お嬢さまが、ちびっ子可愛い悪役令嬢   作:デチャウ

31 / 39
第5話 その五 グリモワール鑑定団

「なんか、すごいね」

 

 そう言われたのは、アルスト王太子殿下ことアル王子でした。

 

 王立図書館の地下にある禁書庫へと続く階段の前。

 

 アル王子が、約束通り話をつけてくれた、魔導書(グリモワール)の鑑定にきています。

 

「本日は、お嬢さまが鑑定の為の対呪用神聖装具で口を聞けないので、代わりを私が務めさせていただきます」

 

「神聖装具ね、僕には簀巻(すまき)で猿ぐつわをされて吊るされているようにしか見えないけどね」

 

 アル王子の説明どおりのお嬢さまがシャムロックの背中でモゴモゴ言ってる。

 

「神聖装具「ミノムシ」です。吊るしてる男は、アーネストの傍系の男爵家子息『クローバー』とサポートに聖女リリィ・レイン様とわたくしの4名が鑑定いたします」

 

「そこの、男! 王太子殿下の前で(ひざまず)かぬは、不敬であるぞ!」

 

 スリフト様が、剣の柄に手をかけて凄む。

 

「申し訳ありません。跪くと後ろのミノムシが逃げるので許してください」

 

「ハハハ、構わないよ別に、ここで国際問題にもしたくもないからね」

 

 アル王子が笑いながらスリフト様を手で制した。

 

アル王子ってば、シャムロックのこともすでに把握してらっしゃるのね。

 

「さあ、行こうか。お手並み拝見だね」

 

 アル王子を先頭に禁書庫へと向かった。

 

 禁書庫といってもさすがは王立、広いです。

 中央の閲覧スペースと(おぼ)しき場所はすでにテーブルも片付けられ、どわっと本が縦積みされてます。

 

「調べてみたところ、効果不明のグリモワールは666冊あったよ。ちなみに、こちらがすでに効用が判別してるものの目録だよ。目的のがあるか、後で目を通しておいて」

 

 666冊とか、不安な数字を示された。縦積みの本の山、なんか不気味なオーラを出してます。

 

 帰りたくなってきた。

 

「まずは、本当に鑑定できるのかを、この効果が判明しているグリモワールで試してもらえるかな」

 

「もっともな、話です。よろしいですよ、椅子を一脚お借りしますね」

 

 借りた椅子にお嬢さまを座らせてロープで逃げないように縛りつけます。

 

 猿ぐつわを外してっと、

 

「何をなさるのですか、公爵令嬢たるわたくしになんたる仕打ちですの! この駄メイド!」

「お嬢さまがジャンケンで負けるから悪いんですー、公平ですよ。観念してください」

「ムー!」

 

 観念したみたいですね。

 

 わたしの予測演算能力の勝利です。まあ、鼻からお嬢さまをはめる気満々でしたけどね。

 

 だってわたしが痛いのはヤダし、お嬢さまの方がディフェンス能力高いんだから当然です。

 

 今回の作戦は、お嬢さまに向けてグリモワールを開く、当然効果はお嬢さまを襲います。

 

 でも、お嬢さまは対ナノマシン抗体の無敵のイージスがあるから効きません。

 

 お嬢さまが苦しんでるうちにわたしが解析する計画です。

 

 シャムロックはお嬢さまの横で待機して、発動したグリモワールが炎とか雷の副生成物による物理攻撃の場合は予知を使ってお嬢さまを退避。

 

 それでも、もしもの場合に備えて聖女(レスキュー)装備の完璧な布陣です。

 

 リリィ様は、福祉活動用の資金稼ぎと言ったら、喜んで協力してくれました。

 

 では、試しの一冊目いきますよー

 

 お嬢さまに向かって、アル王子から預かったグリモワールを開く。

 

「モキュー!」

 

 お嬢さまの、ナノマシン抗体発動の愉快な叫び声が上がる。うーんいい声!

 

《抗体反応によりナノマシン消滅を確認。解析完了しました。分子破壊系の即死魔法です》

 

「アル王子! お試しで即死魔法とかありえないんですけど!」

「正解だよ。ちゃんと解析できるんだ。素晴らしい! まあ、失敗してもメリットのある選択するのは当然だろ」

 

「ルナリア! そいつに今の魔導書ぶつけてやんなさい!」

「はい、かしこまりです!」

 

「ダメです!」

 

 割って入ったのはやっぱりヒロイン、リリィさまです。

 

「セシリー様ダメです。(こら)えてください」

「リリィ姉さま! やらせて、アーネストは倍返しなのよ!」

「それでもダメです。今やったら、お金がもらえなくなります。子供食堂用の建物をもう予約してるので困ります!」

 

 綺麗事でなく、えらく現実的な説得がきましたね。さすが、商家の出です。

 

「そうだな、グリモワールもらえないと俺も困るな」

 

「というわけで、無事意見がまとまりましたので、お嬢さま本番にいきましょう」

 

「あんたたちねー!」

 

 お嬢さまが、小鬼の形相で、こちらを睨んでます。

 

 怖いので、そばにあったグリモワール手にとって、

 

「はい、お嬢さま。次はこちらです」

「モキュー!」

《解析完了、性別が変換される呪いです》

 

「えーと、TS魔導書、割と人気っと、はいお嬢さま次ですよ」

「モキュー!」

「あぶね! なんか火が出たぞ」

 

 シャムロックがお嬢さまの椅子の背もたれを掴んで火を避ける。お嬢さまは椅子ごと逆さまです。

 

「ナイスです。クローバーその調子です」

 

 お嬢さまが、青い顔してます。

 

「火魔法属性っと。お嬢さまなんか楽しくなってきましたね。次いきまーす」

 

《解析完了、顔以外が四足動物に変わる呪いです》

 

「人面動物(ホラー)ですね」

 

「お嬢さま、巻いていきますよー。次!」

「ルナリアの鬼!」

 

 お嬢さまの悲痛な叫びに合わせて、ぴょこんと2本の角が生えた。

 

 《データ収集効率化の為、シックスセンス・センサーを展開します‎‎》

 

「イヤー!」

 

 プラム、ナイスタイミング!

 

 初日は、半日で約150冊の解析を完了です。明日は学校が休みなので頑張れば終わりますね。

 

「明日も、頑張りましょうね、お嬢さま!」

「セシリア、いい子になるからもうイジメないで、痛いのヤーなの、モキューってヤーなの……」

 

 マズイですね。お嬢さまが幼児退行気味で壊れかけてらっしゃる。なんか新鮮!

 

 完璧な布陣と思ってたら、お嬢さまって聖女の魔法は効かないんでした。ずっとモキュモキュ言うのが可愛いってリリィ様はヒール連発してたけどね。

 

「最初ヒールしたときパチンときてびっくりしましたけど、なんか身体が調子良くなるんですよ、あとモキューって癖になりますね」

 

 リリィさまが楽しげに話しながら、お嬢さまの縄を解く」

 

 解けたナワに、キョトンとしながらお嬢さまが腕を軽く回す。

 

「バカー!!」

 

 捨て台詞残して逃げちゃいました。

 

「どうする? 捕獲してくるか?」

「はい、お願いします」

 

「おしっ! 気合い入れるぜ」

 

 シャムロックがお嬢さまを捕獲に行きました。

 

「悪い子いねーが? 泣く子はいねーが?」

「イヤー」

 

 お嬢さまも楽しそうでなによりです。

 

* *  *

 

 二日目です。

 

「今日もよろしくね。おや、今日の神聖装具は鎖なんだ」

「おはようございますアル王子。昨日の対策にお嬢さまが懐中にナイフを隠してましたので今日は鎖です」

 

「重いですわ」

 

 あきらめ顔のお嬢さまです。

 

「でも、お嬢さま朗報ですよ。昨日でデータが溜まったので開かなくても、ある程度の鑑定が可能になりました」

「何が可能になりましたの?」

 

「デバフ系、物理攻撃系、バフ系、改造系あたりまで判別可能です」

 

 なんか、グリモワールから出る波動パターンをシックスセンスセンサーでなんやかんやとプラムが自慢してたけど仕組みはよくわかりません。

 

「それなら、物理系のグリモワールは腕試しに俺がやってやるぜ」

「面白そうだね。僕も参加しようかな」

 

アル王子、昨日から暇そうだったしね。

「危険ですよ殿下」

「そっちの騎士様はビビったのかい」

「田舎男爵風情が調子に乗るなよ! 王国騎士の力見せてやるわ」

 

「じゃあ、そういことで、勝負といこうか」

 

「男の子は、そういうの好きですね。まあ、手間が減るからいいですけどね。じゃあ分類分けしますね」

 

(プラム、お願いね)

《作業開始します》

 

 プラム制御でルナリアが、作業を始めた。本を手に取って背表紙をチラ見でひょいひょいと分けていきます。

 

「すごい早いですね!」

 リリィ様の驚きの声。

 

「まるで、ひよこの選別ですわね」

 お嬢さまがもっともな感想です。わたしもそう思います。

 

「はい、終了です。こちらの山が物理系です。よろしくです」

 

「うおっしゃ! やるぜー! こいやオラー!」

 

 暑苦しいプロレスラーはほっといて……

 

「さあ、お嬢さままずは軽く、バフ系からいきますね」

「モキュー!」

 

 

「火力球かしゃらくさい!」

「こっちは、氷結系だね」

「雷撃か、クッ!」

「ヒールいきます!」

 

 なんか、物理系は、パーティー戦闘みたいで楽しそうですね。

 

「さあ.次はこちらですよ。お嬢さま、何が出るかな? 何がでるかな?」

「ルナリア、怖いですわ!」

「それ、パカっとね」

 本を開く。

「モキュー!」

 

 こっちも、楽しいですね。お嬢さま。

 

 さて、順調に鑑定は進み、物理系は終了。残り二冊になりました。

 

「はぁはぁ、ルナリア、どうなってるのかしらそれらしいグリモワールが見つかりませんわね」

「確かに出ませんね。でもまだ二冊ありますから、あきらめてはいけません! 次いきますね」

 

「モキュー!」

 

「効能は、継続治療魔法のキャンセル……」

 

「お嬢さま、これですよ!」

「それですわね」

 

 ふたりで、顔を見合わせてから抱擁です。

「よく頑張りましたね、お嬢さま!」

「辛かった、辛かったのよ。ルナリア!」

 感極まってお嬢さまが泣いてらっしゃる。珍しい。

 

「あっでも、もう一冊ありますので、よろしくです」

 

 グリモワールをパカっとね。

 

「モキュー!!」

 

「えーと、戦闘力が跳ね上がるが、末代までネーミングセンスが壊滅する魔法。補足、被験者適応済み」

 

 お嬢さま、アーネスト家の強さの秘密の一端が、ここにありましたよ。

 

 無事、シャムロックの『大老の義』の試練、ミッションコンプリートです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。