お嬢さまが、ちびっ子可愛い悪役令嬢   作:デチャウ

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第五話 その三 世界もゲームも何それです。

 ランチタイムの時間です。

 

 プリティーな特級メイドルナリアです。

 

 一波乱あった入学式より約一月、新入生は入学レクリエーション期間も終わり、いわゆる普通の学園生活に入っております。

 

 当然友達もでき、仲良しグループができ上がる頃合いですね。

 

 お嬢さまはといえば、ランチタイムの学生食堂。庭園に面したサンルームのテラス席。

 

 この食堂で一番の特等席で、取り巻きに囲まれて優雅にランチ中です

 

 ゲームのまんまのボスザル令嬢です。

 

 でも、悪役令嬢まっしぐらかというと、そうはなってません。

 

 なぜならば、同じグループにヒロインの南の聖女ことリリィさまもいるからです。

 

 アル王子の婚約者候補の指名がイヤすぎて、クエルク様の指輪をはめたリリィさま。

 

 そのままクエルク様ルート突入と相成りまして。

 

 今や完全にクエルク様の婚約者として、シンデレラストーリーを駆け上っております。

 

 その証拠にお嬢さまのグループ所属ですが、今はここにはいません。

 

 生徒会室で、クエルク様とラブラブランチ中でございます。

 

 お嬢さまなんて今や「リリィ姉さま」なんて呼んでる始末です。

 

 リリィさまが同じグループにいることで、ゲームとは違う展開です。

 

 ゲームではお嬢さまを筆頭に名門貴族令嬢グループとして女子生徒のヒエラルキーのトップに支配者として君臨していた。

 

 それが、今回はリリィさまの聖女活動を支援する会になっています。

 

 元のゲームでもリリィさまは、週末は街で無料の診療や炊き出し、孤児院訪問なんて活動をするマジ聖女様として庶民にも愛されていました。

 

 お嬢さまがそれに目を付け、いえ、賛同して一緒に活動し始めました。

 

 ただね、やるからには、『徹底して効率良く完璧に解決』がモットーのお嬢さまですから、目に入る範囲の救済なんて小手先では、終わらせません。

 

 この王国に蔓延る貧困や低教育・医療問題、それをどう解決していくべきかを議論し、模索し実践していく高尚なサークルとなってます。

 

 もちろん、パフォーマンス好きのお嬢さまですから、週末の炊き出しなんかにも自ら参加して売名行為も怠りません。

 

 聖女リリィもクエルク様の婚約者ですので、王都における北の冷酷無比な戦闘民族アーネスト家の酷評は、絶賛改善中です。

 

 リリィさまにしても、お嬢さまのグループにいることで、高位貴族に見初めらたシンデレラへのやっかみやヘイトを退けて、逆に貴族令嬢達との交流も捗ると悪い環境ではないみたいです。

 

 こうして、公爵令嬢と聖女をツートップにするこのグループは発足一月にして憧れと羨望のヒエラルキートップの派閥へと登り詰めたのでした。

 

 

「さすが、レディセシリアだね、見事な人身掌握術だよ」

「まあ、お嬢さまはマウント取るべく運命(さだめ)られたボスザルさんですからね。あっ、また人の皿から盗んだ! やめてくださいアル王子!」

「僕の皿をさっきから、つまんでる君が言うの?」

 

「殿下、バカップルですか、まったく見てられませんよ」

 

 スリフト様がうんざりした顔で声をあげる。

 

 わたしルナリアは、毎昼食をなぜかアル王子達と共にしています。

 

 だって、勝手に来て横に座るんだもん。

 

 まあ、会話とかは嫌じゃないというか肩肘張らずにいられる雰囲気が心地よくはあるんだよね。

 

 ただね。周囲の見る目は痛い。

 

 他人のギフトに横恋慕する王子様の悲恋、禁断の王子とギフトの種族を超えた愛

 

 とか、噂されるし、しまいには私が、どこまで人間に近いのかと下世話な考察までされる始末。

 

 そういえば、確かにどこまで人間に近いのか、わたしも興味あるな。

 

《透香の遺伝子情報に基づいて設計された躯体がベースなので、人間としての機能は備わってます》

(ということは?)

《生殖能力も保有してます。良かったですね》

 

 月のモノがくるからそんな気はしてたんですが、人権の無いギフトにとって良かったかどうかは悩みどころです。

 

 まあ、アル王子とそんなことには、なりたくないからどうでもいい話です。

 

 それよりも、大変だったのはわたしの学園内での処遇でした。

 

 入学式の後、お嬢さまが学園に『コイツ24時間稼働で消えないのよ』と正式に申請。

 

 学園内で一人メイドをつけて闊歩する公爵令嬢っていうのも、学園側が変に優遇してるんじゃと勘繰られる危険を恐れて却下。

 

 日中は、寮内で待機の案は、一人だけギフトがいない状況になるとお嬢さまが激怒して却下。

 

 紆余曲折の挙句、日中は皆と同じ制服を着て、学生と同じように生活するという案で決着しました。

 

 というわけで、現在お嬢さまと同じ制服を着てお嬢さまの隣で授業を受けて生活してます。

 

 でもね、見た目が18前後のわたしが14〜15歳の中に居るとコスプレ感が半端ないです。恥ずかしい。

 

「僕と一緒に授業受ければいいのに」

 

 なんて王子からもチャチャ入れられる始末です。

 

 近況報告は以上です。

 

 そして現在、わたしとお嬢さまを悩ませる最大の問題は、もう一人の皇子さまとお嬢さまとの密約の件です。

 

 まあ、お嬢さまは悩んでないでノリノリですけどね。

 

 シャムロック・グラリス魔族帝国第二王子が予告通り、学園の新入生に偽装して侵入しています。

 

 新入生の侵入生なんてね。

 

 偽装と言っても魔族の特徴のツノと額の秘石を隠して色を白くしただけの雑な変装に、お嬢さまの手回しでアーネストの傍系の男爵家の養子ということで、学園に入学。

 

「バレたら外患誘致罪じゃないんですか?」

「バレたら魔族帝国を後ろ盾にして、アーネストで逆に支配してやるわよ」

 

 確信犯の国家転覆を目論むテロリストでした。

 

 親戚って(てい)でお嬢さまに付き従う屈強で涼しげなイケメン騎士。

 

 今や王子の従者スリフト様を凌ぐ従者ポジションの人気キャラです。

 

 あの顔で常時付き従い守ってくれる騎士様とか、女の子なら憧れちゃうもんね。

 

 二人して裏でコソコソと王立図書館の禁書庫への侵入方法を日々探ってます。

 

 午後の授業を聞き流しながら、脳内の禁書(プラム)に尋ねます。

 

(魔術書(グリモワール)なんて存在するの?)

《ナノマシン操作用のプログラムが組まれた端末デバイスですね》

(それなら、プラムでも同じことできるんじゃないの?)

 

《アカシックのデータ量とわたしの解析力ならば間違いなく可能です》

 

 ほら、禁書内蔵してました。 

 

(なら、禁書庫になんか忍び込まず無事解決じゃない)

《当躯体はマスターと当躯体以外に対するナノマシン操作は安全と機密保持の為不許可です》

 

また、安心安全ロボなのね。

 

(毎回思うけど、わたし制約多すぎない? その制約って誰が決めてるの?)

(制約については、わたしプラム・プロセスが透香と決めた約束に基づいて運用されてます」

 

(えっ! わたし? どういうこと?)

 《透香、あなたがわたしを作ったのですから当然です》

 

??……

 

プラム、確かにその名自体はわたしも知ってるけど……わたしがゲーム制作用に自作したAIにつけた名前。

 

アダムの食べた知恵の実はりんごなんかより、酸っぱい(プラム)の実だよね。なんて冗談でつけた名前。

 

(プラム、あなたの名前の由来は?)

《『神の実はきっともっと酸っぱい梅味だよね。わたしの作った知恵の実はプラム、あなたの名前よ!』そう記憶されてます》

 

 プラムがわたしの声を合成して再生する。光景が鮮やかに蘇る……

 

 けど、けど、そうなると……

 

 この世界は、わたしの世界と地続きなの?!

 

 大きく深呼吸して……

 

 授業中に考える問題じゃないわね!

 

 わたしは、故意に思考を停止した……

 

 後で、ウンギャアーって叫びたいわ……

 何それです。

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