偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
昨日、名古屋を経由してから電車を乗り継いで、沼津に着く頃にはもう夜もいい時間だった。商店街にあるホテルに泊まり、疲れの溜まった身体をなんとか動かして洗濯だけして泥のように寝た。連泊しているため着替えも一周しているのだ。
そして今日、Aqoursのメンバーと会うため海側にある内浦という地区に行く。
バスに揺られること1時間かからないくらいだろうか?かなり長い事走っていたように思う。
金沢にも海はあるし、神戸でも見たけれども、表現は難しいけれども海の街、という情緒がここにはある。生活と紐付いているというか、海という存在が地続きの世界というかそんな感じだ。
小高い丘の手前にあるバス停で降りる。
船着場なのだろう。道路の目の前の海沿いには沢山の船がならんでいた。
海の向こう側にはさっきバスで通ったところが見えるので内海のような感じなのだろう。金沢だと見られない景色だ。能登の方だと近い景色があるかもしれない。
そこから半島のような海沿いを歩いていくと上り坂がある。地図が正しければ坂の上に学校があるのだ。
景色は全然違うけれどもちょっと奥まった場所に学校があるというのは蓮ノ空に似ているかもしれない。
けれども歩いていて思ったのが空が広いのだ。
蓮ノ空は完全に山の中だけど、こちらは農園や住宅地の先、という感じで登るにつれ高い木はなくなり、開けた印象になる。
そして見えてくる広いグラウンドとプール。そして校舎。それはかつて浦の星女学院だったものがそのまま残っていた。
「開いてる?」
「入るの?」
校門の本来は閉まっているであろう柵が一部通れるようになっている。
「行こう」
不思議と呼ばれているような、そんな気持ちが私達の背中を押す。
海が近いからか、畑からの香りなのか分からないけど蓮ノ空とは違う匂いがする。
校門は開いていたけど校舎の中には入れないみたいだ。
どこかに誰かいないかとちょっと敷地内を歩くと中庭に出る。
「落書き・・・?」
「いや、違うんじゃないかな、これ」
中庭に面した校舎には色々な文字がペンキで塗られていた。
でもよく見るとそれはトンネルやシャッターに雑に描かれるそれとは違う内容だった。
「これは寄せ書きなんだ」
中庭のベンチに腰掛けていた金髪の女の人が私達にそう語った。
「ようこそ。浦の星女学院へ。ここの管理をしているAqoursの小原鞠莉です」
小原さんはそう嬉しそうに告げた。
「積もる話もあるだろうけど、今日はゆっくりしていって」
小原さんは「みんなを集めてまた来る」と言葉を残して私に鍵とメモを渡してそのまま去っていった。
「あの!」
「合宿するんでしょ?ここ使ってね」
チャオ、とイタズラっぽく笑ってそのまま今度こそ立ち去った。