偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
昨日、無事に東京に着いてから私達は分散して各関係先との打ち合わせ場所への導線を確認した。
東京は兎に角入り組んでいるので、最寄り駅までの電車移動のしやすさとは裏腹に駅から待ち合わせ場所に到着するのにはそれなりにコツがいる。そのため一度目印を自分達の中で作って今日から行動スタートだ。
「セラス先輩。今日は原宿っすよね?」
「厳密には違うかな。外苑前駅からが近い」
正直、地下鉄は便利だけど地上に出るまでが気を張るのだ。目的の出口が見つからないとどこに出るのか分からないからだ。
幸い、新宿や渋谷といった巨大な地下迷宮に比べれば小さな駅なのでそれほど迷うこともなく私達は目的のカフェに到着した。
流石は都会。チェーンではないオシャレカフェで待ち合わせなんて思わず気後れしそうになる。
「入るよ」
木製のドアを入ると、目に飛び込んでくるのは落ち着いた色味のマホガニーのカウンター席。進行方向にそのまま伸びていて、通路を挟んでテーブル席もある。
丸い天井照明がオレンジに灯り温かな印象を受ける。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「すみません。8人なのですが」
「ありあ。私の客みたい」
メガネの店員さんが最初声を掛けてくれたのだが、すぐにもう一人の子が気が付いて対応を変わった。
紫の髪が特徴的な勝ち気な女性。年齢的にはまだ大学生だと思うので高校生の頃の写真と印象がそれ程変わらない。
「ウィーンさんですね。連絡をしていて蓮ノ空のセラスです」
「よく来たわね。歓迎するわ」
座りなさい、とテーブル席に座るように促される。
その間にありあと呼ばれたメガネの店員さんが入り口に休憩中の札を掛けていた。
「貸切よ。ゆっくりしていきなさい」
「とか偉ぶって言ってるけど、住み込みのアルバイトだからね、マルちゃんは」
「ありあは余計なこと言わない!」
ウィーンさんの語気は見た目の印象の通り強目なのだが、2人はお互いの事をよく分かりあってると言わんばかりのテンポ感で意思疎通しているのが見ていて分かる。
「それで、話ってのはラブライブ!フェスの事?」
なんやかんやとウィーンさんとありあさんは言い合いをしつつも二人でテキパキと人数分のコーヒーを用意し、ウィーンさんは早速本題とばかりに口を開いた。
「あ、はい。そうです」
「Liella!は全員参加よ。もうみんなの予定は抑えてるから」
「え、マジですか」
「何驚いてるの?素が出ちゃってるけど。まぁ変に畏まられるよりその方が話しやすくていいんだけど」
「これがウィーンウィーンってやつですね」
「それそれ。配信で見た感じのまんまなのね」
「すみません。今のだいぶ無理してます」
「その落差もそのまんまなのね」
ラブライブ!2連覇したLiella!メンバーはまだ大半が大学生だからスケジュールは抑えやすかったのだと言う。
1人海外にいるけれども、曰く、かのんはフッ軽だから平気、らしい。
「ラブライブ!優勝グループが沢山くるんでしょ?誰が一番か決めたりはしないの?」
ウィーンさんは挑戦的な顔で尋ねてくるけれども、今回のイベントはあくまでも来てくれる人と私達とで楽しむのが第一だ。
「了解。そのスタンスね。でも、気が変わったらいつでも言ってね」
正直、ラブライブ!フェス開催にあたり、ラブライブ!のように順位付けするというのも考えたことはある。これ以上の夢のカードは存在しないし、もしも、というのは誰しも考えたことはあるだろう。
けれども公平にパフォーマンスを競うというにはあまりに条件がバラバラ過ぎるのでその案は誰かに相談する前に廃案になった。
「Liella!はラブライブ!優勝に拘った。スクールアイドルを通して得たもの。それを全部表現する場としてこれ以上ない舞台だと思ったから。優勝がその証だと思ったから」
「私達はラブライブ!だけでは表現する場が足りないと思った。だから新しい場所を作りました」
「そのお陰でまたLiella!としてステージに立てる。あなた達の用意した舞台、最高だと思う」
最初、私達とあなた達は正反対、とかそんなのは違う、とか言われるのかと身構えたけど、逆に褒められてしまった。
あとで花ちゃんにも今の言葉を教えてあげよ。