ランチタイムです。
わたしルナリアはお嬢さまから、シークレットミッションを受けました。
「いいこと、アルスト王子との昼食中に
「かしこまり!です」
ミッションスタートです。
「アル王子、特に興味があるわけではないのですが王立図書館の禁書庫に蔵書されているグリモワールについての情報をさりげなく教えてください!」
ちょっと面食らった顔のアル王子。
さすが、アル王子。勘がいいわね。侮れないわ。
「唐突だけど、いいよ。透香の頼みなら何でも教えてあげるよ」
「殿下! 敵に何を!」
スリフト様がテーブルを叩きながら席から立ち上がる。
「スリフト、誰が敵なんだい?」
「いや、でも、そいつはアーネストの……」
「スリフト、アーネストはまだ王国の敵じゃないよ」
スリフト様が、バツの悪そうな顔して、わたしをひと睨みしてから、席に座り直した。
怖っ! もう少し仲良くできたらいいのにね。
「はい、スリフト様こちらをどうぞ」
わたしは、ランチの皿からお肉を一切れスリフト様の皿に移した」
「なんだおまえ、けっこういいやつなのか?」
餌付け成功です。
と思ったら、アル王子がその肉をヒョイと取って食べちゃった。
「ダメだよ、透香。僕以外の男に優しくしちゃ」
空の皿を悲しそうに見つめるスリフト様。
不憫ですね。
「で、透香。グリモワールの話だったね」
「はい、そうです。さりげなく教えてください」
「うん、さりげなくだね」
「禁書庫に所蔵されてるグリモワールは、約1000冊だね」
「えっ! グリモワールって何冊もあるのですか?」
アル王子、わたしの反応を楽しんでますね。
「そうだよ、グリモワールは、なんらかの魔法を発動できる書物を指す言葉だからね。たくさんあるよ」
じゃあ、シャムロックの欲しいグリモワールを1000冊の中から探さなきゃならないのね。
また、ハードルが上がったわ。
「ちなみに、開くだけで発動するし、大抵は開いた本人に対して効果を発揮する呪いの書だね。危ないから禁書庫で保管してるんだよ」
「なんの目的でそんな危ないものが存在してるのですか?」
「多分ね、ダンジョンとかの宝物庫のブービートラップや特定の誰かを罠に嵌めたくて作られたんだと思うよ。」
「なんか、趣味悪いですね」
「そうだね、でも中には有用なグリモワールもあるんだよ。特殊な能力が得られたり、病気を治したりとかね」
「なるほどですね。アル先生、質問です。その効果ってどうやって判別するのですか?」
「いい質問だね、透香。実は開いてみなきゃわからないんだよね。罠に効用を書くバカはいないでしょ」
「じゃあ、禁書庫のグリモワールって?」
「もちろん、誰かが引っ掛かって効用が判明してるものは、目録作ってあるよ。でも大半は効用不明だね」
悪い顔で笑ってるし。
けど、困りましたね。
グリモワールの大半が効用不明とかどうしましょう?
うーんって、頭悩ましてると、スリフト様が横からとんでもない提案してきた。
「そんなの簡単だろ。簡単に死なないですぐ再生できるギフトに開かさればいいだろ」
「そうだね、それが一番安全な検証方法だろうね」
ふたりしてめっちゃ悪い顔でこっち見ないで。
マズイですね。このふたりでさえ思いつくってことは、お嬢さまと魔族皇子ならすぐ思いつくというよりも、絶対にそれしか思いつかないわ!
ルナリアの命の危機です。
《当躯体の防御解析スピードと再生能力なら命にかかわる危機的状況は皆無です》
そうね、じゃあ安心ね……なわけないないでしょう!
呪いを解除するまでの間は悶絶確定じゃないの!
半分にしたって500回も苦しんだらわたしの心が壊れるわよ!
《補足ですが、当躯体よりも完璧な防御能力保持者がいますがそちでの運用を提案します》
なる! 最強のイージスがいたわね。
さらにこれ、使えるんじゃない。
「ねえ、ねえ。アル王子」
「なんだい、透香。なにか、いい案思いついた?
」
「グリモワールって結局は厄介ものだけど、有用なのもあるから捨てれないって認識でいいの?」
「そうだね、その認識でいいよ」
ふふーん。これはいけそうです。
「じゃあ、そのグリモワールの鑑定を安全にできるとしたら頼みたい?」
「それが、できるなら報奨金付きでも頼みたいだろうね」
「うってつけの筋金入りの鑑定者がいるんだけど、話を通してもらえます? 報奨金は交渉で決めるとして、もう一つ、鑑定したグリモワールの中から一冊だけ好きなのをもらうって条件はダメ?」
ニッコリと笑ってこちらを見る王子さま、
「なるほどね。魔族の王子さまとアーネストが最近密約を交わしたって噂があるんだけども.透香は何か知らないかな?」
いきなり、なんの話を、おっしやるのこの王子!
マズイです、お嬢さまが外患誘致罪になってしまう。
「知らない、知らない、知らないです! 魔族の皇子がグリモワールなんて欲しがるわけないじゃないですか!!」
首がちぎれるくらい横に振って否定です。フルフルルナリアちゃんです。
「これは、報奨金の額を値切れそうだね。魔導書の件はOKだよ。話は通しておくよ、準備が整ったら連絡するよ。お互いにいい取引だね」
アル王子が、悪い笑顔です。本当に抜け目ない方ですね。
「スリフト、僕らも教室に戻るよ」
そう言われたスリフト様が、ハッと我に返ったみたいに立ち上がる。
「王子!! あれ? ……?? いえ、なんでもありません」
「スリフト、疲れてるんじゃない」
そう言って、こちらにだけわかるように、ウインクして食堂から、出ていった。
《精神操作系のスキルを感知しました》
アル王子のスキルって肉体強化じゃないのかな?
* * *
放課後、図書館のひと気のないコーナーの書架の間。
お嬢さまとシャムロックに成果報告です。
「というわけで、さりげなくアル王子と交渉して、グリモワールをもらえることになりました」
「なんか、色々とマズイ話もあるけど、よくやったわルナリア」
「えへへ、褒められました」
「あとは、目的のグリモワールだけど、ゴートマンあなたが探してるのは、なんのグリモワールなの?」
「さすがだね、メイドさん。やっぱり優秀だね。そうそう、俺の探してるのは、解呪のグリモワールだ」
「解呪って、誰か呪いを受けたものがいらっしゃるのですか」
お嬢さまが、なんか勘ぐるような口調で聞き返す。
「おう、俺の親父殿だ! 七年前のアーネストとの戦闘の時に、勇んで単騎で公爵邸に乗り込んで、アーネストの魔女の呪いを受けて返り討ちにあったんだ。笑かすよな」
「アーネストの魔女? 武を重んじる当家で呪いなんて陰険な戦法使うものはいないと思いますが、誰にどんな呪いを受けたのかしら?」
「それな、親父殿も言ってたわ。その手の攻撃はないと油断してたら、すごい偉そうな魔女が出てきて、「せっかくお越しくださったのですから、お土産の一つも持たせず返してはアーネストの恥ですわ!」って呪いガッツリ貰って逃げ返ってきたんだよ」
お嬢さまが、ダラダラと汗をかいてますね。ハハーンです。
「でな、とにかく興奮したり怒ったりすると、頭に血がのぼるんじゃなくて貧血気味になるんだよ。それまでイケイケドンドンの皇帝様が、すっかり大人しくなって、あんだけ太ってたのもシュッとしちゃってもはや別人だよ」
シャムロックが、ウンウンと頷いて、反芻するように説明してくれました。
「あのね、ゴートマン。それね、多分わたしのお母様です……わ」
お嬢さまのお母様は、魔女ではなく聖女さまで今は教会に幽閉状態のはずですよね。
「おー! お嬢さま母親か、ならうちの親父様でも勝てなさそうだな、ハハハ!」
「なんで、納得してるのかしら? ゴートマン。でもね、それ呪いじゃなくて、過剰治療っていう聖女の禁止魔法よ」
「なんだよ、それ?」
「多分、あなたのお父様の血のめぐりとか太りすぎとかの悪い症状を過激に治療したのよ、貧血にしたり太れなくしたりって具合でね。それでお母様は聖女の禁を破って教会に幽閉されて反省中よ」
「ハッハハ! 笑えるな。 いや、ごめん。そういう意味じゃなくて、互いに過激な親もって苦労するなって話な」
「確かにそうね。苦労するわね」
お互いにクスリと笑ってます。
何んなんです? 隙あれはいい雰囲気作るの趣味なんですか。許しませんよ。山羊ヤロー。
「でも、それならグリモワールなんて頼らなくても、お母様に聞けば直せるはず、なんならリリィ姉さまでも直せるかもですわよ」
そんな進言にシャムロックが、少し顔を曇らせた。
「それがそうもいかないんだよ」
なんで? て顔でお嬢さまと一緒にシャムロックの顔を伺う。
「帝国の王族には、『大老の義』っ言われる成人する為の試しがあるんだよ……」
シャムロックが、語ってくれた内容は、要するに、度胸試しの課題にクリアしないと王族でも帝国名『ノクスリア』を名乗れず皇位継承権が与えられないとのことです。
で、今回シャムロックに与えられたのは、グリモワールの奪取ということなので、持って帰るのも必要なんですね。
「少し、きな臭いわね。ゴートマン、第一王子と皇位継承争いとかあるのかしら?」
「へっ! なんでわかった? 兄貴は割と策略家なんで武闘派の連中はよく思ってないのも多いんだよ」
お嬢さまが、呆れ顔です。
「あのね、先程の話で皇帝の解呪にグリモワールが必要というのが、まず出所不明。おまけにグリモワールは開かないと効果不明でほとんどが呪いの書、普通に調べたら間違いなく死ぬわよ」
「そんな不可能ミッションをお題にするなんで悪意以外の何者でもないわよ」
「まあ、そうなんだけどな。俺の師匠の『スプリガン将軍』もそんなこと言ってたわ」
「スプリガン将軍が師匠ですって! ぜひ一度、合わせてちょうだい。わたしの愛読書、「始祖皇帝風雲記」の伝説級キャラじゃない!」
「おっ、おう」
「これは、やる気が出てきましたわ! うまくやってゴートマンを次期皇帝に押し上げて、スプリガン将軍に褒めてもらうわよ!」
お嬢さまがのやる気スイッチが入ってしまいました。やる気の炎がメラメラです。図書館ですから、火気厳禁ですよ。
「なあ、メイドさん。ヤバイことになりそうだな、やっぱりお嬢さまは楽しいな」
「いえ、あなたの問題ですよ。お嬢さまに任せるとか頭大丈夫?」
「痛っ!」
また、お尻蹴ってくる。
お嬢さま、やめて!