憑依転生きよぽん 作:笑っちゃうよね〜たはー
千利休
入学式が終わって解散し、校舎を歩き回って大体1時間後、俺は原作でも出てきたコンビニにやってきていた。もちろん目的は堀北さんとの距離を縮めること。
なんか客観的に見ると、俺の行動は恋する乙女みたいだな……まあ他意は別に無いんだけど。
コンビニに入って店内を回ると、奥の方で化粧品を手に取っている堀北さんを発見した。
俺も適当に商品をカゴに入れつつ、さりげなく近くに移動して話しかける。
「堀北か。奇遇だな」
「あら、偶然ね」
そうそう偶然偶然……まあ実際のところは狙ってたわけだけど。キッショ、ストーカーかよ……
「無料商品……?」
そんなアホなことを考えていると、どうやら堀北さんが気になるものを見つけたようだ。
まあ毎月10万ポイント貰えると、
それに堀北さんは節約家だというのは原作でも言われているし、不自然に映ったんだろう。目の付け所は流石と言うべきかなんというか……(後方腕組み)
「ポイントを使い過ぎた生徒への救済措置かしら?」
片手を顎に当てて、堀北さんは頭を捻っている。可愛い。こうして見れば美少女なんだよなあ……
まあこの学校の女子はみんな可愛いんだけどさ。原作ではブサイクなんて揶揄されていた篠原さんですら普通に可愛いし。
この世界はやっぱりラノベの世界なだけあって、一般的な容姿のレベルが前世より数段上に感じるのはここだけの話だ。
「どうだろうな……そうそう0ポイントになるとは思えないが。
俺達はまだ学生の身分だ。扶養の義務は本来保護者が負うべきものだが、この学校では外部との連絡が取れない。故に学校側が全面負担してくれるのだろう。
堀北さんの言葉に同意しつつ、俺も無料商品を手に取る。浪費はしたくないからね、出来るだけ俺も無料商品を購入するとしよう。どうせなら自炊もするか……
「うるせえな!今探してんだろうが!」
おっと、どうやらいつの間にか須藤が来ていたようだ。はーい、学生証の忘れ物ですね〜。
少々お待ちくださーい。
「学生証が見つからないのか?」
「あ?なんだお前」
あら怖い。だがこの程度の威圧、ホワイトルームを乗り切った俺には効かないぞ。出直してきな!
「学生証が無いなら、俺が立て替えようか?」
「マジか!助かるぜ!あー……」
「綾小路だ。名前を聞いてもいいか?」
俺達はまだ初対面だからね。こっちは勝手に知ってるけど向こうは知らないし自己紹介的なものをしておく。それにしても間近で見ると、鍛えられた良い身体をしているよな……
「須藤だ」
「よろしくな須藤」
須藤が購入したのはカップラーメン。どうやらヤンキーよろしくコンビニの前で食べるようだ。
それを横目で見ながら俺もお会計を済ませる。
ありがとうございましたー、と間伸びした店員の声を聞き流しつつ、俺はコンビニの外に出た。
「おい?お前一年か?ここは俺達がいつも使ってるんだ。どけよ」
「あ?ここは俺が先に使ってたんだ。そっちこそ失せろよ」
するとそこには上級生……確かCかDか?見た目こそ不良っぽいけど実はこの学校の仕組みについて示唆してくれるお助け枠()の先輩か。その人が須藤と一触即発の雰囲気になっていた。
この先輩こんな顔してたんだ……どうもお疲れ様です!
「おい聞いたか?失せろだってよ。随分生意気な一年が入ってきたもんだな」
「それがどうした!一年だからってあんま「落ち着け須藤」ッ……なんだよ綾小路!」
これ以上は流石に良くないと、俺は喧嘩腰な二人の間に身体を挟んで距離を無理やり空けさせる。
それを受けて須藤は渋々下がったのに対し、先輩達はニヤニヤと嘲笑うような笑みをこちらに向けていた。
「おー怖い怖い。お前らDクラスだろ?」
「それがどうかしましたか?」
「やっぱりな、お里が知れるってもんだ。お前らは可哀想な
「あ゛?」
先輩達の“不良品”という発言に須藤はキレ散らかす。ふと視線を感じてコンビニの方に目を向けてみれば、その言葉を堀北さんも聞いていたようで怪訝な顔をしていた。
「まあ仕方ねえからここは譲ってやるよ。じゃあな」
一通り煽って満足したのか、先輩達はそう言い残して去っていった。二度と来るんじゃねえぞ!
「チッ、食う気が失せちまった」
苛立ちを見せながら、須藤も帰っていく。この場には俺と堀北さんの二人が取り残される形になった。うーん……どうしようかねこの空気。あ、堀北さんも帰るの?ほな俺も帰ろっと。
「不良品、ねえ……」
原作の初期須藤は素行の悪さと学力の低さが目立つが、早いうちにそこを改善できれば間違いなく大きな戦力となる。俺は綾小路ではないから人を思うままに動かすことはできないけど、ほんの少しでも彼らを良い方向に変えていけたらな……そう思うのであった。
◆◆
さて、入学二日目。原作通りなら確か午後には部活動説明会が行われるはずだ。
そして今はお昼休み。俺は昨日自分で作ったお弁当を机の上に置いて食べ始める。
「綾小路君……あなた見かけによらず自炊するのね」
すると堀北さんが意外なものを見る目で話しかけてきた。失礼だな、俺の前世は金欠大学生だぞ。
「料理は得意なんだ。それに使い過ぎも良くないしな、殊勝な心がけだろ?」
自炊は慣れたものである。それに何もしなければこのクラスは来月0ポイントだからな。
出来るだけポイントは手元には置いておきたいと思うのは自然なことだ。まあそんなことを言っても混乱させるだけだと思うけど。
『本日午後五時より第一体育館にて、部活動の説明会を致します。部活動に興味のある生徒は十分前には第一体育館に集合して下さい。繰り返します。本日午後五時より──』
女性の──おそらく橘先輩だと思われる可愛らしい声が耳に入ってくる。
部活動っていいよね。汗水垂らして仲間達と共に頑張る姿はまさに青春の1ページだ。
まあ俺は帰宅部だったんだけどね。たはー!
「堀北は部活に入るのか?」
答えはもう知っているけど、なんとなく話題を振ってみる。すると堀北さんはほんの少しだけ考えてから返答してくれた。
「……入らないわ。そういうあなたは?」
「俺は──部に入ろうと思って……なんだその鳩が豆鉄砲を食ったような顔は。そんなに意外か?」
びっくりしてる顔も可愛いね……ってそうじゃなくて、そんなに意外だろうか。
俺ほどこの部活が似合う生徒も中々いないと思うが……
「ええ、あなたがそれをまともに出来るようには思えないわ」
んー……手厳しい。まあ仕方ないか。堀北さん自己紹介の時にいなかったし、接点があるとは思えないよね。そもそもそんなに嗜む人も多くはないし……精々150万人くらいな筈だ。
そう俺が解説すると、堀北さんは興味なさげに返事をしながら文庫本を取り出して読書を開始した。せっかくなら一緒にどうかと思ったんだけどな……(´・ω・)
話すことも特にないので、俺も持ってきていた本を読み始める。
一年Dクラスの窓際後方の席二つの周辺からは話し声が消え、ページを捲る音だけが微かに空気を震わせていた。
◆◆
放課後。
体育館で先程まで行われていた部活動紹介を終えた俺は、申請書類を持ってこれから入る部活の受付場所へと足を進めていた。
未だ喧騒鳴り止まぬ体育館。その一角を目指してゆっくりと歩く。
するとどうやら受付場所にはすでに先客がいたらしい。その先客は、部活の先輩と思われる生徒と和やかな雰囲気で話に花を咲かせていた。
「すいません。入部の手続きをお願いしても良いですか?」
会話を途中で横切るようになってしまい、申し訳ないなと思いながらも意を決して話しかける。
その言葉に先輩は俺の存在に気付いたのか、こちらを向いてペンを取り出し、書類を渡すように促してきた。
先程先輩と話していた生徒から好奇の視線を受けつつ、俺は先輩の指示に従って書類を手渡す。
「綾小路清隆君、ね。……はい、これで手続きは完了よ。ようこそ──
茶道部──日本の伝統的な作法やお茶の点て方を学ぶ部活動だ。お茶と和菓子を楽しみながら、美しい立ち居振る舞いや和の心、礼儀を身につけることができ、高校によっては留学生との茶会交流というのも開かれるくらいには外国人にとっても親しみのあるものだと言われている。
そしてこの部活動の特色として、基本的に温和な人が多く、活動頻度もそこまで高くないことが上げられる。要するに勉強や他の部活との兼部が容易だということだ。
そしてそれはこの高育でもほとんど変わらないようで、その証拠に活動日は火曜日・木曜日の週二日だけである。自由に時間を使いたいが、部活もしてみたい俺にとってはとても嬉しいものである。ヤッタネ!
しかし、俺がこの部活に入ることを決めた理由はそれだけではない。もう一つ、俺にとって大事な理由があるのだ。
それは──
「初めまして綾小路君。私は椎名ひよりです。これからどうぞよろしくお願いします」
俺の推しである”椎名ひより”も、茶道部に所属するということだ。
つまりこの部活に入るだけで、大好きなキャラと関わりを持つことができ、尚且つ俺が最近ハマっている推理小説について一緒に語ることができるのだ。
これ以上の喜びがあるだろうか。いや、存在しない。(反語)
いや、こんなことを考えている場合では無いな。とにかく大天使ヒヨリエルに挨拶を返さなければ……
「あ、ああ。よろしく椎名」
「はい。よろしくお願いします」
椎名はニコッと微笑みながら、俺の無愛想な挨拶にも怒ることなくそう返してくれた。
ああ、もう今世はこれで死んでも良いや……
ようやく出てきました。よう実世界の清涼剤にして圧倒的ヒロイン力を持つ椎名ひよりさんです。
いや〜…本当はですね、図書館で遭遇してそこから仲良くなるのもアリかなとは思ったんですけど、それだとなんかありきたりで面白くないかな…と思いまして。
ということで茶道部にぶち込んでみました。といってもそんなに出てくることは無いんですけどね…まあ日常回みたいなものをやる時にするかも…という程度です。
ではまた次回のお話で。お読みいただきありがとうございました。