所持デッキが敵役すぎて勘違いが止まらない   作:ライトニングのスーパーAI破壊ウイルス

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カードショップに行くZE!

 

「おお…『デーモンの召喚』が25万円してる…。すげぇ」

 

今、俺はカードショップで陳列されてるカードを鑑賞している。

デーモンの召喚が25万円で売られてるのなんて初めて見たよ。前世だと送料抜きで1円とかだったのに……。でも初版とかならそれくらいしてもおかしくないのかな?

 

「他に売ってるカードは……『仮面魔獣デス・ガーディウス』が40万円。あとEXデッキのカードも軒並み高いね。『ガチガチガンテツ』も同じくらいする…すご。今じゃ型落ちもいいところだけど昔は使われてたんだよねコイツ」

 

やはりカードショップは良いな。カードが陳列されているのを見ているだけでもかなり満足がある。

 

「…………」

 

「あ、ごめんなさい。俺だけ1人で盛り上がっちゃって……」

 

完全に同行者のことを忘れて盛り上がっていた俺は急いで振り向いて謝罪する。

フードを目深に被った彼女は気にするなとばかりに首を振る。そう、実は彼女はクレアさんに連れて来られたあの部屋で会議をしていた人物の1人である。

なぜ俺が彼女と共にカードショップに来ているのかというと、俺がカードショップを覗きに行きたいと要求したからである。だってせっかく遊戯王が浸透している世界に来たのだ。せっかく海に来たんだから海に行こうぜ!ではないが、謂わば本場とも言えるカードショップを覗いてみたいと思うのは普通の心理だと思う。

 

閑話休題。ともかく、俺が出たいと言った時にクレアさんは護衛を付けると言って聞かなかったのだ。曰く、俺を危険に晒す訳には行かないとか、そもそも特別な手段でなければ此処には帰って来れないからだとか、色々と力説していたが、確かに原作遊戯王世界は治安が悪い。まあ現地民のアンタが言うなら……と押されるがままにフードさんを連れて此処まで来たのだ。

 

まあ2人で微妙な雰囲気になりながら手近なカードショップにやって来て今に至るという訳だ。

 

「………それ買うの?」

 

「え?これですか?」

 

そう言って『デーモンの召喚』を指差すとこくんと頷く。

どうやら俺が熱心に眺めていてからこれを買うと思ったらしい。

 

「いやー……デーモン系のデッキを組む予定はないのでちょっと。というより高いんで買う気もなくなりますよ。これが相場なんです?」

 

「……どこもそんな感じ」

 

「へぇ……変な物ですね」

 

「変……?レベルと攻撃力が高いカードの値段が高いのは普通だと思うけど……」

 

「そうですか……。そうなんでしょうね」

 

そうか……この世界ではそういう風に考えるのか。

でもそれは当然なのかもしれない。先程確かめたのだが、この世界では構築済みデッキが販売されていない上にカードパックが弾ごとに分けられていない。要するに、初代から今に至るまでのカードが全て同じパックから排出されるという狂気の販売方法が採用されているのだ。一体誰だよこんなイカれた販売方法を採用したのは。

初期のデュエルリンクスでは『アックスレイダー』が環境カードになっていた時期もあった。元の世界では簡単にカードを集められたが、この世界のようにテーマカードのパーツが集まらないのなら高攻撃力ビートハイランダーになるのは必然なのかもしれない。

 

だが、これには理由があるようだ。

というのも、この世界ではカードを買うのではなく『カードに選ばれる』という意識があるようなのだ。つまり、あの狂気のカードパックは『弾分けされてないクソ確率の闇鍋パック』ではなく、『デュエルモンスターズの歴史の中から自身に適するカードと出会うことのできる運命パック』なのだ。

 

なるほど、こう言い換えると確かにロマンがあるような気もする。

長い歴史の中で自分に最適な相棒となるカードと運命の出会いができますよと言われたら確かにちょっと惹かれる物がある。

構築済みデッキが売られていないのは、この世界の住人に取ってデッキとは自分の魂そのものであり、他人に組んでもらうものではないからということのようだ。自分でカードを集めてデッキを組むことに意味があると。

彼らは元の世界にいた俺たちとは全然違う価値観と常識で動いている。俺たちの常識で測れば食い違うのは当然だ。

 

運命パックにちょっと惹かれたので1パック手に取って購入してみた。

やはりカードパックを開ける瞬間はドキドキする。このガチャ感覚は癖になるしレアカードが来てくれるとすごく嬉しい。引けないと悔しくてもう1パック!と買ってしまう。

 

さて気になる開封結果は……?

 

『アーマード・スターフィッシュ』

『怒りの海王』

『シャインスパーク』

『天よりの宝札』

『ルイーズ』

 

………なぁにこれ?

この世界初パックはどうやら散々な結果になってしまったようだ。まあ闇鍋運命パックならこんなものだよね。

 

「インフェルノイドと相性良さそうなカードが当たれば…と思ってたけどそうも行かないか。この世界特有の『インフェルノイド』とかあれば嬉しかったのに……』

 

「……?貴方の使う『インフェルノイド』カードはこの世界に存在しない……。パックから出ることも店に売られることもない……」

 

「え!?無いの!?」

 

頷くフードさんを横目に首を捻る。なんでインフェルノイドが存在しないんだ?俺はアニメとか漫画とか読んでいたから『三幻神』や『三幻魔』『地縛神』『シグナー龍』『四天の龍』などが売られてないのは納得できる。厳密に言えばサイバース族もなのだがこれは普通にショーウィンドウに並んでいるのを確認した。

 

だが何故『インフェルノイド』……?アニメで使われた特別なカードな筈もないから分からないッピ……。

それ以上に謎なのはなんで『インフェルノイド』が存在しないのにデュエルディスクが読み取ったんだ?

 

そこはいつもの遊戯王か。異世界のカードとかナンバーズとか読み取るし。

 

「まあ良いか。そんな事もあるだろ。フードさんは何かカード買ったりしないんです?今のデッキだけじゃなくて二つ目作ったりとか?」

 

「買わない…。それに魂のデッキを2つ持つ事は難しい…。2つ目のデッキを持つという事は自分自身を2つ作るのと同じ事。体を分割して弱体化するような物。複数のデッキにリソースを割くより、1つのデッキを極めた方が確実に強くなれる……。それに他のデッキを使うと前のデッキに憑いた精霊に嫌われる可能性もある……」

 

「えぇ……そんなリスクが……」

 

なんか……思ってたよりずっと不便なんだなアニメ遊戯王的な世界。いっぱいデッキを組むのが楽しい節もあるのに……。俺なんか飽き性な節もあるから複数デッキが欲しいんだけどなぁ。

 

「まあ金銭的な問題もあるか。流石にこの値段じゃ厳しいよな」

 

『デーモンの召喚』はともかく、EXデッキのカードが軒並み数十万するのでシングル買いしてたら理想のデッキを組むのに何億掛かるか分かった物じゃない。

ましてや俺はクレアさんの教団に善意で助けて貰っている身。彼らのお金を湯水のように使ってカードを買うことなど出来るわけが無い。

じゃあ今度はストレージを確認しようかな?攻撃力やレベルを偏重しているのであれば、手札誘発カードみたいな低レベル低攻撃力の有用カードが落ちてるんじゃないか?まあ『インフェルノイド』では使わないけど、もしかしたら他のデッキを組むことがあるかもしれないから買っておこう。

 

そうしてストレージに手を伸ばしたが何やら店の入り口の方が騒がしい。

なんだろうか?

気になったので向かってみることにする。

 

「どうしました?」

 

「ああ、ストア・ブレーカーだ」

 

ストア・ブレーカー…?なにそれ!?と驚愕する俺の目の前でこのカードショップの店主と思しき人物がやってきた白コートの男性とデュエル始める。

 

「ストア・ブレーカー……依頼などでカードショップを潰すためにデュエルで勝負してレアカードと店の売上金を奪う集団……。初心者・初級者を対象にアンティデュエルを積極的に行ってカードを奪ったりもする……」

 

フードさんがこっそり耳打ちして教えてくれる。

成る程、強盗じゃんそれ。

 

「なんで罷り通るのそれ!?犯罪じゃん」

 

「デュエルで勝利しているから……。アンティルールが適用されて金やカードを奪っても許される………」

 

「………やっぱりただの犯罪だろそれ。意味分かんないや」

 

これが遊戯王的な世界観故の歪みみたいなものか。

デュエル至上主義世界においては理不尽すらもデュエルで罷り通る。

ストア・ブレーカーなどとカッコ良さげに言ってるがやってる事は単なる強盗でしかない。そのやり方がデュエルか、力による強奪かの違いでしかない。凶器となるナイフがカードと入れ替わっただけじゃないか。

 

そんな事を考えていると目の前でモンスターのダイレクトアタックを受けて店主のライフがゼロになる。

この店側の敗北だ。

 

「残念だったな。この店のレアカードと売上金を貰っていくぞ」

 

「やめて!!お爺ちゃんはもう歳だから弱ってるの!此処からは私が相手になるわ!!」

 

「お嬢ちゃん、もうデュエルの決着は着いたんだ。これ以上やるとすると……そのデッキも賭けて貰うことになるぞ?」

 

「……っ!!分かったわ!私のデッキを賭ける!但し、私がデュエルに勝ったら売り上げとレアカードは返して貰うわ!!」

 

「いいねぇ……ノリの良い女は嫌いじゃない」

 

「「デュエル!!」」

 

固唾を飲んで見守る中、デュエルが開始される。

店主の孫娘は頑張ってデュエルするものの、相手の高攻撃力モンスターを並べる戦術に次第に劣勢に追い詰められていく。

 

「この私相手によく粘ったと褒めてやろう。この『ゴブリン』使いの柴田にね」

 

そう騙るストア・ブレーカーのフィールドには、整列して命令待機している騎士のような姿をした『ゴブリンエリート部隊』と、その一歩手前で棍棒を担ぎガラの悪さを強調する『ゴブリン突撃部隊』、そしてその背後に隠れた『ゴブリン暗殺部隊』が並び立っている。

さらに永続罠として『追い剥ぎゴブリン』に、表示形式変更のデメリットを踏み倒す『最終突撃命令』、さらに『百鬼羅刹大危機』の3枚が展開されている。

LPには傷一つない。

 

「『ゴブリン』使いの柴田だと!?」

 

「知ってるのか!?」

 

「き、聞いた事がある……。ストア・ブレーカーの中でも最近頭角を表しているゴブリンモンスターを使う危険な男だと…」

 

「いやゴブリン使いなのに『百鬼羅刹』じゃねえのかよ。いやでもこれはこれで結構面白そうなデッキ……」

 

対する孫娘のフィールドには、『ジェムナイト・クリスタ』が1体のみ。

確かに攻撃力はゴブリン達を上回っているが、そのLPは『成金ゴブリン』で回復したが、ゴブリン達の猛攻と暗殺部隊の直接攻撃によるダメージを受けていて心許ない。

 

「まだよ!まだ勝負は着いてないわ!私のフィールドには攻撃力2450の『ジェムナイト・クリスタ』がいる!これ以上貴方のゴブリンモンスターは私を攻撃できない!」

 

「本気で言ってるとしたら愚かだな!『百鬼羅刹大危機』の効果発動!用済みとなった俺のフィールドの『ゴブリン暗殺部隊』と貴様のフィールドの『ジェムナイト・クリスタ』の2枚をゲームから除外する!」

 

「そんな!『クリスタ』!」

 

「これで貴様のフィールドはガラ空き!やれ!ゴブリンども!!醜悪蹂躙撃!!ニレンダァ!!!」

 

「きゃぁぁぁ!!!」

 

LP2400→100→0

 

「ま、負けた……ごめんなさいお爺ちゃん……」

 

「約束通りデッキは貰っていくぞ。売り上げも、レアカードも、感謝するぜ?」

 

俺はどちらかと言えば事なかれ主義の人間である。

電車の中で暴れてる人を見かけたら普通に距離を取るし、人がヤバい奴に絡まれてるところを見ると関わり合いになりたくないので通報だけしてその場から逃げ出す男だ。

 

だが、これは流石に訳が違う。

絡まれるのは嫌だし、俺を拾ってくれたクレアさんならまだしも俺はこの店の為に動く必要性なんてない……けれどもだ。

 

「待って。君のやってる事は単なる犯罪行為だ。俺とデュエルしよう。勝てばこの世界で1つだけのカードであるこのデッキをくれてあげる。けど負けたら全部返して貰うし、あと警察に行け。もう通報はしておいたから」

 

「…!?本当にやるつもり…?相手は手練れ……厳しいと思う」

 

フードさんが止めてくるが俺の気持ちは既に固まっている。

 

「……俺は普段こういうのは関わり合いにならないタイプだけど流石に目の前でやられたら気分が悪くなってきた。すみませんね、巻き込んでしまって」

 

「次から次へとカモばかり……。良いだろう。私も様々なカードを見てきたがそんなカードを見た覚えはない。高レベルで攻撃力も高いし高値で売れるだろうなぁ」

 

デッキケースを取り出してセットする事でデュエルディスクを展開する。

この戦い、負ける訳には行かない。最初から全力で行こう。

 

「「デュエル!!」」

 

「先攻は私だ!私は永続魔法『次元の裂け目』を発動!」

 

手札5枚→4枚

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

前言撤回。

普通に負けそうです。

 

「ククク!さらに『ゴブリン突撃部隊』を召喚!カードを3枚伏せてターンエンドだ!」

 

ゴブリン突撃部隊 ATK2300

 

手札4枚→0枚

 

ストア・ブレーカー LP4000

手札 0枚

フィールド

ゴブリン突撃部隊 攻撃表示 ATK2300

魔法・罠

伏せカード3枚

次元の裂け目

 

 

やばすぎる。よりによってなんで『次元の裂け目』なんだよ!

インフェルノイドは墓地にカードを貯めてその真価を発揮する。なので墓地に送られるカード除外系は本当に苦手だ。特に芝刈りに『ディメンション・アトラクター』を打たれたら発狂できる。

 

「俺のターン、ドロー」

 

引いたカードは『インフェルノイド・デカトロン』。うーん微妙。

『インフェルノイド・デカトロン』はデッキからインフェルノイドモンスターを墓地へ送りその名前と能力を得る事ができる。しかし、次元の裂け目が発動中の現在では名前と能力は得られずカードは除外されるので無駄にしかならない。

 

『インフェルノイド・リリス』か『インフェルノイド・アスタロス』や『インフェルノイド・ベルゼブル』を引くか、『インフェルノイド・フラッド』まで繋げる事ができれば『次元の裂け目』をどうにか出来るが、今の手札ではどうにもならない。『インフェルノイド・ヴァエル』が入れば戦闘後に除外が出来るがそもそも引けていない。

 

取り敢えず動くか。

 

「手札の『インフェルノイド』モンスターを2体ゲームから除外して、『インフェルノイド・アドラメレク』を特殊召喚する」

 

インフェルノイド・アドラメレク ATK2800

 

手札6枚→3枚

 

手札から浮かび上がったカードを2枚捕食する事で、青い装甲にオレンジ色の信管を取り付けた悪魔が降臨する。ゴブリン突撃部隊を見下ろすように空に浮かんでいる。

 

伏せカードが怖いが、『インフェルノイド・デカトロン』を出しても無駄に除外されるだけで『インフェルノイド』の効果を得る事はできない。追撃要因を出したいが、出せるインフェルノイドが居ない。ならば殴ってみるか。

 

「バトルだ!『インフェルノイド・アドラメレク』で『ゴブリン突撃部隊』へ攻撃!」

 

「くぅ……!」

 

アドラメレクは口を大きく開けてレーザー光線を発射してゴブリン達を1匹1匹撃ち抜いて駆逐し始める。背中を見せて逃げ惑うゴブリン達を狙い撃ち。まさにスナイパー。

 

インフェルノイド・アドラメレク ATK2800

ゴブリン突撃部隊 ATK2300

 

LP4000→3500

 

「アドラメレクが戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けて攻撃ができる。直接攻撃だ」

 

「なんだと!?がはっ!!」

 

アドラメレクの進撃は止まらない。

ゴブリンを駆逐し終えたら次はその使い手。ゴブリンを一掃した光線を直接ストア・ブレーカーに叩き込んだ。

 

LP3500→700

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「待って貰おうか!その前に罠発動!『ゴブリンのやりくり上手』を2枚!そして『非常食』!」

 

どうする?『ゴブリンのやりくり上手』をアドラメレクで除外すれば1枚分のドロー効果を削れるが、そうすると俺の場がガラ空きになる。特にリソースもほぼない以上、フィールドをガラ空きにするのはあまりにもリスキーだ。伏せカードがあるが、これはどっちが正しい?ヤバい。分からない。仮に除外しても4枚ドローし2枚戻される事になる。次のドローで手札3枚になるなら俺のライフを削り切ることも可能じゃないか?

 

「…………何も使わない」

 

「ゴブリンのやりくり上手の効果により、私の墓地の『ゴブリンのやりくり上手』に1枚加えた数値分カードをドローして1枚デッキボトムに戻す。そして『非常食』により、今発動した2枚の『ゴブリンのやりくり上手』が墓地に送られた事で合計6枚ドローして2枚戻す!そして私は2000ポイントライフを回復する!次元の裂け目が効果を作用するのはモンスターのみ!魔法罠は問題なく墓地へ送られる!!」

 

LP700→2700

 

手札4枚

 

「古のコンボを……!」

 

俺 LP4000

手札2

フィールド

インフェルノイド・アドラメレク 攻撃表示 ATK2800

魔法・罠ゾーン

伏せカード1枚

 

「私のターン!」

 

手札4枚→5枚

 

「ククク…ははは!!良いカードを引いた!私は『ゴブリンドバーグ』を召喚!その効果により手札からレベル4の『おねだりゴブリン』を特殊召喚!そして『ゴブリンドバーグ』は守備表示となる」

 

ゴブリンドバーグ DEF 0

 

おねだりゴブリン ATK 1000

 

手札5枚→3枚

 

飛行機を運転するゴブリンが地面に荷物を着地させると、そこから醜く太った物乞いのようなゴブリンが出現する。

 

「さらに永続魔法『百鬼羅刹大集会』を発動!これはゴブリンモンスターの攻撃力を上げる効果があるが今それは必要ない!『大集会』の効果により、私は通常召喚に加えてメインフェイズに『ゴブリン』モンスターを召喚できる!『ゴブリン穴埋め部隊』召喚!このカードの召喚時に罠カードは発動できない!」

 

ゴブリン穴埋め部隊 ATK1500

 

手札3枚→1枚

 

そしてその隣に土木作業員のような姿をしたゴブリンが並び立ち、小馬鹿にするようにものごいゴブリンを鼻で笑った。

 

「私はレベル4のモンスター3体でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ!!醜悪なる悪意により染め上げられし秩序の破壊者!!『ヴァイロン・ディシグマ』!!」

 

ヴァイロン・ディシグマ ATK 2500

 

そんな彼らが光の渦に吸い込まれ、現れたのは神々しさの中に禍々しさも感じるメカメカしい黒と金の天使の姿。一体全体ゴブリンの何を間違えたら機械天使になるのだろうか。

 

「ゴブリンじゃなくて『ヴァイロン・ディシグマ』!?」

 

「あのカードは……」

 

『ヴァイロン・ディシグマ』を見たフードさんが驚いたように呟く。そうだったな、この世界ではEXデッキは高級品だったな!

 

「『ヴァイロン・ディシグマ』の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手の表側攻撃表示の効果モンスターをこのカードに装備する!!ワンダースナッチ!!」

 

「『インフェルノイド・アドラメレク』の効果発動!このカードをリリースして相手の墓地のカードを除外する!エクシーズ素材として墓地へ送られた『ゴブリン穴埋め部隊』を除外!」

 

くそっ!やりくり上手に対応した方が良かったかこれ!やっちゃった!

ディシグマの吸引を間一髪地面に潜る事で回避したアドラメレク。

こんな事になるのであればやりくり上手を戻してドロー量を削っておけば良かった!

 

「まだ終わらんよ!『百鬼羅刹大参上』を発動!デッキからゴブリンモンスターを1枚手札に加え、フィールドのオーバーレイユニットを1つ取り除くことで手札のゴブリンモンスターを特殊召喚する!来い!『ゴブリン切り込み部隊』!」

 

ゴブリン切り込み部隊 ATK 1900→2200

 

さらに追撃として武装したゴブリンたちがディシグマの隣に着地する。

機械天使とゴブリンという奇怪な取り合わせだが、意外と仲良さそうに並び立っている。

 

「バトルだ!『ゴブリン切り込み部隊』で直接攻撃!!『百鬼羅刹大参上』の効果で攻撃力が300アップだ!さらにこいつが攻撃する時、お前は魔法・罠・モンスター効果を発動できない!ゴブリンスラッシュ!!」

 

ゴブリン達は各々剣などの武器を手に取ると蛮族のように奇声を上げながら襲い掛かってくる。俺の体に次々と刃を振るっていく。

 

「ぐわぁっ!」

 

LP4000→1800

 

「『ヴァイロン・ディシグマ』でトドメだ!サンダー・パニッシュメント!!」

 

「極力温存したかったが仕方ない。罠発動!『煉獄の狂宴』!手札の『熾動する煉獄』を墓地へ送り効果発動!レベル合計が8になるようにデッキから3体まで『インフェルノイド』モンスターを特殊召喚する」

 

手札2枚→1枚

 

「デッキから来い!『インフェルノイド・デカトロン』2枚と『インフェルノイド・ベルフェゴル』!『デカトロン』の効果でデッキから『インフェルノイド』モンスターを墓地へ送りその分のレベルをプラスしてその効果と名前を得る!俺は『インフェルノイド・リリス』と『インフェルノイド・ヴァエル』を墓地へ!だが除外されて墓地送りできていないのでデカトロン達はレベルと名前と効果を得られない」

 

インフェルノイド・デカトロン×2 DEF 200

 

インフェルノイド・ベルフェゴル DEF 0

 

ディシグマからの攻撃に合わせるように3体の悪魔が地面に着地する。

いくら凶悪な悪魔とはいえ今は守備体制を取り、敵の攻撃から身を守るしか方法が残されていない。

 

「だが『次元の裂け目』で除外される!壁が増えたならばベルフェゴルに攻撃だ!」

 

ディシグマより放たれた雷撃がベルフェゴルを焼き払う。

隣のデカトロンは怯えたようにプルプルしていた。

 

「守備表示だからダメージはない……」

 

「ふん。命拾いしたようだな。バトルフェイズ終了時に『ゴブリン切り込み部隊』は守備表示になる。俺はこれでターンエンドだ」

 

ストア・ブレーカー

手札0

LP2700

フィールド

ヴァイロン・ディシグマ ATK2500

ゴブリン切り込み部隊 DEF 0

魔法・罠

百鬼羅刹大集会

次元の裂け目

 

「俺のターン……」

 

俺の手札は今『インフェルノイド・デカトロン』のみ。そしてフィールドには2体のデカトロンが残っている。相手の伏せカードも手札もなし。

……めっちゃ危なかったけどこれ多分勝ったな。多分苦戦したのは俺がプレミした事が原因だと思うけど。

 

手札1枚→2枚

 

「まずは『インフェルノイド・デカトロン』を通常召喚。効果でデッキから『インフェルノイド・アスタロス』が墓地へ送られるが、『次元の裂け目』によりゲームから除外する」

 

インフェルノイド・デカトロン ATK 500

 

手札2枚→1枚

 

3体目のデカトロンがデッキよりカードを呼び込もうとするが、努力虚しくも次元の裂け目へと吸い込まれていってしまう。

 

「無駄だよ。どれだけ足掻こうがお前のカードは全部除外されるんだ」

 

「うん。まあ…そうだね。召喚条件は効果モンスター2体以上。俺は3体の『インフェルノイド・デカトロン』を素材としてリンク召喚。リンク3『賜炎の咎姫』」

 

賜炎の咎姫 ATK 2700

 

3体のデカトロンがリンクマーカーとして吸収され、新たなモンスターがフィールドに降り立つ。赤髪に龍のような装備を身につけた姫は冷徹に敵を俯瞰する。

 

「更にここで自分フィールドのモンスターが存在しないか、悪魔族のみの場合に、墓地のこのターン墓地に送られてない『熾動する煉獄』を除外して発動する。除外状態のインフェルノイドモンスターを11体まで墓地へ戻す」

 

最初にアドラメレクを呼び出す為に除外した2枚であるシャイターンとネヘモス。

アドラメレク。

デカトロンで除外したリリス、アスタロス、ヴァエル。

ベルフェゴル。

そして同名1枚の制約によりデカトロン1枚

 

合計8枚のカードが墓地へ戻される。

 

「漸く動けるようになったよ。ノイド使いに除外系のメタは最悪だ。墓地の3枚のインフェルノイドを除外して『インフェルノイド・リリス』を特殊召喚。これで魔法罠カードを全て破壊する」

 

インフェルノイド・リリス ATK 2900

 

墓地8枚→4枚

 

地面から浮かび上がった3枚のカードを喰らい、巨大な蛇のようなモンスターである『インフェルノイド・リリス』が出現する。リリス降臨の余波により、『次元の裂け目』や『百鬼羅刹大参上』が吹き飛ばされている。

 

「なにっ!墓地から高レベル高攻撃力モンスターが召喚されただと!?」

 

「まだだよ。俺はリリスと咎姫を素材にリンク召喚。リンク4『インフェルノイド・フラッド』」

 

インフェルノイド・フラッド ATK 3000

 

リリスと咎姫がリンクマーカーとして吸い込まれ、新たなインフェルノイドを降臨させる。吸い込まれる寸前、咎姫がこっちを見つめていた気がしたが気のせいかな?

 

「そして墓地からカードを3枚除外する事で『インフェルノイド・リリス』を特殊召喚」

 

インフェルノイド墓地5枚→1枚

 

インフェルノイド・リリス ATK 2900

 

再び登場のリリス。散々除外で苦しめてくれた相手を叩きのめせることにやる気をみなぎらせながら威嚇ポーズを取る。

 

インフェルノイドはレベル・ランクの合計が8以下で無ければ特殊召喚できない制約があるが、それさえどうにかすれば複数体並べることができる。だからこそノイド使いはレベルやランクを持たないリンク召喚を重用していて、呼び出し終えたインフェルノイドたちを素材にしていくのだ。

 

「そして『インフェルノイド・フラッド』の効果!墓地からカードが除外されたのでフィールドのカードを1枚除外する。ヴァイロンを除外」

 

そしてインフェルノイドの召喚に呼応して、フィールドのフラッドから地獄の業火が放たれる。いくら機械天使とはいえその力に抗う事ができずに、次元の狭間へと吹き飛ばされていった。

 

「なっ!俺のヴァイロンが!!」

 

「これでそこのゴブリン以外の邪魔者は消えた!バトルフェイズ!リリスで『ゴブリン切り込み部隊』へ攻撃!」

 

インフェルノイド・リリス ATK2900

 

ゴブリン切り込み部隊 DEF0

 

リリスはその長い体を振るってゴブリン達を容赦なく圧殺していく。

当然ゴブリン達では叶うはずもなくあっさりと全滅してしまった。

 

「『インフェルノイド・フラッド』でトドメだ!」

 

白銀のインフェルノイドがその体を起動させると、腕を振り下ろしストア・ブレーカーに勢いよく叩き付けた。

 

「ぐわぁぁ!!!」

 

LP2700→0

 

凄まじい勢いで絶叫しながら回転し倒れて動かなくなった。

幾ら何でもちょっとオーバー過ぎない?まあいいけどさ勝てたから。

 

「勝てた…危なかった…すごく情けなくなるところだった。約束通り返して貰うよ」

 

倒れ込んだストア・ブレーカーから彼が奪ったデッキを奪い返す。

そして店長の孫娘に返却した。

 

「あの…ありがとうございます!本当にありがとうございます!貴方が居なければ私は……」

 

「あー……気にしないで。当然のことをしたまでだから」

 

気恥ずかしくなって軽く手を振って謝罪を中断させる。

俺ってこういうヒーロー気質じゃないから恥ずかしすぎる。慣れないことはするもんじゃないねやっぱり。でもこの子のデッキや売上金を取り返せて良かった。

 

「その…恩人にこんな事を言うのは変に思われるかもしれないんですが…!その『インフェルノイド』というカード…嫌な気配がするので使わない方が…」

 

「え?そんなダメなの?でも俺このデッキ好きだからな……。ごめんね?実害出てないし気のせいだと思うよ。それじゃあこれからも頑張ってね」

 

なんか突然変なことを言い始めたが、これはあれか?精霊が見えるタイプの人なのか?でも俺にとってはインフェルノイドデッキはお気に入りだし、この世界にはこのデッキしかないからなぁ。申し訳ないけど実害でてないしそれまで使わせて貰うことにするよ。

アニメ見て精霊の存在は知ってるけど、いきなりこんな事言われてもね……。

 

「あ、待って!!!……幾ら何でもあれは言い方がダメだったかも。でも本当に……あのカードから危険な気配を感じたのに」

 

フードさんと一緒に店を出ていく俺には彼女の声は聞こえていなかった。

まあいきなりそんな事言われても受け入れられないよ正直。

 

そうして拠点に帰る途中の帰り道。

 

「……すごい」

 

「え?デュエルがですか?」

 

「それもだけど、違う……。そのカードのこと」

 

「うぇ?」

 

帰り道、フードさんの方から珍しく話しかけられる。

先程のデュエルの話がしたいのかと思ったが、そうではないようで彼女は俺のデッキを指差した。何を言ってるのかと思って探ってみると、デッキケースのサイドデッキ枠に1枚のカードが入っていた。

 

『ヴァイロン・ディシグマ』

 

「これはストア・ブレーカーのカード!?やば!紛れ込んでる!!警察に届けた方が……」

 

明らかにストア・ブレーカーが使っていたカードに焦って慌ててしまう。

お巡りさん違います!盗んでません!ディシグマが勝手に!!

しかしその必要はないとフードさんは首を振る。

 

「必要ない。それは正式に貴方が手に入れた精霊のカード…。あの男はこのカードに影響されて暴走していた……。貴方はいち早くそれに気が付いてデュエルを申し込んだ……。すごい」

 

「んん?」

 

「私は精霊の力が作用している事にこのカードをアイツが使うまで気が付かなかった……。使う前からその存在を読み取っていた貴方は精霊使いとしての格が違う……。だから貴方に利益のないデュエルを挑んだんでしょう……?」

 

「いや…偶然…」

 

「謙遜しなくていい……。半信半疑だったけど……貴方の力はよく分かった……。貴方は本当に御使様……」

 

恭しく頭を下げるフードさんにどう反応していいか困る。本当に偶然なのに…。大体俺が精霊を知覚するなんて出来るわけ無いだろ。

しかしなんか変な話になってきたな……。勘弁して欲しい。

とりあえず話が拗れる前に『ヴァイロン・ディシグマ』をフードさんに押し付ける。

 

「これは…どうして…?御使様が直接捧げれば……」

 

「いや、差し上げますよ。なんか…功績とかあるんでしょう?ならこれはフードさんの功績ってことにしませんか?俺は長居する気はありませんし、精霊のカードが貯まって別の世界に行けるようになったらすぐに帰るつもりですから…。尊敬とか要らないです。なのでこれは今回の口止め料みたいなものです」

 

フードさんとかクレアさんみたいに勘違いから熱心に崇められても困る。

功績をフードさんに預けて口止めすれば、まあこれ以上の勘違いが拡散されることはないだろう。

 

「……私が1番成績が悪い事を知っていて?ありがとう……御使様。感謝の印として、私の名前はフードさんじゃなくてウィン。ウィンと呼んでほしい」

 

「……ウィンさん?」

 

名前で呼ばれたフードさんもといウィンさんはこくこく頷くと何処か上機嫌になっていた。そんなにカード譲られたことが嬉しかったのか…。

そんなに喜んでくれるなら悪さしてる精霊のカード捕まえて彼女に譲るのも悪くないな……。

 

そんな風に考えた1日だった。

だが、この時の俺は知らなかった。

この後、ショップでのデュエルが原因で、闇のカードをばら撒く連中のターゲットにされることに……。あとなんか主人公っぽい人とそのヒロインの孫娘ちゃんから闇のカードを扱い邪悪な精霊を狩るハンターと勘違いされる事に……。




御使くん
この世界のカードショップを観光して楽しんでいたが、デュエル至上主義の世界観にドン引きしていた。自分が勘違いされてる事に気が付いてなんとか口止めを頼む。
アトラクターが嫌い。なんか悪い精霊が憑いてるらしい。
パックから引いたカードが酷い。

フードさん
名前はウィン。常にフードを目深に被った緑髪の女性。
ティエラ教団の中では弱い方であり成績が振るわないため軽んじられていた。なので今回口止め料に貰ったディシグマがすごく嬉しかった。
妹属性。

ストア・ブレーカー
依頼などでカードショップを潰すためにデュエルで勝負してレアカードと店の売上金を奪う集団のことを指す。普通に犯罪。しかしこの世界ではアンティデュエルは認められているので、それを盾にして脱法的な強盗行為を繰り返している最悪の集団。

ゴブリン使いの柴田
ストア・ブレーカーの1人。デッキは『ゴブリン』。
百鬼羅刹モンスター以外のゴブリンモンスターを百鬼羅刹カードでサポートするデッキを組んでいる。
2期の敵の手により悪意を植え付けられた精霊が憑いた闇のカードであるヴァイロン・ディシグマを手に入れた事で悪事に手を染めるようになってしまった。

店の孫娘
この世界における『遊戯王主人公』のヒロイン。
使うデッキはジェムナイトではあるが、融合召喚をまだ身に付けておらず、デッキがあまり洗練されてないので実質的にクリスタビートみたいな感じになっている。
精霊を知覚する能力を持っており、御使くんのデッキからストア・ブレーカーの使っていた闇のカードと同じような気配を感じたので忠告した。

この世界におけるカード事情
この世界においてカードは高レベル、高攻撃力モンスターが偏重されている。これらのカードは値段が高くなっている。また、EXデッキからの召喚方法は高等技術とされていて使用者が少ない。使ってくる奴は強いと覚えていてくれたら良い。
カードパックは闇鍋で、優れたデュエリストは自分から集めずともカードの方からデュエリストの元へ集まるという思想がある。実際そういう側面もある。
構築済みデッキが存在しないのは、この世界においてデッキとはデュエリストの魂であり、それを予め作って売り出すというのはこの世界の常識的にあり得ないことになる。
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