偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
打ち上がる花火の煌めきに目を奪われ、遅れて届く音に肌を震わせた夜が明けて夏休みの茹だるような暑い一日がまた始まる。
生活習慣で休みだろうとも6時代には目が覚めるたちなので私は寝汗の染みた布団でダラダラするつもりにもなれずに置いて布団からシーツを引っ剥がした。
明日から遠征が始まるのでその前に一度部屋を整えておきたいのだ。
衣服だとか必要最小限の物しか持ってこなかったのに一学期終えただけで随分と物が増えた。
ヨガマットや裁縫セット、はんだごてといった部活関係で使うものや、ファッション誌といった流行を追うような書籍など、入学前には考えられないような物が置かれている。
雑誌系に関しては百生部長が(私もだけど)流行りものに疎いからスクールアイドルの端くれとして最低限は情報を押さえておこうと買ったものだ。正直ファッションの部分でしか実際派役に立っていない。
スクールアイドルの衣装はパーツ分割により柄×柄という組み合わせも珍しくないためその辺りの組合せの参考に大いに役立っている。
とはいえ本は嵩張るので結局、電子書籍を購読するようになったため今部屋にある雑誌関係はお役御免だ。
紙紐で一纏めにして剥がしたシーツと合わせて持ってこなかった部屋を出た。
外のゴミ置き場に向う道中、洗濯機にシーツを放り込む。
「あ、おはようマイカちゃん」
ランドリーから出たところで汗だくの徒町先輩とばったり会った。いつも通りの日課をこなした後のようだ。
「おはようございます徒町先輩。今日も朝練ですか?」
「その通りです。DOLLCHESTRAは今日も止まらないのです」
徒町先輩と話していて思うのがその言葉の100%その時抱いている気持ちを表現しているようで、私はこの小さな先輩と話していると気持ちが軽くなる。
「休みなのにマイカちゃんも朝から動いてて凄いよね。それじゃ、ひとっ風呂行ってくるね」
私よりも2つも上の先輩なのにスレていない徒町先輩は奇跡のような存在だと思う。
こういう人ともっと早く出会っていたのなら私は今頃どうしてただろう?
なんて、らしくもない思考を頭の中から追いやった。
ジュニアアイドルに未練は無い。あるのはあの世界に飛び込んだことへの後悔だけだ。
キラキラ光る世界にただ憧れて見上げるだけの子供であったならどんなに良かっただろうか?
私の後悔は未だに負債でしか無い。
笑顔を取り戻せた時、この負債は別の何かに変えることができるのだろうか?
蓮ノ空に来て一学期が終わり、未だ私は変わっていない。