「そういえば……そのコードネーム。後世の誰かが流用したとか、そんな記録は残っていないのか……?」
コナンの問いに、光彦は知識の海をさらさらと手繰るように答えた。
「ええ。今から100年ほど前……つまり寛知(かんち)の少し前ですが、『烏丸グループ』という巨大財閥が、彼の遺したプロジェクト名やコードネームをそのまま流用したという記録があります。朝陽さんの設計した『システム』を、彼らが自分たちの組織運営に組み込んだんでしょうね」
「……っ、そういうことなのね……」
灰原が小さく震える。組織の象徴だと思っていた名前さえも、数千年前の「既製品」を烏丸が拾い上げたものに過ぎなかった。
「他にも、個人的なことで分かることはあるのか?」
「そうですね……。コナン君と同じでサッカーが大好きで、非常に得意だったそうです。ポジションはLFW(レフトフォワード)。ですが、野球の外野手、レフトとしても超一流だったようで……」
「ま……まさかの野球と蹴球(サッカー)の二刀流なのかよ……!?」
コナンの顔に、驚きと同時に奇妙な親近感が浮かぶ。身体能力と戦術眼の高ささえも、血に刻まれた遺伝子なのか。
「実はね、黒羽さんの子供たちはみんな、吸い込まれるようなグレーブルーの瞳や、綺麗なプラチナブロンドの髪をしていたんだって……。私たちの先祖のいくつかは、その系統らしいよ」
歩美がコナンの顔をじっと見つめる。
「あ……そうだな。言われてみれば、このクラスもみんな眼が青みがかってたり、髪が明るかったりするもんな……」
五千六百年の歳月は、朝陽という一人の男の特質を、この寛知平成の世に広く、深く、薄く、撒き散らしていたのだ。
そんな喧騒の陰で、灰原がコナンの耳元で、消え入りそうな小声で囁いた。
「……それにしても、江戸川君。夢の中で彼が言った『黒の組織を消す』っていう言葉……一体、どういう意味かしら? 数千年前の死者が、どうやって現代の闇を消し去るというの……?」
コナンは答えられなかった。
だが、夢の中の朝陽の瞳には、揺るぎない確信があった。
「(消す、か……。もし、あいつがこの世界の『ルール』そのものを作った張本人なんだとしたら……あいつにとっては、ただの『初期化(リセット)』に過ぎないのかもしれないな……)」
一時間目のベルが鳴り響く。
だが、コナンの心はすでに、教科書には載っていない「五千六百年前の広島」へと飛んでいた。
始祖・黒羽朝陽。
彼が「招いた種」とは、そして彼が「消そう」としている組織の正体とは。
寛知平成の探偵、江戸川コナンの本当の戦いは、ここから始まろうとしていた。
「あら……みんな、何をそんなに真剣に話していたの……?」
不意に背後から声をかけたのは、担任の小林先生だった。その横には、副担任の若狭留美も静かに佇んでいる。いつも通りの光景のはずだった。
「コ……コナン君と哀ちゃんが、黒羽朝陽さんのことを聞きたいって言うから……知っていることの、ほんの一部だけ……教えたの」
歩美が縮こまりながら答えた瞬間、教室の空気が、まるで真空になったかのように重く沈んだ。
「――っ!?」
小林先生の顔から、さぁっと血の気が引いていく。手に持っていた出席簿が、ガタガタと音を立てて震えていた。
そして何より、コナンが驚愕したのは、隣に立つ若狭留美の反応だった。
普段、黒の組織に関わる気配を感じれば、剥き出しの殺意と復讐心を瞳に宿すあの女が、今はただ、幽霊でも見たかのように青ざめ、膝を震わせていたのだ。あの狡猾で強靭な精神を持つ若狭留美が、戦う意思すら見せず、ただ圧倒的な「恐怖」に呑み込まれている。
「……その名前を、安易に口にしてはいけません。……いいわね、二人とも」
若狭の声は、かすれて消え入りそうだった。あの復讐鬼が、これほどまでに弱気な姿を見せるなど、コナンには信じがたかった。
(……黒の組織を相手にしても一歩も引かないあの若狭先生が、名前を聞いただけでここまで怯えるのかよ!? 一体どれだけ忌み嫌われて……いや、恐れられてるんだ、あの男は……!)
「(……でも、唯一分かったのは、大人でも震え上がるくらい、この世界の根源として畏怖されている人物だってことね……)」
灰原がコナンの隣で、冷たくなった自分の手を摩りながら小声で囁いた。
「(ああ……そうだな。五千六百年経っても消えない恐怖……それが『黒羽朝陽』という存在の正体か……)」
コナンは、教室の片隅で震える教師たちと、神話の怪物について語るかのように怯える子供たちを交互に見た。
窓の外では、広島から続く空がどこまでも青く広がっている。
だが、その平穏な空の向こう側に、自分たちと同じ「真実はいつもひとつ」という言葉を吐き、国家を震撼させた始祖の影が、巨大な嵐となって迫っているのを、コナンは確かに感じていた。
「(朝陽さん……あんたが消そうとしているのは、組織だけじゃない……この世界そのものなのか?)」
寛知平成の朝、授業開始を告げるチャイムの音は、まるで不吉な弔鐘のようにコナンの耳に響き渡った。
昼間の喧騒が嘘のように静まり返った夜。再び、あの白銀の光がコナンの意識を包み込んだ。目を開けると、そこは果てしなく広がる静かな水面のほとりだった。
霧の向こう側に、黒い服を纏ったあの男が立っている。
「……私のこと、学校であんなに全部喋っちゃったのかい……?」
少し呆れたような、けれどどこか楽しげな苦笑いを浮かべて、黒羽(梶谷)朝陽が問いかける。
コナンは一歩踏み出し、真っ向から彼を見据えた。
「アンタ……本当に、オレの先祖なんだな?」
「……まあ、そうだね。否定しようのない血の繋がりだ」
朝陽は事も無げに答えた。コナンは辺りを見渡す。そこは、生命の気配が一切しない、あまりにも澄み切った境界のような場所だった。
「ここは……どこなんだ?」
「三途の川さ」
「え……!? オレ、死ぬのか……!?」
思わず叫んだコナンに、朝陽は肩をすくめて首を振った。
「死なないよ。だいたい、君が川を渡る前の場所にいるんだから……多分、大丈夫だ」
「多分って……」
コナンが言い返そうとしたその時、背後から聞き慣れた、けれど震える声が響いた。
「え……! 江戸川君……!?」
「灰原……!」
そこには、自分と同じように呆然と立ち尽くす灰原哀の姿があった。彼女もまた、この「血の呼び声」に応じるように、深い眠りの中でここへ辿り着いたのだ。
朝陽は、並んで立つ二人の末裔を静かに見つめた。その瞳には、昼間に聞いた「畏怖される独裁者」の影はなく、ただ教え子を見守るような穏やかな知性が宿っている。
「さて……どこから話そうか」
朝陽が指を鳴らすと、霧の中から椅子と、かつて彼が愛したであろう古い様式のティーセットが現れた。
「5600年前、私が『神護』の時代に蒔いてしまった種の正体……。そして、なぜ現代の組織が私の『名(コードネーム)』を汚しているのか。……探偵と科学者なら、真実を聞く覚悟はできているだろう?」
三途の川のほとりで、時代を隔てた奇妙な「家族会議」が始まろうとしていた。5600年の封印を解く、始祖の独白が幕を開ける。
三途の川の静寂を切り裂くように、コナンの鋭い問いが飛ぶ。
「……アンタが自閉症スペクトラムにADHD、それにサヴァン症候群だってこと……昼間に聞いたぞ。本当なんだな?」
朝陽は否定せず、穏やかに頷いた。
「ああ……あっているね。まあ、その特性がこの数千年の因縁を編み上げてしまったとも言える。……ちょっと待っててくれ。エレーナを呼んでくる」
「え……?」
朝陽が霧の向こうへ消えて数分後。彼が連れてきた人影を見て、二人は息を呑んだ。そこには、灰原が夢にまで見た母・宮野エレーナ、そして姉・明美の姿があった。
「ママ! お姉ちゃん……!」
「志保……。大きくなったわね」
駆け寄ろうとする灰原の肩を、コナンが必死に掴んで止める。
「灰原! 気持ちは分かるが……その対岸に行っちまったら、オレたちは本当に死んじゃうんだ!」
再会の喜びに震える二人を前に、朝陽はエレーナと明美と視線を交わし、重苦しい口調で告げた。
「……エレーナや明美とも話し合ったんだ。この5600年にわたる歪んだ連鎖、そして組織の暴走。こうなったのは、私たち先祖の責任でもある。これ以上、子孫である君たちにその重荷を背負わせるわけにはいかない」
「な……何のことだよ……!?」
コナンが身構える。朝陽の瞳には、かつて広島を焼き尽くしたと言われる「叛逆者」の冷徹さではなく、あまりにも深い、自己犠牲的な慈愛が宿っていた。
「工藤新一、宮野志保。君たちはこれまでの全てを……組織のことも、解毒剤のことも、本来の自分の姿もすべて忘れてくれ。そして、このまま『江戸川コナン』と『灰原哀』として生きていくんだ」
「……っ!?」
「大丈夫だ、後のことは私が何とかする。組織の種を蒔いた私が、責任を持って根こそぎ消し去る。だから、二人には私の『忘却術』を受けてほしい。そうすれば、君たちはただの子供として、平和な寛知平成を謳歌できる……」
その提案は、地獄のような日々を過ごしてきた二人にとって、究極の救済にも聞こえたはずだった。だが――。
「ふざけるなッ!!」
コナンの怒声が三途の川に響き渡る。
「産んでおいて、今さら『諦めろ』だなんて、そんな勝手な話があるかよ! 忘れて楽になるのが幸せだって、誰が決めたんだ!?」
「新一君……これは君たちを守るための、最初で最後の慈悲なんだ」
「慈悲なんていらねえ! オレは探偵だ! 真実から目を逸らして、嘘の自分を演じ続けるなんて死んでも御免だね! あんたが蒔いた種なら、その責任を一緒に取らせろよ! 先祖なんだろ!?」
コナンの瞳には、朝陽と同じ「真実はいつもひとつ」という言葉を宿す者の、決して折れない光が宿っていた。
「ふざけるな……! オレは忘れない。新一としても、コナンとしても、あんたが遺したこの狂った因縁を、オレ自身の足で解き明かしてみせる!」
死の淵で対峙する、5600年前の始祖と、現代の探偵。
朝陽は、反抗的な眼差しを向ける末裔の姿に、かつての自分自身の面影を見出し、静かに微笑んだ。
三途の川のほとりに、低く、重厚な声が響き渡った。
「私は確かに……生前……『The truth is always one.』と述べていた。だが……君たちが今、描かされている物語……本来なら、こんな歪な形になるはずではなかったんだ……」
朝陽は静かに瞳を閉じ、天を仰いだ。その姿は、かつて広島の高陽(こうよう)の地で神楽を愛し、古き神々への祈りを捧げていた始祖そのものだった。
彼の手が空を切ると、周囲の霧が激しく渦巻き、古の言霊が紡ぎ出される。
「掛けまくも畏き 須佐之男大神(スサノオノオオカミ)……」
朝陽の口から漏れるのは、魂を揺さぶる祝詞(のりと)だった。荒ぶる魂を鎮める須佐之男の名を呼び、五千六百年の因縁を解き放つための祈り。
「恐(おそ)れるな……。汝(なじ)の暗(くら)き闇夜(やみよ)を照(て)らし、第一歩(だいいっぽ)を歩(あゆ)ませむ……」
その声が響くたび、白銀の空間に浄化の光が満ち溢れていく。コナンは必死に意識を保とうとするが、抗いようのない安らぎの奔流が、彼の鋭い知性を包み込んでいく。
「執(とら)はれし記憶(きおく)を『忘却(ぼうきゃく)』の彼方(かなた)へと預(あず)け、其(そ)の呪詛(じゅそ)消(け)して、浄化(じょうか)の光(ひかり)に包(つつ)まれ給(たま)へ……」
「やめ……ろ……。オレは……工藤、新一……だ……」
コナンの指先から力が抜け、膝が折れる。隣では、灰原がすでに深い眠りの中へと落ちていた。母と姉の幻影に見守られながら、彼女の表情からは長年彼女を縛り付けていた「恐怖」が消え、ただの少女のような穏やかさが戻っていく。
「満願成就(まんがんじょうじゅ)の悦(よろこ)びの中(なか)に 新(あら)たなる命(いのち)を育(はぐく)み給(たま)へと……恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)す」
最後の一節が唱え終わると同時に、コナンと灰原は力なくその場に倒れ込んだ。
静寂が戻った三途の川のほとりで、朝陽は二人を見下ろし、悲痛な微笑みを浮かべた。
「許せ……。本来なら……私のような業の深い者の子孫として産まれるべきではなかった……」
朝陽はそっとコナンの頭に手を置いた。その手は温かく、五千六百年前の広島で、誰よりも平和を、そして共生を願っていた男の体温を宿していた。
「二人とも……本当によく、苦労をかけたな。これからは、ただの『江戸川コナン』と『灰原哀』として、この寛知平成の世を生きてくれ。残りの因縁は……すべて、私がこの手で葬り去ろう」
朝陽の体から放たれた光が二人を包み込み、現実の世界へと押し戻していく。
工藤新一の記憶、宮野志保の絶望。それらすべてを「忘却」という名の深い海の底へと沈めて。
目覚めた時、二人は自分たちが何者であるかさえ、幸せな夢の中に置いてきているのかもしれない。
始祖・黒羽朝陽は、消えゆく二人の背中に向かって、最後にもう一度だけ静かに頭を下げた。
帝丹小学校の教室に、暖かな午後の日差しが差し込んでいた。机に伏せていたコナンがゆっくりと顔を上げ、焦点を合わせるように瞬きを繰り返す。
「あれ……? 僕は、何をしていたんだっけ……」
隣の席では、同じように目を覚ました灰原が、不思議そうに辺りを見回していた。
「あ……コナン君……!」
「あ、哀ちゃん。……なぜここに? 掃除当番だったっけ?」
「ふふ、こっちのセリフだよ。二人で居残りなんて、珍しいじゃない」
二人の会話には、以前のような緊迫感も、大人びた諦念も一切混じっていない。
そこにあるのは、純粋な小学1年生の好奇心と親愛だけだった。
始祖・黒羽朝陽が須佐之男命の神威を借りて放った「忘却術」は、二人の記憶だけでなく、世界の因縁そのものを断ち切っていた。
江戸川コナン: 彼は今、江戸川アーサーと文代という両親の間に生まれた、純粋な子供として存在している。家は米花町の瀟洒な一軒家であり、そこには「工藤新一」という少年の形跡はどこにもない。
灰原哀: 彼女もまた、灰原裕司とクリスティーネという優しい両親を持つ娘として。組織の科学者でも、逃亡者でもない、ただの少し大人びた少女として日々を送っている。
工藤新一。宮野志保。
かつて存在したはずのその名は、寛知平成の歴史から、そして人々の記憶から完全に消失していた。
驚くべきことに、工藤優作と有希子の記憶の中でさえも、「自分たちの子供は幼くして亡くなった」という悲しい、けれど確定した過去に書き換えられていた。
二人の脳裏からは、漆黒の組織の影も、17歳と18歳という本来の年齢も、APTX4869という呪いの薬の存在すらも、綺麗に拭い去られている。
「ねえ、コナン君。今日、お母さんがハンバーグ作ってくれるって言ってたの。一緒に食べていく?」
「いいの? やったぁ! 哀ちゃんの家のご飯、美味しいもんね」
屈託のない笑顔で手を取り合い、教室を後にする二人。
その背後で、誰もいない教室の窓際に、一瞬だけ黒羽(梶谷)朝陽の幻影が揺れたような気がした。
「これでいい……。君たちは、君たちの時間を生きるんだ」
5600年前の始祖が、自らの血筋に課した「責任」と、最後に手向けた「慈悲」。
神の力を宿した忘却の光は、呪われた運命を浄化し、二人を本当の意味での「子供」へと還した。
校門を出て、夕焼けに染まる道を歩くコナンと灰原。
その足取りは軽く、彼らの未来には、もう二度と「黒」が混じることはない。
真実を追い求めた探偵と科学者は、今、最も美しく幸福な「嘘」の中で、新しい命を歩み始めたのだ。
現世の喧騒が遠のき、暗くも厳かな空気が漂う神域――根の堅洲国。
そこには、荒ぶる神の象徴であり、因縁を断ち切る力を持つ須佐之男命(スサノオノミコト)が、巨岩に腰を下ろしていた。
その傍らで、静かに頭を下げるのは、先ほどまで三途の川のほとりで子孫たちを見送っていた梶谷 朝陽である。
「これでいいのか……? 天之騎処瀬之命(あまのきどころせのみこと)よ……」
須佐之男命が、重々しい声で問いかけた。朝陽に与えられたその神名は、彼がこの数千年の因縁を背負い、神域と通じる存在であることを示している。
「いいでしょう……。貴方様のお力を借りることができて、本当に救われました」
朝陽の表情は、どこか憑き物が落ちたように晴れやかだった。須佐之男命はふんと鼻を鳴らし、遠く現世の「物語」の行く末を眺めるように目を細めた。
「ふむ……それにしても、北栄町や小学館の連中は酷いものだな。物語をこねくり回し、あの子らをあそこまで追い詰めるとは」
「ふふ……あまり言ってあげないでください。彼らも彼らなりに、世界を楽しませようと頑張っているんです。まあ、誰しも齢(よわい)を重ねれば、判断が鈍ることもありますよ」
朝陽の言葉には、数千年の歴史を俯瞰してきた者特有の、諦念を孕んだ優しさがあった。
「まさか……あの一世を風靡した『名探偵コナン』の主人公が、まさかおまえの子孫だとは、読者も天の神々も思ってもいまいな」
「何かの領域に触れ、因縁が限界を超えて干渉したため……三途の川が、お二人には一時的に視えてしまったのだと推測します。だからこそ、今ここで断ち切る必要があった」
朝陽の指先から、一筋の銀色の光がこぼれ落ち、根の国の暗闇を微かに照らした。
「ふむ……厄介なような気もするな。血は争えぬ。あの忘却の封印を、いつかあの子らが自力で破らぬという保証はどこにもないぞ?」
須佐之男命の指摘に、朝陽はただ静かに微笑を返した。
「もしその日が来たなら……その時は、彼らが『自分自身の意志』で、新しい物語を書き換える時でしょう。それまでは……どうか、穏やかな子供時代を過ごさせてやってください」
二人の神威ある存在の会話は、深い闇の底へと溶けていった。
現世では、江戸川コナンと灰原哀という二人の子供が、自分たちの本当の素性を知らぬまま、オレンジ色の夕焼けの中を笑って歩いている。
五千六百年の因縁を埋葬した根の国には、ただ、静かな波音だけが響いていた。