偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
どうやら浦の星女学院跡地は地域の避難所的な役割から解体はせずに残され、合宿施設として再活用しているらしい。
職員室だった大部屋には空調設備もあるので酷暑での地獄の夏合宿とはならずに済む。
お風呂は流石に無いため丘の麓をちょっと行くとある旅館の温泉を利用した。そう小原さんが根回ししてくれた。
実戦続きだったのと移動の連続での疲れを癒すため合宿2日目は簡単な基礎練習とライブの振り返り、作曲の作業が中心となる。
ラブライブ!フェスの交渉については明日と、小原さんから連絡を貰っているとのことだ。
「ちょっと動きが固いね」
私達は職員室(仮)に集まってまず先日行ったライブのチェックからはじめているのだが、目に見えて私のパフォーマンスが悪い。
「ライブ前、いつもより緊張してるように感じたけど、どうしてか分かる?」
「・・・怖いからです」
「失敗するのが?」
いつかと同じように、百生部長は私に問い掛ける。けれど、あの日、初めてのFes×LIVEの日とは明確に理由が違うのだ。
「目の前にいるお客様が、怖い」
今までと決定的に違う環境。自分達のファン以外の人がいる場所。それだけで脳裏に過る嫌な記憶。それが、その記憶の中の視線が、来てくれている人達の視線と重なる。
きっとそんな人ばかりではない。そう願っているけれども信じきれていないのだ。
「今年の蓮ノ空はクール系の曲が多かったので笑顔がなくてもなんとかなってました」
そうやってなんとか人前に出て、少しずつ慣れていけば、克服できるのではないか?克服できれば笑顔を取り戻せるのではないか?そう思っていたけれど、そんな甘い話は無かった。
「でも結局進歩してない!観に来てくれている人を信じきれてない!私は、あまりにも不誠実だ」
形だけ取り繕って、信じてくれる人だと認められたら信じる。なんて都合のいい話だ。自分は心を開いてないのに向こうに信じろと言っているのと同じだ。
「なら曝け出してみない?その気持ちを。怒りや、嘆きや、苦しみ。マイカちゃんが自分も人も信じられなくて、楽しいって気持ちを信じられなくても、悲しいって気持ちは本当なんでしょ?ならその本当を出してみようよ」
「その本当って誰に響くんですか?」
「マイカちゃんの本当を知りたい人達に。少なくとも私は、マイカちゃんの悲しい気持ちも、無力な自分への怒りも信じてるよ」
だから私は自分から気持ちを見せる必要があるのだと、百生部長は言う。
「本当に、変な人」
諦めたくない。それもまた本当の私の気持ちだ
LuckyFesにLiella!を見に行っていたので更新が遅れました