偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
かなり前のラブライブ!優勝グループということで、正直教わる立場だというのに内心でお手並み拝見、なんて気持ちがあった。
「初見の道だと疲労感が違うでしょ?ペース配分も分からない。自分の本来のポテンシャルを維持できない。そんな風に感じてると思う」
早朝ランニングから異常に速いペースで着いていくだけで精一杯だった。
海沿いを松浦果南さんが軽く流す、と先頭を走り出すと軽くなんてとんでもない。ぶっちぎられそうだった。
「初めて立つステージも同じ。練習で出せる力を100とするならステージだと40〜80くらいのムラは軽くある。そこで対策を講じるにはどうすればいいと思う?」
「経験値を増やしてムラの幅を減らします!」
徒町先輩が元気よくそう答えると松浦さんは頷いて肯定した。
「それも正解。でも私なら練習で200出せるようにして本番で120〜180出せるようにする」
徒町先輩やみおんちゃんの三人は「おお!」なんて声を出しているけど、冷静に考えると脳筋プレイ過ぎる。
「ちなみに今のランニングのペースはラブライブ!優勝した時を200とするなら今日のは150だよ」
ただ何かを手にするには特化した方が有利であるケースはまま存在して、実際に成果を出した本物が目の前にいるのだと分からされる。
私は器用裕福で何でも出来るタイプだけど、スクールアイドルとしての前線を退いている人に遅れを取るということに驚きを隠せない。
「じゃあ次は・・・」
「すみません。松浦さん」
「果南でいいよ。どうしたの?」
「果南さんのパフォーマンスが見てみたいです」
みらくらぱーく!の直属の先輩である姫芽先輩もまた良いものを持っているけれど、言い方は悪いけれどいずれは追い越せる先達の能力値だ。だけど、ここまでフィジカルで差を感じる相手は初めてで気付けば私は果南さんに声を掛けていた。
「ん〜じゃあ、ちょっと踊らせて貰おうかな。みんなは水分補給でもしながら見てくれればいいかな」
そう言って果南さんは自由に身体を動かしていたが、引き締まった身体が作る大きな動き、それを支える体幹、純粋なパワーのなせる跳躍力。綺麗に足の上がる柔らかさ。それをまざまざと見せ付けられて私は水分補給を忘れて魅入ってしまった。
「蓮ノ空の中でも、みらくらぱーく!派今年ラブライブ!優勝を目指すんだったね」
「よくご存知で」
「何かの参考になれたかな?」
「ラブライブ!決勝には果南さんクラスの人がゴロゴロいるんですか?」
「そうはいないよ。でも何かに秀でてる人は沢山いる。私はフィジカル特化なだけだよ」
スクールアイドルは当然ながらダンスだけじゃない。けれども、明確に抜きん出ている分野があるというのは当然ながら有利に働くのは言うまでもない。
合宿最終日のおみやげとして中々味わう事のない敗北感。それを貰えただけで沼津合宿は成功だと、私は拳を固く握りながらそう思った。