、これは由々しき問題ですわ」

「あの、おふたりとも、慌てて、どうしたのですか?」

 

「消せないのよ!」

「消えれません!」

 

被った。

 

「あの、うまく聞き取れませんでしたが……ルナリアさんが、収容魔法を使え……ない?」

 

「そのとおりよ」

「そのとおりです」

 

また、被った。

 

「そうなんですか、わたしギフトって消えるのが普通だと思ってました。疲れません?」

「疲れるんですか?」

 

思わず、聞いてしまった。だってわたしが居てお嬢さまが疲れてたんなら申し訳なさすぎるもの。

 

「ギフトって意識してないと消えちゃいますよね。一緒に何かしてる時ならいいですけど、ずっととか無理じゃないです?」

 

「そうなんですって、ルナリア消えなさい」

「無理ですよ、わたしお嬢さまが寝てる時だって消えませんもの」

「どういうことかしら、あなたやっぱりどこか壊れてるんじゃない?」

「うー、わたしも自信無くなってきましたー」

 

「まあまあ、おふたりともそんなに悩まないでください。おいで、黒竜」

 

リリィがそういうと、その肩に彼女のギフトが現れた。言わずもがなのカバドラゴンだ。

 

「カバじゃないわよ、バカ!」

「わたし、まだ何にも言ってないからね」

 

「コラ、黒竜。バカとか言っちゃダメでしょ、謝りなさい」

 

リリィがカバドラゴンを(たしな)める。渋々とした顔でバタバタこっちを向く。

 

「本当のこと言っちゃってごめんなさい」

「喧嘩売ってんのかしら、カバドラゴン!」

「買うお金持ってるの?バカメイド」

 

「うっ、うわーん! お嬢さまー、カバドラゴンがいじめますー!」

「何、あんなちっさいのに、負けてらっしゃるのこの駄メイド」

 

「チビはどっちよ。グェッ!」

 

カバドラゴンが言った途端、電光石火でお嬢さまがその首を締め上げた。

 

「ルナリア、この生意気な口を縦にも割っておあげなさい」

「かしこまりです。お嬢さま」

「あわわわ、ごめんなさい、黒竜を許してー」

 

お嬢さまが、ハッと正気に戻る。口を縦に裂かないんですかー

 

「ふふふ、リリィ冗談ですわ。びっくりさせたわね、えっーと黒竜ちゃん」

 

そう言って、黒竜に謝るふりして顔を近づける。小声で「二度目はないと覚悟なさい」そう囁いて解放する。

 

カバドラゴンがリリィの肩口に隠れて震えてやがります。ざまぁです。

 

「黒竜。ルナリアさんを診てあげて。どこか故障されてるのか収納魔法が使えないみたいなのよ」

 

中身バレはマズイわよね。

 

(プラム、ありったけの防壁を展開して!)

《…… …… …… 理論上最強の防壁が隣に存在してます》

(???……!!)

 

「お嬢さま、バリア!!」

「キュー!!」

《検査用ナノマシンの完全消失を観測》

 

「きゃぁー!! リリィお姉ちゃん、あれ変よ! 中が覗けない!」

 

カバドラゴンが弾けるように飛ばされてリリィに受け止められる。

 

「いけませんね。カバドラゴンごときが乙女の秘密を覗き見ようなど思い上がりも(はなは)だしいです」

 

お嬢さまを盾にしながらドヤ顔で告げる!

 

お嬢さまが、ピクピクしてるけど、これで乙女の秘密は守れたわ!

 

「なにを、しやがりますの!! この駄メイド!!」

 

シャーって、お嬢さまが、手に噛みついてきた。

 

「痛い! 痛いです。お嬢さま!! やめてー」

 

 

「ったく! どういう了見ですの、ルナリア!」

「ごめんなさい、お嬢さま」

 

アーネスト家伝統の『ドゲザ』で反省させられてます。

 

「せっかく、リリィが診てくれるのに、拒否するとか、どうしてなの言ってごらんなさい!」

「ごめんなさいお嬢さま、ルナリアはシークレット満載の乙女なので無理なのです! それに、ルナリアは消えられないわけではないのです。ほら、このとおり」

 

《光学迷彩展開》

 

「セシリー様、ルナリアさん消えましたよ」

「そうね、消えたわね」

 

お嬢さまがわたしの頭に肘ついてもたれてる。

 

「収納できたのかしら? なら問題解決ね」

 

お嬢さまは、わかってニヤニヤしてる。イジワル。

 

「ふう、もういいですわ。明日改めて学園に相談してみますわ。ルナリア隠れてないで、荷物を早く片付けなさい」

「はーい」

 《光学迷彩解除します》

 

* *

 

てきぱきと鞄を開いて荷物をしまってフー終了。ついでにリリィ様のも手伝いまして。フーです。

 

「ルナリアさん、ありがとうございます」

 

うん、お礼の言えるいい子ですね。ベッドの上で足パタパタしてるのとは、大違いでございます。

 

「痛っ!」

「なんか、悪口言われた気がしましたわ」

 

お尻蹴ってくるし。エスパーですか?

 

「本当に姉妹のように中がいいのですね。わたしは、女きょうだいがいなかったからうらやましいです」

「いえ、わたくしも兄しかいませんから同じですわ。まあ、仮にいても、ルナリアが血縁だったら血を呪うレベルの災難ですわよ」

 

残念! 心血を注いだ生みの親ですよーだ!

 

「本当に仲がよろしいのですね」

「「なんでそうなる」」

「ほら、仲いいじゃないですか」

 

優しく魅力的なヒロインだけど、リリィさまってどこか独特な感性なのね。

 

まあ、ヒロインと悪役令嬢にしては、ほのぼの和気あいあいで夜も更け就寝時間が近づいきました。

 

ぱぱっとパジャマに着替えるリリィに比べてお嬢さまは、準備が多いです。スキンケアに明日の縦ロールの為に布で巻くラグカールとかね。

 

リリィが、目を丸くして見てます。公爵令嬢は大変でしょ。

 

でいつもの青白ボーダーの囚人服。いえ、パジャマに着替えさせ、わたしもお揃いのピンクと白の囚人服にお着替えです。

 

さて、寝ましょうというとこで、わたしのベッドが無いことに、やっと気づきました。

 

「もう、仕方ないわね。今日のところは一緒に寝るわよ」

「本当ですか、抱きしめて寝ていいのですか!」

「そこまで、言ってませんわ!床で寝たいのかしら?」

 

プルプルと首を振り、明かりを落としてお嬢さまの横に潜り込む。

 

うーんお嬢さまの匂い、たまりません。幸せ!

 

そんなわけなかったです……

 

寝相悪っ! しかもなんの夢見てるんだか、格闘系です。寝てたところを後ろから、チョークスリーパー決めながら足を決められて落とされかけました。

必死に、手をタップしたら、ナインカウントでパッと解放されて脱出できた。

 

なに、プロレスなの??

 

その後もベッドに戻ろうとしたら、キックやパンチが飛んできて、わたしのリングアウト負けです。

 

「あの、ルナリアさん……こっちで一緒に寝ます?」

「あー聖女さまー」

「うふふ、そんなんじゃないですけど、さあ、どうぞ」

 

危険なリングで寝るよりも、聖女の癒しですよね。

 

「すいません、リリィさま。お言葉に甘えます」

「どうぞ、です」

 

 ちょっと寝ぼけてるのか、なんかすごく近づいてくる。

 

「なんだろう、ルナリアさんってなんか、なつかしい気がします。お母さんというか、あっごめんなさい……」

「いいのです。さあ、こっちにいらっしゃい」

 

 そう言ってリリィを軽く抱きしめてあげる。

 

 程なくして、リリィは完全に寝ました。こっちも別な意味で寝相が悪いです。

 

 モゾモゾと近づいてきて、わたしの胸の間に、完全に顔を埋めてしまった。苦しくないの息できてる?

 

 さらに、モゾモゾと顔を動かしてるし、手まで伸びてきた。

 

 ガッツリホールドされたところで、吸い付かれた。

 

 …………!!

 

 出ないからね! お乳とか出ないからね! 吸わないで!

 

 なんとか引き剥がして、ベッドから逃げる。

 

「あれぇ? ルナリアさんどうしたのです。早く一緒に寝ましょうよー」

 

 まるで、子供のような甘ったるい声でリリィがベッドに誘う。

 

 わたしは恐怖でプルプルと首を横に振る。

 

「ワタシハ、ロボナノデ、ヨコニ、ナラナクテモ、ヘイキデス。オヤスミナサイ」

 

 ベッドの間で立ったまま寝たふり決行です。

 

 リリィも、寝ぼけてるのか、「そうですか、便利ですね」とか言って眠つちゃった。

 

 (プラム、姿勢制御できる?)

 《できますが、疲労は取れませんよ》

 (それでも、いいわ。お願い)

 

 

 うーん、つらい……

 

 深夜の寝静まった部屋に怪しい物音です。

 

 パタパタ……

 

 羽音!? ピョコンと、わたしの頭に対の角(シックスセンスセンサー)が生える。

 

 リリィのギフト『カバドラゴン』が、わたしの前を横切って行った。

 

 こやつも、寝ぼけてる? なわけないか。

 

 いったい、何が目的? 薄目を開けて見てみる。

 

「悪役令嬢、排除よ!」

 

 あろうことか、カバドラゴンがお嬢さまの顔の前で、大きく息を吸い込んだ。火を吐く態勢?!

 

 咄嗟に体が動く! それよりも早く、カバドラゴンの……

 

 首がガッツリとお嬢さまに締めらてる。

 

 ……くうぅ! 苦しげな、チビドラゴンの(うめ)き。

「グー!」 お嬢さまの寝息。

 

 お嬢さまが、空いてる片手で、顔とレバーにワンツーを叩き込む。締めてた首から手が離れる。

 

 カバドラゴンが、体を丸くして息を整える。

 

「グー!」

 

 寝息一発、お嬢さまのボレーキックがカバドラゴンに炸裂!!

 

 カバドラゴンが、わたしの目の前を通過してリリィのベッドの上の壁に、ベチャンと叩きつけられポトリと落下。

 

 ざまぁです。お嬢さの寝相なめんなでございます。お嬢さまの将来の結婚生活に一抹の不安は感じますが、まーヨシです。

 

 落ちたカバドラゴンはというと、

 

「むにゃ、黒竜?……いっしょにねるの……」

 

 と、リリィに回収されて、ギュッと胸に押し付けられ再び呼吸困難。パタパタがヒクヒクになってガクッと消えていった。

 

  カバドラゴンも、アクティブ防護システム(APS)標準装備のお嬢さまの怖さを思い知ったか!

 

 でも、何かと心配ですね。

 

『悪役令嬢』なぜカバドラゴンそんな言葉を使う。考えられるのは、転生者だよね。

 

 ダメだー、疲れて頭が回んないや。

 

 もう外が明るいじゃないですかー

 

 綺麗な朝焼けを眺めながら、疲労度MAXで学園生活のスタートです。

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