「糊をヌリヌリで背表紙を……ピタッとね。できたー!」
何をしてるかと言いますと、お嬢さまに頼まれた魔導書を作り終えたところです。ふー、疲れた。
魔導書の中身は、プラムが10分もかからずに作っちゃったんだけどね。
《この程度の人心操作用のナノマシンプログラム造作もないです》
割と自慢気だったよね。
それを魔導書ぽく装丁する方が大変でした。
「あっもう餌の時間だわ。遅れたらお嬢さまに怒られますー。急がなきゃですね」
教会の食堂に頼んでおいたお食事を取りに向かう。
通路には、そこかしこにうずくまったり気絶してるシスターが転がってます。世紀末ですね。
食堂に着くと、当然、シスターの皆様がお食事をなされてるわけですが、みなさま顔が腫れてたり動きがぎこちなかったりと、どこかしら負傷されてますね。
「あんのクソ山羊が、ぶっ殺してやる!」
「メェェ、メェェバカにしやがって!」
「もう、十二神将の半分まで削られてるらしいわよ」
「昨日の倍のペースじゃね」
ふーん。シャムロックも頑張ってるみたいですね。
昨日、お嬢さまがマリー様に修行に連れていかれてから、教会の居住棟は修羅の国でございます。
シャムロックは出会った端からシスターをぶっ飛ばしまくって、シスター達も山羊狩りに夢中です。
これがまた、鬼畜仕様のバトルシステムなのよね。
大聖堂に治療を求めて集まる信者の為なんだけど、午前と午後の二回、お嬢さまという魔力バッテリーを得た絶好調のマリー様が「ゴージャス グランド エリア ヒール!!」を絶唱するのでシスター達は全員全快。
もちろん、シャムロックも全快になるけど、「振り出し戻る」の無限双六状態です。
みなさま、楽しそうでなによりです。
「お食事もらいにきましたー!」
「そこに出来てるよ。今日はマリー様の好物の冷やし素麺だからね。あと、お酒も忘れないでね。忘れたらどやされるよ」
「ハーイ、ありがとうございます!」
お食事の入ったバスケット? いやザルですね。
それと、お酒とこちらは日本酒ぽいですね。マリー様は和風な方なのですね。
タオルも忘れずにっと。
いざ、お嬢さまのもとに出発です。
「るんるんるん♪」
お嬢さまは教会の裏から抜けた先の怪しげな洞窟で、マリー様と修行中なのです。
「七大聖、周り込めその山羊は予知持ちだ、波状攻撃で押さえこめ!」
「メェェ! おっらよっと!」
「ヒィィィィィ、人面山羊!」
「ビビるな、四天王だろう!」
あっ! シャムロックってば、こんなとこで戦ってたのですね。
「おーい、シャムロックさま。お嬢さまのとこに行くけど何か伝言ありますかー?」
「あっ! メイドさん。のぼせんなよって言っといて!」
「かしこまりです。優しいですね。でもー、自分の心配した方がいいですよー」
「了解だ! メイドさん!」
「うぉ! 話し中だろ! 空気読めや! シスター共!」
元気そうでなによりです。
さて、洞窟到着っと!
相変わらず、暑いですね。
さてとまずは、脱衣所でガウンに着替えてね。
ガラガラガラ!
「マリー様! お嬢さま! お食事をお持ちしましたよー」
「地下湖の方に持って行って! すぐ行くから」
「マリー様、わかりました!」
いきなり地下湖か……まだ温まってないから寒いですね。風邪ひきそう。
「相変わらず軽いわね、ちゃんと食べてるの? そーれっと!!」
「お母さま、投げないでー! イヤですわー!!」
ザッパーン!!
「ブッハッアー! 何するのです、おかあさま!」
「そのまま、つかって身体の血が冷え血管が収縮する感覚を感じなさい」
マリー様が奥から姿を現しました。
「今日は素麺とのことです。あとこちらも」
そう言ってザルからお酒とお猪口を取り出して振ってみせます。
「おっいいわね! いただきましょう」
「はい、どうぞ!」
お猪口をわたして、お酒を注ぎます。
「そういえば、このお酒ってなんていうんですか」
「SAKEよ。今、自分でお酒って言ってるのに、なーに、なんか気になるのかしら?」
「
「ないわね、でもこの酒やたたみを作ったわたしの祖先が住んでた東の果ての果ての地域はかってヤーパンと呼ばれてたらしいわよ。少し似てるとは思わない」
ヤーパンってドイツとかオランダ読みの言い方じゃなかったかしら?
「まっ、いいからいっぱい付き合いなさい。ギフトに年齢なんてないんだし、いいでしょう」
「では、お言葉に甘えて一杯だけ」
「うーん、美味しい」
「マスターが死ぬ思いしてるのに、よく飲んでなんていられますわね。この駄メイド!」
びしょ濡れお嬢さまが、後ろに恨めしそうに立ってました。唇、青いですよ。
「お嬢さま、お食事ですよ。冷たい素麺です」
タオルでお嬢さまの水気を拭き拭きです。
「冷え切ってるのに。まあ、わたくしコレ好きですけどね。喉越しがいいのよね」
お嬢さまが、器用にお箸を使ってチュルンと食べています。
「お嬢さま、修行の方は進んでますか?」
「うーん、よくわからないわね」
お嬢さまが、素麺を啜りながら答える。
「はしたないから食べながら話さない」
マリー様が、お酒を煽ってから嗜める。
「まだ、足りないみたいね。いいこと、この洞窟に噴き上がる大地のマナをたっぷりと含んだ熱い蒸気に身を晒し、大地のマナと熱を体内に蓄える」
一息ついてお猪口に口をつけます。
「その後に遥か高みに降り積もる氷雪より染み出したるこの地底湖の凍てつくような神秘の水にて身を清める」
マリー様が、お猪口をくいっとあおって、空になったお猪口をこちらに差し出す。
「はい、どうぞ」
お酒を注いであげます。
「かくして、体内のイドを循環させ陰と陽、静と動、そして生と死の
並々と注がれました。
マリー様がわざわざわたしが口をつけるの確認してから、話を続けだす。
飲ませ好きなおばちゃんかな?
「痛っ!」指弾飛ばされた。
「無を知り有を知れば体内の血の巡りでさえ、その
マリー様が、グイッとね。
「プッハー、効くー!」
「
「ねっ! セシリアちゃん、わかった。心を無にして、体の声に耳を澄ますのよ」
お嬢さまが、すごく胡散臭そうなウンザリ顔してます。
サウナの道は奥が深いですね。がんばれお嬢さま!
「プッ!」
笑っちゃダメよルナリア、我慢よ!
「さあ、修行再開よ! おかあさんの熱波千仰拳を披露してあげるわよ!」
奥の蒸気噴き上げる洞窟でマリー様がタオルを華麗に振り仰ぎ、お嬢さまに熱波を送ってる。見事なプロの熱波師でございます。
「お母さま、熱い、熱いですわー!!」
さてと、わたしも奥の灼熱地獄じゃなくて程よいあたりで、天然サウナでリラックスです。
「ああー! 気持ちいいー」
で、お猪口をクイッとね。
「極楽です〜♡」
《ピンポンパンポン 》
頭の中で迷子呼び出しみたいなチャイムが、鳴り響いた。
(プラム、今のチャイム何?)
『ハクタクくんのレベルが上がったよー。レベルアップだね』
VR空間で、ネコ耳ルナリアがクラッカー鳴らして教えてくれた。
(シャムロックのギフトの白沢がレベルアップ?)
《透香、『
ダメよww、プラム。透香さんは酔ってますって……
《 Shut up, you drunk!》
プラムにガッツリ怒られながら『