お嬢さまが、ちびっ子可愛い悪役令嬢   作:デチャウ

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第六話 その一 冬休み前の注目ランチ

 「レディ セシリアの優勝おめでとう。透香も大活躍だったね」

 

「アル王子さま、ありがとうございます。でも、お嬢さまは、すっかり悪役(ヒール)ですけどね」

 

「痛っ!」

 

 ギフトお披露目会も期末考査も終わってあとは、冬休みを待つまったりとしたランチタイムです。

 

もう、当たり前のようにアル王子とスリフト様が来て座るので、わたしの周りには誰も座ってくれなくなってます。

 

「本当にね。でも、人は悪者を事実よりも好みで選びがちだからね」

「じゃあ、王様もお嬢さまが嫌い?」

 

「アーネストの! 王の批判か!」

 

アル王子が、グルル言ってるスリフト様を軽く制止する。スリフト様が、渋々と口と怒気を閉じた。

 

「多分ね。あの人は、自分の地位を脅かす者はすべて嫌いだよ。例えそれが北方の守護者だろうが、肉親だろうがね。愚王ここに極まれりってやつさ」

 

ザワ!

 

「殿下、さすがに愚王はまずいですよ」

 

 スリフト様が王子に小声で告げる、

 

「僕は、かまわないよ」

「いや、そうじゃなくて……」

 

 アル王子わざと話し通じないふりするし。

 

「そうなんですね。それでクエルク様が、王の許しが出なくて進軍できないと言ってましたよ」

 

 アル王子の皿からトマトを一切れフォークで刺してモグモグ。

 

「アーネストは王国領を通らなきゃ西の公爵領には進軍できないからね。進軍を止めたい王国が許可するわけないさ」

「王国は、西の公爵を擁護してるのですか?」

 

 質問しながら、王子の皿のひよこ豆をヒョイパク。

 

「西の公爵を伯爵位に降格、賠償金の支払いで溜飲を下げろという王国からの提案はアーネストに即、拒否されたのは知ってるよね」

 

 わたしが頷いて肯定してる隙に、アル王子がわたしの皿からお肉をつまんでく。

 

「王国は西の公爵なんてどうでもいいんだよ。アーネストがこれ以上力をつけることを良しとしないというのが正解だよ」

 

 アル王子が、わたしの後ろにいるお嬢さまへと目線を映す。

 

「王は、アーネストの増長を危険視してるんだよ。危険視、いや敵視してるが的確かな」

 

「殿下! それ以上の発言は殿下といえども王国批判で……」

 

 テーブルを叩いて立ち上がって激昂した、スリフト様が言葉を止めた。というより後ろから口に手を当てられて止められた。

 

「な、なんのつもりだ、シャルロッテ! まさか、東の公爵家がアーネストに肩入れでもするつもりか!」

 

「スリフト、今回の王国の対応には、我が公爵家も思うところが多々あるのよ。わたし個人の意見なら可愛い以外勝たん! セシリアさまに肩入れどころか舌も入れたい!」

 

 そう言い切った、変態さんは百合とロリを拗らせ、自ら幼女の守護者を名乗る、幼女の敵こと東の公爵令嬢『シャルロッテ』様です。

 

 ちな、スリフト様とは遠縁ともおっしゃってました。

 

 お嬢さまの派閥で日々熱い眼差しでお嬢さまを愛でる変態さんです。

 

 でも、神速と呼ばれるほどスピード特化の強くて美しい変態令嬢です。

 

 アル王子はおもしろそうに、ふたりの様子を眺めてからこちらに向き直る。

 

「さて、東の公爵家がアーネスト側に(くみ)したとなると、王国はほぼ二分された勢力図になったわけだね」

 

アル王子が、グラスに手を伸ばす。わたしはそれを、受け取りデカンタから血のように赤いワインを注いで王子へと戻す。

 

「従来の貴族社会を維持したい愚王率いる王国派がどう対処して、武力崇拝のアーネスト派がどう攻めるのか、面白くなってきたね」

 

 微笑を浮かべ赤いワインに口をつける。

 

 アル王子……血の盃を楽しむ腹黒魔王様に見えるのはわたしだけですかね。 

 

そして、わたしの皿から、エビを取ってパクリって……

 

「で、透香と僕はやはり敵同士なのかな?」

 

 ニッコリ微笑んで、囁くように聞かれる。

 

「今、わたしの楽しみに残しておいたエビを食べたので、明確に敵です!」

 

「すまない、ずっと食べないから、嫌いなのかと思ってたよ。で、敵の謝罪は受け入れてもらえるのよね?」

 

「んー、じゃあデザートの半分で謝罪を受け入れますよ。わたしは、寛大です」

「喜んで献上しよう」

 

お互い顔を見合わせてニコリ。交渉無事成立です。

 

「バカップルだ」

「絵に描いたバカップルですわ」

「スリフト、さすがにワンコでも食べれないねこれ」

「うるさいぞ! シャルロッテ」

 

 

 なぜ、こんなにまわりからチャチャが入るかといいますと、わたしと王子のランチを皆が囲んで見てるからです。

 

 消えたい。

 

 まあ、お嬢さまの試合における西の公爵の不正は、アーネスト公爵令嬢の暗殺未遂ですからね。

 

 それに令嬢だけじなく公爵自身も加担していた。

 

 それがアーネスト側からリークされると国中大騒ぎです。

 

 アーネストは直ちに西の公爵家に戦線布告です。

 

 で、あとの顛末は先程王子が話したとおり、国を二分するいがみ合いで膠着中なんです。

 

 貴族の方々はどちらに着くべきか頭を悩ませ、庶民もその噂で持ちきりです。

 

 当然に学園内も、社会の縮図とばかりに皆どちらに着くかで喧々諤々(けんけんがくがく)のカオスです。

 

 そこに、ギフトとはいえアーネストの者と王子殿下が仲良くランチしてるのです。

 

 皆、聞き耳どころか囲んで堂々と盗み聞きしてディスカッション中です。

 

 よくこんな中で楽しく……

 

「楽しいわけあるかー!」

 

 後ろを振り返り、特等席でふんぞり返ってるお嬢さまに訴える。

 

「もう、無理ですお嬢さま! 恥ずか死にます! こんな観衆の中で、アル王子とイチャイチャなんて無理です!」

 

「あら、ルナリア。わたくし別にイチャイチャしろだなんて言ってませんわよ」

 

 お嬢さまが、扇子を広げて口元を隠す。

 

「こういう時こそ、敵対勢力とのチャンネルを閉じてはいけない。普段どおり王子殿下と接しなさいと言っただけですわよ」

 

 扇子を口元から外してわざとわたしに笑みを浮かべる。

 

「それとも普段から、イチャイチャラブラブでしたのかしら?」

 

 悪い顔! お嬢さまのイジワルー。

 

「きゃー! やっぱり禁断のラブラブカップルだったのー」

「わ、わたし、応援してます。ルナリアさん!」

 

 まわりの冷やかしに目眩がしてきました。

 

「で、透香、休み中に君に会いに行っても良いかな?」

 

「なっ、何をおっしゃってるのです。アル王子、話聞いてなかったんですか! 今アーネスト家になんかに来たら袋叩きですよ!」

 

「僕のこと心配してくれるのかい優しいな透香は」

 

 もうダメ、この王子バカにしてるの、それともバカなのもう、もう、もう!

 

「あら、いいわよ」

 

悶々としてるわたしの後ろからお嬢さまがニヤニヤと答える。

 

「でも、年末は何かと忙しいから、年が開けてからの方がありがたいかしらね。でも、年が開けたら嫌でも会わなければダメかもですわ」

 

「お嬢さま、またそんな何か含んだような発言をされちゃダメですよ」

 

 お嬢さまがまた何か企んでいそうです。

 

「そうか、残念だね。透香できれば今年は、最後まで君の側に居たかったのにな」

「アル王子、みんなが見てるんですから、恥ずかしいこと言うの禁止です。誤解されます」

 

 少し頬を膨らませていると、アル王子がデザートのチョコケーキを半分にしてフォークに刺してわたしに向ける。

 

「ハイ、約束の謝罪だよ」

 

 チョコケーキですー♡

 

 パクリ、モグモグ

 

 美味し〜♡

 

 しまったー!

 

 あまりに自然に出されて餌付けされてしまった……

 

 まわりから、起こる黄色い声やら怨嗟の念が痛いです。

 

「さて、午後の授業だね。」

 

 アル王子が、何食わぬ顔で席を立つ。スリフト様が後を追って席を立ち。わたしもお見送りにと席を立つ。

 

 そのままアル王子がわたしの横に来たかと思ったら腰に手を当てられて引き寄せられる。

 

 軽く抱きしめられて、王子が耳元で小声で囁く。

 

「愚かな者ほど動きは早いよ、気をつけて」

 

 アル王子は離れざまに、わたしの頬を軽く撫でてそのまま手を上げて振りながら食堂を出ていきました。

 後を、追いかけるスリフト様

 

「ルナリア、ラブラブですわね」

 

 周りの黄色い声もうるさい中、ニヤニヤしてお嬢さまが突っ込んでくる。

 

「そんなんじゃ、ないんです。アル王子とは別にな、なんでもないんですー!」

 

 恥ずかしマックスで、思わずその場から、逃走してしまった。顔真っ赤です。レッドルナリアちゃんです!

 

 まあ、午後の授業で普通にお嬢さまの横に座ってるんですけどね。

 

 あっ、そういえば!

 

「ねえ、ねえお嬢さま」

 

 小声で、隣のお嬢さまの制服の端を引っ張る。

 

「なんですの、授業中ですわよ」

 

 ついっとこちらに目線を移して嗜められる

 

「あの、先程アル王子が最後「愚かな者ほど動きは早いよ、気をつけて」って言ってました」

 

「そんな大事なこと、早くいいなさい!」

 

「お嬢さま、大声出しちゃダメですよ。授業中ですよ」

 

「オホホ、大事なところですわね。ごめん遊ばせ、さあ、ティチャー授業をお続けになって……」

 

 お嬢さまが赤い顔でこっちを睨むし。

 

「それにしても、わたくしも急がなきゃですわね……あの王子、リークなんてしてどういうつもりかしら」

 

 お嬢さまが、横でぶつぶつ呟くのを聞きながら午後の授業を終えました。

 

 授業を終えると、足早に生徒会室でクエルク様と何やら密談。

 

 次にシャムロックを捕まえると。

 

「ゴートマン、来週休みに入ったらすぐわたしと一緒にお母様に会いに行くわよ。その後あなたのお父さまにご挨拶に行くわ!」

 

「お嬢さま、電撃婚約ですか!」

「違うわよ! バカ!」

「違うのか?」

 

 でも、婚約じゃなきゃなんなんです??

 

 理解は追いつかないけども、冬休みもゆっくりは出来なさそうなのは理解しました。

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