偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話   作:マーケン

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4月1日(水) 百生吟子とストレージ

 新年度初日、各々の場で別れを済ませた人達が新しい出逢いに一喜一憂するこの日、私達蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの面々は多忙を極めた。

 新学期の始まりに伴うクラス替え、新入生による部活見学、そして、昨年度末に金沢の街まで巻き込んで開催した当スクールアイドルクラブ主催の大イベント"Bloom Garden Party"の後片付け。

 後片付けなんか人手の居る昨日の内に済ませるべき案件なのは重々承知していたが、蓮ノ空女学院を卒業する先輩方と過ごせる最後の時間にそんな無粋なことをする気にはついぞなれず、簡単な整理整頓だけしか進んでいなかった。

 

「これで、よし」

 

 いったん部室に引き上げていたステージで使った道具類。その中でも暫くは使わないであろうものを蓮ノ空名物の大倉庫にしまい終えた私、百生吟子はそれなりの重量物から解放されホッと一息ついた。

 

「今年中にアーカイブ化を進めないと」

 

 重労働で強張った体をほぐしながら私はスクールアイドルクラブに割り当てられたスペースを眺めてそう呟く。

 ここには最近のものは当然として歴代の活動記録や衣装、小道具などがところ狭しと並んでいる。古いものになるとおばあちゃんの現役時代、スクールアイドルクラブに名を改める前、まだ芸学部だった頃の物も。

 伝統を守る。伝統を広める。それが私のやるべき事であり、なによりやりたいこと。だからここにある紙媒体の活動記録のデータ化、現物しか存在しない衣装の製図、伝統曲などの制作履歴の見える化などなど在学中にできるだけ進めたいと思っていた。

 私が入部して直ぐの頃、昔おばあちゃんがよく歌ってくれた芸学部時代の歌"逆さまの歌"の行方をめぐって色々と大変だったことに想いを馳せた。その時先輩がした調査で、更新するだけして記録の連続性が途絶した伝統曲、作られっぱなしで放置された作品など沢山出てきたというのはスクールアイドルクラブで周知され、私はそれを放っては置けないと決意したのだ。

 途方もない作業になることは容易に想像出来るし、とてもではないが全部終わるとも思えない。 だが、私はそれでも別にいいと思っている。思えるようになっている。この2年の出逢いと別れ、そして掛け替え無い経験が私をそう思えるようにさせたのだ。

 

「今日来てくれた子の中にーーーーー」

 

 あるいはこれから出逢う誰かが、私を手伝ってくれたり、果ては自分の志を継いでくれる。きっとそうなると今の私なら信じられるようになった。

 そのためにも伝統の魅力、沢山アピールしなくちゃ。

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