所持デッキが敵役すぎて勘違いが止まらない   作:ライトニングのスーパーAI破壊ウイルス

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遊戯王二次創作のオリジナル世界系好き。
もっと増えて♡


アニメ遊戯王的異世界に行くZE!!

 

俺は昔から遊戯王が好きだった。

初めて遊戯王というコンテンツに触れたのはアニメだったと思う。

初めて見た回は再放送の遊戯王GX。ユベルに憑依されたヘルヨハンvsヘルカイザーの戦いに俺は圧倒された。

次々に現れる大型モンスター、魔法や罠を駆使して進められるデュエル、そしてデュエルに命を賭けるデュエリストたちの輝き。

 

一言で言うと魅了された。

アニメのようなデュエルに憧れて初めて剥いたパックの内容は今でも覚えている。

友人と共にカードを交換し、デッキを強化して理想形に近づけ、時たまに大会に出たりして沢山遊んだことは大切な思い出だ。

進学し、リアルで遊べる友人たちが居なくなっても、デュエルリンクスやMDなどのアプリでオンラインで遊戯王を楽しんだ。

 

だが時が経てばどれ程楽しくても熱は冷めるもの。

新生活の忙しさや、年齢の成長に伴う興味関心の推移などで、比較的触りやすかったMDさえもあまり触れないようになってしまった。

お気に入りのデッキにも数ヶ月触れることすらなく、せっかく集めたカードでさえショップに売ってしまった。

 

だからだろうか?今こんなことになっているのは。

遊戯王を辞めたことへの罰なのだろうか?

 

 

「見知らぬ町、見知らぬ広告、そして若返った体……」

 

頬を抓ってみたが目は覚めない。つまりこの状況から察するに……。

 

「アポトキシン4869を飲まされた……ってこと!?」

 

おそらく某高校生名探偵が飲まされた毒薬………では説明が付かないんだよな。俺、別に高校生探偵じゃないし。

特に今の状況。

俺は今いる街に来た覚えもないし、そもそも………。

 

『最新型スマートデュエルディスク!従来のディスクとは異なりコンパクトな形状で嵩張らず、デュエルの際はエネルギーブレードを展開することが可能!さらにメール、通話、デュエルアンカーなど多機能付き!!』

 

「デュエルディスクが売ってる……だと!?あとデュエルアンカーは付けるな」

 

デカデカと広告に記されているのは最新型らしいデュエルディスク。形状はARC−V式だ。

 

え、何これ?現実でこんなの売ってるところなんか見たこともない。

しかもよく見ると通行人の9割が腕に広告のデュエルディスクと似た機械を取り付けて歩いている。今日はバトルシティで戦場になるのか!?

 

今度は頬を叩く。痛い。夢じゃない。

 

「どうなってんだこれ……」

 

よく見ると街のあちこちの広告がおかしい。

『デュエル塾入塾歓迎!』『デュエルアカデミア合格実績ナンバーワン!』『あなたも秋葉原デュエルスクールでデュエリストレベルを磨きませんか?』『これであなたもデュエルキング!!』

 

右を向いても左を向いてもデュエルデュエルデュエル……。

ビルに取り付けられたテレビで流れているのは野球中継の代わりにプロデュエリストのデュエルで、近場のラーメン屋では店員と客が料金無料を賭けて専用スペースでデュエルしていて、専用コートでは何人もの人々がソリッドビジョンで実体化させたモンスターたちを争わせてデュエルを楽しんでいる。

 

頭がおかしくなりそうだ。

俺は所謂アニメ遊戯王的な世界に迷い込んでしまったのか?どうすれば元の世界に戻れる?この世界で俺は存在しているのか?明日からどうやって生活していけばいい?俺の全財産は財布の中身だけだがこれで生きていけるのか?いやそもそも通貨は前の世界と同じなのか?家族は心配してないか?元の世界で俺はどうなったんだ?

 

無数の答えのない疑問が頭を巡る。

考えすぎて吐きそうだ。

 

「どこか……静かな休める場所へ……」

 

フラフラと宛てもなく歩き出す。

できれば人が居ないところが良い。そこで頭を落ち着かせて色々考えたかった。

いつの間にやら夕暮れ時、彷徨っていると誰も居ない埠頭に辿り着いた。

腰を下ろし、海を眺め、ため息を吐く。

 

「………帰りたい」

 

年甲斐もなく心細さから溢れた一言は誰にも聞かれることもなく波に飲み込まれていく。帰りたくても帰れない。俺には元の世界へ元に戻る術を持たないし想像も付かない。そもそもどうやってこの世界に来たのかすら分からないのだ。元に戻れるわけがない。

俺の両親はどうしているだろうか。心配していないだろうか。思えば彼らには迷惑ばかりかけていた。こんな恩返しもできずに……。

 

「そこのお兄さん、お悩みのようですね」

 

「どなた!?」

 

背後から声をかけて来たのは銀髪の修道女のような姿をした顔の整った女性。

驚いて思考を中断してしまったが、これは逆に助かったかもしれない。

そんな俺の内心を知ってか知らずか、彼女は穏やかな微笑みを湛えたまま、口を開き次の言葉を紡ぐ。

 

「ティエラ教団……と言えば分かりますか?私はティエラ教団の聖女クレア。この私が貴方を悩みから救って差し上げましょう。貴方の持つ精霊のカードと引き換えにね」

 

「いや本当にどなた!?宗教勧誘ならお断りです!」

 

目の前に立つ自称ティエラ教団の聖女クレアさん。ごめん話が急展開すぎる。

だがそれ以前にだな………。

 

「誰かと勘違いしてません?そもそも俺は精霊のカードとやらを持っていませんよ?」

 

「嘘はダメですよ?その腰にあるデッキから感じる強力な精霊の鼓動……。私の目は誤魔化せません」

 

「な、何を言って……俺の腰にデッキなんて……っ!?」

 

思わず腰に手を伸ばす。

伸ばされた手に当たる硬い感触。長方形型のプラスチックケースだ。

俺が買った覚えも、取り付けた覚えもないデッキケース。

勢いのままにその中身を抜き出して確認する。

中身は見覚えがあり、現実で手に取った覚えがないデッキ。

ただ、そのデッキ1つのみが俺の腰に用意されていた。

 

「これは……MDで俺が組んだデッキ……」

 

「そのデッキから強力な精霊の気配が感じます。クリフォトフィールドを発動。それでは精霊回収の儀式を開始します」

 

「MATTE!!」

 

俺の制止の声も振り切ってクレアさんはデッキをディスクにセットし構えを取る。そしてその足元から円形のオーラが展開されて俺と彼女を包み込むように結界が展開される。

先程からの急展開に困惑していると勝手にデッキケースがデュエルディスクに変形する。そしてそのデュエルディスクが腕にくっついて自動的に展開された。何これめっちゃカッコいいギミックじゃん!

 

「私の方が先にカードを引いたので私が先攻です」

 

「せめてコイントスで決めて!?」

 

まさかの満足街方式。とんでもないハリキリガールがやってきたな。

 

「私は『天底の使徒』を発動し、EXデッキからモンスターを1枚墓地へ送り、デッキからその攻撃力以下のモンスターである『教導の聖女エクレシア』を手札に加えます。ただし、私はこのターンEXデッキからモンスターを特殊召喚できなくなりますが……些細な問題です」

 

「そして今手札に加えた『教導の聖女エクレシア』を召喚。その効果でデッキから『教導の騎士フルルドリス』を手札に加えます。さらにカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「……俺のターン。あ、ラッキー」

 

こうなってしまってはデュエルをするしかないのだろう。

しかしまあなんというか……俺のデッキはギャンブル要素が強いパチンコデッキなんだよな。幸いなことに手札は良いから動いてみるか。

ダメでもまあ死ぬことはないやろ!

 

「えーっと……これどう使うのかな?」

 

手札から魔法カードを1枚手に取ってデュエルディスクに適当に装填してみる。あ、エラーでた。ここモンスターカードゾーンか。じゃあここら辺に………あるかな?よし!読み込んだ!

 

「魔法発動『隣の芝刈り』。これにより自分と相手のデッキの差分だけカードを墓地へ送る。何かありませんか?」

 

「………?いえ、特には」

 

うらら持ってるかもと聞いてみたけど大丈夫そうだな。

 

「なら通ります。俺のデッキ54枚と貴方のデッキの33枚の差分。即ち、21枚分のカードがデッキから墓地へ送られる」

 

イヤッッホォォォオオォオウ!!!!!という声と共にデッキからカードが墓地へ吸い込まれる。幸いなことに落ちが良い。芝刈りも通った上に落ちが良いなら今回は『当たり』だ。

 

さて、動く前に考えよう。

まず、芝刈りに使わなかったことから相手の手札にうららはない。そして確定でフルルドリスを持っている。フルルドリスの姉御はEXデッキのモンスターが存在する時場に出てきて効果を無効にしてくる厄介なモンスター。

伏せカードはなんだろうか?『ドラグマ・パニッシュメント』か?それとも他の汎用的なカードか。

 

まあどうであれ動いてみるか。相手が何か使ってから考えれば良いや。

 

「墓地の3枚の『インフェルノイド』モンスターを除外して『インフェルノイド・ネヘモス』を墓地から特殊召喚する」

 

地面から3枚のカードが浮かび上がると、それを飲み込み巨大な機械仕掛けの悪魔が地面を砕き大地に降り立つ。その龍のように威圧感のある姿で翼を動かす悪魔の名は『インフェルノイド・ネヘモス』。

 

「なっ!?墓地から超大型モンスターを!?それに『インフェルノイド』!?そのカードはまさかっ!!」

 

「『ネヘモス』の効果発動。このカード以外のフィールドの全てのモンスターを破壊する」

 

何故か恐れと喜びが入り混じった変な顔で驚くクレアさん。

しかしそんな彼女を無視してネヘモスの効果は処理される。

ネヘモスが雄叫びを上げると、天から世界を滅亡させる神の裁きが如き巨大な火球が落下する。恐怖に怯えるエクレシア。彼女を救えるのは伏せカード次第だが……?

 

「っ!!罠発動!『ドラグマ・パニッシュメント』!EXデッキから『マスター・オブ・OZ』を墓地へ送り、その攻撃力以下のモンスターである『インフェルノイド・ネヘモス』を破壊します!」

 

「『ネヘモス』の効果発動。『ネヘモス』自身をリリースして魔法・罠の発動を無効にして除外する。ま、これをする必要はあんまり意味ないんだけどね」

 

反撃にカードから雷撃が放たれるもネヘモス自身が炎の塊となり、発動された罠カードに突撃して焼き払うことで破壊を回避する。

残念ながら『パニッシュメント』はエクレシアを救えるカードでは無かったことで、エクレシアは絶叫しながら炎に飲まれて消えて行った。

 

これでリリースしなくても、『パニッシュメント』を温存されて破壊されなくても、ネヘモスをどうせ手札の『ダーク・フュージョン』で退かすので変わらない。墓地には『インフェルノイド・リリス』があるのでどのみち除去できる。

『フルルドリス』が出て来たところで『ネヘモス』に1ターンに1度などという甘えはない。墓地リソースがある限り何度でも全破壊をするだけだ。

 

これが『インフェルノイド』。

事故率の高さと引き換えに凄まじい爆発力を有している最強のパチンコデッキ。

一度決まってしまえばその爆発力と破壊力は、9期のカードでありながら現代のカードにもついて行くことができなくもない。

『ティアラメンツ』とかいう脱法パチンコとは色んな意味で一緒にするな。あれは結構安定感あるだろ。

 

「俺のフィールドがガラ空きになったので、インフェルノイドのレベル制限は無くなった。俺は墓地から2枚除外して『インフェルノイド・ヴァエル』。さらに2枚除外して『インフェルノイド・ベルフェゴル』を墓地から特殊召喚」

 

ネヘモスの時と同じく、墓地から2枚ずつの合計4枚のカードを貪り食い、2体の悪魔がフィールドに着地する。片方は臙脂色のボディに緑色の信管を装備し槍を担いだ機械仕掛けの悪魔『インフェルノイド・ヴァエル』。もう一方は黄色の信管に紫色の悪魔『インフェルノイド・ベルフェゴル』。

2匹は並び立ち獰猛に絶叫をあげてクレアさんを威圧する。

 

「このモンスターたち……それにこの力……貴方はやはりっ!!」

 

「ライフ4000は少ないね。バトルフェイズ、『ベルフェゴル』と『ヴァエル』で直接攻撃。攻撃時に効果はあるけど……使わなくていいか」

 

「貴方は……いえ、貴方様は…破壊神様の御使……っ!!!きゃぁぁぁ!!!」

 

『ヴァエル』は槍で彼女を突き刺し、動けなくなったところを『ベルフェゴル』がその鋭い鉤爪で袈裟斬りにして2人して勝利の雄叫びを上げる。ヴァエルは槍を空に突き上げて蛮族流勝利の舞を踊っているほどだ。ベルフェゴルは此方に振り向いて親指を立てて凶悪な笑みを浮かべている。そんな嬉しかったの……?

クレアさんはその衝撃で叫びながら吹き飛ばされて行った。

 

いや美少女なのに闇マリク並みの顔芸して飛んでいったな……。

そうか!俺は普通の遊戯王的に攻撃しちゃったけど、これもしかしてリアルソリッドビジョンってやつだからリアルダメージあるのか!ヤバ……!!

質量を持ったソリッドビジョンって実質闇のゲームじゃん!!急いで介抱しないと!

 

「あ、あの!!大丈夫です!?すみません!加減とか分からなくて……」

 

かなり離れた位置で傷だらけになって倒れているクレアさんの元へ駆け寄り膝をついて脈拍を測る。

こんなにボロボロになるなんて……デュエル怖すぎだろ。

 

「ふ…ふふふっ!ふふふふふふ!!!!嗚呼!!貴方様こそが御使様なのですね!!ようやく見つけました!我らが神の使徒……!!この世界を一掃する破壊の神の御使!」

 

「ヒエッ」

 

狂気的な顔芸を見せながらガシッと腕を掴んでくる。怖い。いくら美人でも闇マリク系の顔芸する女の人は美人じゃないし怖すぎる。もうこの人と関わるのは辞めよう。絶対お薬キメてる人だ………。

 

そろそろと後退りして逃げようとするが腕をガッチリ掴まれて逃げられない。

だが突然彼女の顔芸が解除されると手を離し頭を下げる。

 

「御使様……これまでの数々の非礼、どうかお赦しくださいませ。至らぬ私共を、広い御心で受け入れてはいただけないでしょうか。もしお差し支えなければ、私共の集う聖域へと足をお運びいただきたいのです。貴方様が望まれるのであれば、どのような願いも……たとえそれがどれほどの物であろうと我々が必ずや叶えてみせましょう」

 

クレアさんのその言葉はとてと真摯な物に聞こえた。

見知らぬ世界、自分の常識が通用しない世界、家族の居ない世界で心が弱っている俺は正直怪しすぎるとはいえ、彼女を信じて縋ってみたいと思ってしまった。

ここがアニメ遊戯王に近い世界観だというのも拍車を掛けたかもしれない。せっかくデュエルで勝利したんだから、何か良いことの1つくらい起こるだろうと。

 

「………信じて貰えないかもしれませんが、俺はこの世界と別の世界から来たんだと思います。なので…元の世界に戻りたいんです。俺を元の世界に戻すことはできますか?何か…別の世界へ向かう方法でも構いません。知っている事はありませんか?」

 

その言葉を聞くと、クレアさんは然程驚かずに頷いてみせた。

 

「やはり……貴方様は精霊世界からこの世界に……。申し訳ありません。今の我々の力では貴方様を元の世界へ戻すことは出来ません。しかし、力を持つ精霊のカードを複数枚集め、デュエルの際に発生するデュエルエナジーを集めれば必ずや貴方様の願いは叶うでしょう」

 

「精霊のカード……」

 

精霊のカードか……。遊戯王アニメにおいてはカードの精霊が重要なポジションとなることがある。ユベルに至ってはヒロイン兼ラスボスだ。格が違いすぎる。

なるほど、そういう精霊の力を使えば確かに元の世界に帰れる可能性は高まるだろう。デュエルエナジーや精霊のカード……らしくなってきたな。

 

「……御使様。失礼を承知で申し上げます。どうか我々が精霊のカードを集めるまで私どもの聖域にてお待ち頂けませんか?必ず我々が精霊の力を集め切るとお約束します。元より私の非礼のせめてもの償いとなれば……」

 

「……元より俺はこの世界に居場所はない。危険な気もするけど…よろしくお願いします。俺を貴方たちの聖域へ連れて行ってください」

 

「是非!!!」

 

パァっと顔を輝かせて首をブンブン振り回すクレアさん。

さっき会ったばかりだけどなんか面白いなこの人。

 

「それでは聖域に参りましょう。『異次元トンネル-ミラーゲート-』」

 

デッキからカードを引き抜いてデュエルディスクに読み込ませるとソリッドビジョンではなく本当に空間に穴が開き強制的に俺と彼女を別の場所にワープさせる。

すげぇ……この世界の科学の力ってここまで進んでるんだ。まあリアルソリッドビジョンって元の世界から考えるととんでも技術だしな。そういうこともあるか。

 

こうしてゲートを越えてやってきた場所は神殿のような大理石の床に巨大な長テーブルがある大広間。天井にはシャンデリア、テーブルの上には花瓶に生けられた花が用意されていた。そしてテーブルには数人の男女が着席している。

俺とクレアさんがやってきたことでめっちゃ注目が集まってる。

ヤバい、場違い感が酷い。えげつないくらい気まずいんだけどこれ!!俺、知り合いが1人も居ない空間に行くの無理なタイプなんだよな……。こんなとこ来るって言わなきゃよかった……。今から帰るって許されるのかな……。

 

「クレア、連日の精霊の回収ご苦労だった。だがその男は誰だ?ここは神聖なる神の聖域。神に選ばれし6人以外の立ち入りは禁止されている筈だ。一般信徒はここに立ち入らせるべきではない」

 

テーブルに座っていた屈強な男性が声をかけてくる。すみません、今帰ります。生粋の陰の者である俺にこんな場所は無理なんだ。俺はシャドールに帰らせてもらう。

 

「見つけました」

 

今すぐ出て行こうとする俺を手で制し、クレアさんは言葉を続ける。口元には微笑を浮かべその瞳は爛々と輝きを放っている。

 

「何だと?」

 

「彼こそが我らが神の遣わした『御使』です」

 

ざわ…ざわ…とこの部屋に居る人々が小声で話し始める。なんの事を話しているのか分からないし、第一クレアさんの言う御使というのがなんなのか分からないけど……。どうしよう、うっかりそこら辺の誤解を解かずに着いてきちゃったから今更言い出せない。

これ黙ってたら後で大問題とかになるかな?なりそうだな。

よし、せっかく連れて来てくれたクレアさんには悪いけどここは誠実に対応すべきだ。さよなら俺の衣食住。大人しくホームレスとして食い繋ぐことにするよ。

 

「あの…ごめんなさい。俺たぶんその御使っていうのとは違うと思うんですが……勘違いだと思いますハイ……」

 

「…………いや、そのデッキから感じる凄まじい精霊の力。『インフェルノイド』……か。そのカードたちからは神の力の残滓を感じる。だがこの様子ではまだ未覚醒なのか?いや……力と記憶を失っているのか」

 

「今に至るまで一切合切欠損なくオールクリアに覚えています」

 

「成る程これは重症だな。だがクレア、良くやった。これで我々の目的が一歩近づいたと言っても過言では無い」

 

「ええ、全ては新世界の為に」

 

「……?……!?」

 

当事者であると思われる俺を放置して進む会話。勇気を振り絞って発言したのに無視される主張。訳分からない電波会話が進んでる……。

少年よ…これが絶望だ。

 

「御使様…お部屋は既に用意してあります。此方へ……」

 

「あ、はい」

 

そうして案内された部屋は洋風の豪華な部屋。

ふかふかのベッドに空調の効いた丁度良い室温。部屋の壁には何やら高級そうな絵画や芸術品が飾られている。なんだろう……前世の自分の家の100倍高級だ。

行った事ないけど高級ホテルってこんなのなのかな?

 

え、少し不審だけど元の世界に帰れるかもしれない目処が立った上にここにしばらく住んでていいんですか!?

 

………もう俺が御使様ってことで良いか!!

 

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

 

「さて、想定外の出来事があったが会議を続けよう。『カード狩り』の調子はどうだ?」

 

「問題ないよ〜!アタシちゃんカードいっぱいゲットしちゃったしぃ?」

 

「ハッ調子乗んな!俺より劣ってる分際で」

 

「あ"?」

 

「やるか?今ここで?」

 

ガムを噛みながらテーブルに足を乗せたショッキングピンクの髪色をした少女に、チンピラ風の男が食ってかかる。一種触発の雰囲気が漂う中、フードを目深に被った人物がそれに構わず自身の主張をしようとする。

 

「……うるさい。今はカード狩りの成果より御使様の方が気になる」

 

「彼は本当神の遣いなのか…私も気になりますね」

 

フードの人物に対してスーツ姿の男性も同調。これにより会議の雰囲気もまた『さっきの男って本物なん?』と言った疑念が渦巻くようになる。

 

「クレア、説明しろ。コイツらは精霊の力を見通す力を持っていない」

 

屈強な男性の指示でクレアが立ち上がりテーブルの上にデュエル動画を展開する。

そこには『インフェルノイド』たちがフィールドを蹂躙する姿が映し出されていた。

 

「この『インフェルノイド』モンスターはこの世界に存在しないカードです。文字通り世界に彼しか持ち得ない特別なカードであり、その全てのモンスターが精霊のカードです」

 

「全てが……」

 

「精霊のカードだとぉ!?」

 

想像を絶するカード群に彼らは驚きの声をあげる。

当然だ。

何せ精霊のカードというのは精霊界からこの人間世界にやってきた精霊が取り憑き、それを媒介として持ち主に力を与えているカードのことを指す。

当たり前だが流通数は少なく、特殊な力を用いなければ通常のカードと見分けが付かないので、本来であれば鑑別する術すらないほどの物なのだ。

それが全てのカードであるというのだからその驚きは計り知れない。

 

「それだけでは有りません。私は精霊との契約でカードの力を見抜く事が出来る事はご存じですね?あの召喚された『インフェルノイド』達からは『神』に類する力を感じました。そう……」

 

 

我らが神である『創星神tierra』の力を

 

 

「これで分かっただろう。我らが神からの神託で復活の為の尖兵の存在は示唆されていた。間違いなく彼はこの世界をゼロに戻す為に遣わされた御使に他ならない」

 

「でもさぁ……ただの冴えない陰キャに見えたんですけどー?」

 

ショッキングピンクの少女の野次に対しても聖女は余裕を崩さない。

 

「彼は『元の世界に戻りたい』と私に要求しています。元の世界、すなわち『精霊世界』へ。彼はただの人間に見えますがそれはこの世界で活動する為のアバター。その本質はおそらく扱うデッキと同じく神の尖兵たる『インフェルノイド』に間違いないかと」

 

「成る程…そう言う事でしたか」

 

「………つまりあの情け無い姿は世を偲ぶための仮の姿」

 

「どうであれ、ティエラ教団の幹部たるクレアを1ターンで倒した実力は本物だ。まず間違いないだろう。……諸君、我々の悲願が叶う日は近い。皆それぞれの想いを抱えてここにいる事は知っている。だが、我々の想いは1つ」

 

各々が自身の意見を思うがままに話し続ける中、リーダーと思しき屈強な男が手を挙げて彼らの会話を中断させる。

 

「我らが神たる創星神tierraを復活させ、その力で全てを0にしたこの世界を1から作り直す」

 

「創世の日は近いぞ」

 

こんな白の結社みたいに明らかにカルト系悪の組織な彼らにホイホイ着いて行ってしまった御使(偽)くんの未来はどっちだ!




後書きは解説注釈のページ

・御使くん
不幸にも黒塗りの車に激突されることなく異世界転移してしまった人。
いきなりの展開に絶望していたが、ワンチャン戻れそうな気がしてきたので割と元気になった。
MDではインフェルノイド、白き森アザミナ、クシャトリラシャドールアザミナティアラホルスデモンスミス勇者60枚GSなどで遊んでいたエンジョイ勢。しかし持ち込めたのはインフェルノイドのみ。これでどうやって戦えば良いんだ…,。
しかし多忙ということもあり遊戯王から離れていたらなんか転移してた可哀想な男。
難しことに直面すると思考放棄する癖がある。そのため、めちゃくちゃ怪しい事言ってたのに普通に聞き逃していた。何やってんだお前ェ!

・精霊のカード
この世界とは別の世界にある精霊界に住む精霊が取り憑き力を与えているカードのことを指す。このカードを持っているとナンバーズ的な感じで特殊な力が使えるようになったり精霊に体を乗っ取られたりする。
精霊が見える者は、特にこの精霊の力を制御することに長けており、カードに憑いた精霊と会話したり、その精霊の力を借りることができる。
精霊は基本的に自分のカードを使ってくれる相手を好む。精霊の性質にも依るがその相手の善悪に関わらず力を貸してくれることが多い。

・ティエラ教団
世界をリセットし新しく作り直すことを目的とした教団。普通に敵。
崇めている神は創星神tierraであり、精霊のカードを狩ってデュエリストから集めたデュエルエナジーを捧げることで復活を目論んでいる。
実質的にグールズ的な感じでデュエリストを襲ってカードを奪う悪の組織。
イメージとしては3期当たりからの敵。

・クレアさん
ティエラ教団の聖女にして幹部枠。
後にティエラ教団を離反して3期の敵ボスになる存在。4期は烙印編。
使うデッキはドラグマであり、今はまだ荒い構築だが最終的に儀式に寄せた『儀式凶導』デッキとなる。
『導きの聖女クエム』の精霊が取り憑いている。

・屈強な男
クリフォート使いの敵組織リーダー。おそらくルドガーポジ。
本来ならtierraの復活に伴い力が分け与えられてクリフォートからインフェルノイドに乗り換える筈だったのだが、何故か先に御使くんがインフェルノイドを使ってしまったので永久クリフォート使いに。ここから先のストーリーをクリフォートで頑張ってくれ。

・クリフォトフィールド
リーダーの精霊のカードである『アポクリフォート・カーネル』の力でティエラ教団のメンバーに与えられた結界。この結界内でデュエルすると相手のデュエルエナジーを回収でき、デュエルで敗北した相手から強制的に精霊のカードを奪い取ることができる闇のゲーム発動フィールド。ちなみにダメージも実体化する。

・この世界の敵推移
1期に『侵略者ワーム』『魔轟神』ストーリー
2期に『インヴェルズ』『ヴェルズ』ストーリー
3期に『ティエラ教団』のストーリー
4期に『烙印』ストーリー

みたいな形で想定している。
ちなみに現時点ではティエラ教団はメインの敵ではない。
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