偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
早朝、沼津を発つと昼前には東京に到着する。
浦の星女学院の鍵は十千万旅館に預けてくれればいいと言われていたけれども、学校を出るとそこには小原さん達が待っていた。
「Get on!駅まで送ってくよ」
「こんな朝早く!すみません。なにからなにまでお世話になってしまって」
白ピンクのツートンカラーが目立つワーゲンバスを指差す小原さんに私達は頭を下げる。
合宿場所やお風呂を格安で提供してくれたしラブライブ!フェスに参加表明だけでなく練習まで見てくれたりもした。それに加えて見送りつきなんて流石にいたせりつくせりが過ぎる。
「いいんだよ。浦の星を大切にしてくれて嬉しかったから」
「私達もAqoursって気持ちはずっとありましたが、スクールアイドルだって思えたのは久し振りでしたしね」
「それに、ここを閉じるのも開くのも、私達の手でやりたいんだ」
高海千歌さんはそう言って校門を閉じた。
もしかしたら、在りし日に同じ様にここを閉じたのかもしれないと、そう思ったがそれを問うのは野暮だ。
私達蓮ノ空一堂は顔を見合わせて同じ気持ちであることを確認すると、誰ともなく回れ右をして浦の星女学院に向けて頭を下げた。
「本当にお世話になりました」
朝日に輝く浦の星女学院はどこか威風堂々としているように思えた。
「ラブライブ!フェスも、ラブライブ!も応援してるよ」
「でも静真の、今のAqoursの子達も凄いんだから」
「覚悟するずら」
「もしもまた魂が迷える時は訪ねて来なさい。私が占って行先示しましょう」
「ん〜つまりまた沼津においでね、ってこと」
私達がバスに乗り込む事にAqoursの皆さんが声を掛けてくれる。
全然年齢だって上なのだけど、どこか同世代のスクールアイドルと接しているかのような錯覚がする。本人たちはスクールアイドルだと思えたのは久し振りだ、なんて言っていたけどここにいるAqoursは紛うことなくスクールアイドルだ。
「リハとかもあるだろうけど、敢えてひと言。またラブライブ!フェスで!」
高海千歌さんの言葉は芯の通った力強さで背中を押してくれるような響きがあった。
束の間の安らぎと、気持ちのいい心意気と、先へと進む元気を貰った沼津合宿はこうして幕を閉じた。
向うは東京。ラブライブ!の聖地だ。
"海の鼓動 青い風にとけてく"
この海と山と、温かい人の街から都会へ行く。どこか物寂しい気持ちになる。
"ココロ繋がって セカイが広がって 見えた遠い空"
けれどもまた会う約束が私の、私達の背中を押してくれる。
"ユメは無限大 あきらめない限り続くんだ"
ユメが私達を呼んでくれるから。