憑依転生きよぽん 作:笑っちゃうよね〜たはー
綾小路清隆
初期の堀北さんはとても刺々しい。これはよう実のファンなら誰でも知っていることで、ツンデレと言い表すにはあまりにもツンが多すぎることで知られている。
それだけならまだいいのだが、初期の彼女は口を開けば人を罵倒し、時にはコンパスで綾小路の腕を刺したこともある。まさによう実界のハリネズミだ。
そのせいだろうか、二次創作では彼女がアンチ役になる作品が多かった。
まあ人を常に見下して傲岸不遜な態度を貫いていたからね。気持ちは分かる、現実で同い年にそんな人がいたらウザいだろう。多感な時期である若い子達には特にそう思うはずだ。
だが俺は初期北アンチ風潮に異議を申し立てたい。
確かに彼女はコミュ障という概念を遥かに超越した存在ではあるが、良い所もたくさんある。
学力も身体能力も優秀。三年生になる頃には唯一の欠点であった社会性も改善され、クラスのリーダーとしてみんなから認められるような人物になる程に成長を遂げた。
つまりなにが言いたいのかというと、堀北鈴音という少女はポテンシャルの塊だということだ。
綾小路という最高の手本が傍にいたのも大きいだろうが、それだけではあそこまで実力をつけたことの証明にはならない。間違いなく彼女のポテンシャルが成したものだと俺は思う。
ではここで問いだ。そんな初期北さんに、精神年齢30歳くらいの俺がやってあげるべきことは?
大人として社会の厳しさを説く?それとも退学に追い込む?ノンノン。
正解は……根気強く彼女に話しかけることです!
イヤイヤ、それこそナンセンスだろって?分かってないなあ……そもそも彼女、というかDクラスの面々はまだ若干15歳。本来ならいくらでもやり直しができる年齢なのだ。
高育という特殊な環境がそれをさせてくれなかっただけで。
だから出来るだけこの初期に彼女の棘を取り除いてあげたい。そしてできれば仲良くなりたい。
堀北さん可愛いんだよね、特に水筒がハマった時といったらもう……
ハッ、何を考えているんだ俺は。これではまるで変態ではないか、池や山内と同類になってしまうう。これ以上考えるのはやめよう。
それによく考えてみよう。彼女をボッチにしてしまうと、女子グループから陰湿なイジメを受けてしまうかもしれない。
隣の女子がイジメの標的にされるとか、俺の精神衛生上にもよくないだろ?
やはり堀北さんは俺が
そんな風に決意をして、俺はDクラスの教室に入り席へと向かう。お、原作通り窓際の一番後ろの席だ。ヤッタネ!
さて、話しかけますか!おーい、堀北さーん!
「初めまして、俺の名前は綾小路清隆だ。隣人としてよろしく頼む」
「……」
うん、知ってた……ツーン、とでも聞こえてきそうなツンツンな態度である。
でも反応してくれないのはやっぱり悲しい……(´・ω・)
どうにか名前を聞き出して話をしたいんだけどなぁ……あ、この手があったか。
「ここは国立の
名付けて『グループ活動するだろうから名前聞かせて作戦!』そのまんまだ。
これならいかに孤高を貫いている初期北さんでも反応してくれるはず。
「……堀北鈴音」
ヨシ!作戦大成功!ハッハッハ、我ながら素晴らしい名案であったな。
さて、ここからどうやって話を広げていこうかな……あ、茶柱先生が来た。
「新入生諸君。私はこのDクラスを受け持つことになった茶柱佐枝だ。担当科目は日本史、よろしく頼む。それでは早速本校についての説明を始める。今配布した資料に──」
そう言って我らが茶柱先生は淡々と説明を始めた。
まあこの辺りはみんな知っているだろう。
三年間外部との接触禁止だったり、寮生活の強制だったり。合格通知と一緒に同封されていたパンフレットにも同じことが書かれていた。
「──というわけだ。不明な点はあるか?無ければ次の説明に移る」
茶柱先生はクラスを見渡し、質問がないことを確認してから学生証カードを取り出す。
読者諸君、あとは言わんでもわかるやろ?あのシステムの説明や。
「これから配布するこの学生証カード。これには1ポイント=1円の価値でポイントが振り込まれており、ポイントを使用することで商品の購入や施設・サービスの利用が可能だ。また、敷地内のものであればなんでも購入することが出来る」
「
小さな、しかし堀北さんには届くくらいの声でボソッと呟く。
その言葉に彼女はどうやら違和感を覚えたようで、なんとも言えない微妙な顔をしていた。
「ポイントは毎月一日に振り込まれる。お前たちには10万ポイントが振り込まれている筈だ」
その言葉にクラスがざわついた。無理もない、高校生にとって10万円という金額は大金だ。
皆それぞれ仲良くなった周りの人達と重い思いに何を購入するかを考えている。
その様子を茶柱先生はおかしそうに笑いながら続きを話し始めた。
「意外か?最初に言っておくがこの学校は実力で生徒を測る。つまり今、お前たちには10万円を貰うに値する価値があるというわけだ。若者には無限の可能性が秘められている。それに対する報酬だとでも思えばいい。このポイントは好きに使ってくれて構わない。ただしカツアゲはするなよ?この学校はイジメには敏感だ」
“実力で生徒を測る”という言葉には様々な意味が含まれている。
学力、運動能力は言わずもがな。コミュニケーション能力や、社会の常識やマナーなど様々だ。
そして何より、この学校は言葉の節々に気付く人には気付くであろう小さな違和感を混ぜて説明を行う。感じた違和感を正確に読み解いて、学校の意図を理解することも実力の一つであると考えているからだ。
そしてそれが出来ない人間から、退学という形で徐々に脱落していく。恐ろしいよ本当に。
「何か質問はあるか?……無いようだな。では、良き学生ライフを送ってくれたまえ」
そう言って茶柱先生は颯爽と退出していき、クラスは喧騒に包まれた。
「堀北、毎月10万ポイント貰えるらしいぞ」
本当は貰えないんだけどね、と心の中で考えながら俺は堀北さんに話しかけた。
「……そうね。それに思ったよりも堅苦しい学校ではないみたいだわ」
あ、返してくれた。先ほど自己紹介を互いに出来たのが幸いしたのか、それとも本当にただの気まぐれか。真意は不明だが、ある程度のコミュニケーションを計ろうとはしてくれるみたいだ。
尤も、すぐに文庫本に視線を落として文字の世界に飛び込んでしまわれたのだが。
まあ別にいいさ、時間はたっぷりあるのだから焦らず距離を詰めていけばいい。それに読書を邪魔されるのは不快に思うだろう。俺は気遣いができる男、初期小路君とは格が違うのだ。
「みんな、少しいいかな。これから僕達は同じクラスの仲間として、三年間共に歩むことになると思うんだ。だから自発的に自己紹介を行って、一日でも早く仲良くなれたらと思う。どうかな?」
来ました、Dクラスの良心こと平田君。カッコイイー!こっち向いてー!
そんなアホなことを考えているうちに自己紹介が始まり、次の人へとバトンが渡っていく。
何人か自己紹介をして、須藤の番になると彼は席を立って教室を出て行った。何人かもそれに追随するように出ていき、もちろん堀北さんもその中の一人である。
「──それじゃあ最後に、そこの君。お願いできるかな」
ボーっとしていたらいつの間にか俺の番が来ていたみたいだ。初期小路君はここでコミュ障を発動し、無事に陰キャへとなったわけだが……
「綾小路清隆です。趣味は読書、得意なことは茶道とピアノです。よろしくお願いします」
趣味と少し奇抜な特技を話して最後に一言。無難な自己紹介と言えるだろう。現に俺に向けられている眼差しは同情の類ではない。
「うん、よろしくね綾小路君」
少なくない拍手が起こり、自己紹介の時間が終了する。
皆が思い思いに周りの生徒達と話す様子を、俺は温かい眼差しでぼんやりと見ながら、これからどのように行動するかを考えていた。
堀北さんが入学式の日にあんな態度を取ったのは、初期小路君にも少し非があると思うの。
というかどっちも世間知らずだから会話をどうしたらいいのかわからなかったんだろうね。これだからコミュ障は…(ブーメラン)
ストックという概念が私の中には存在しないので、更新時間はまばらです。
出来るだけ毎日投稿を心がけますが、無理な日もあるかもしれません。ごめんなさい。
最後にですが、日間(透明)二位、ルーキー6位ありがとうございます。
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