偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
ラブライブ!という大会が出来て数年はそれを軸に業界が発展してきたため、どうしてもスクールアイドルとはラブライブ!を目指すものであるというのが主流になっていた。
けれども大会という形式上、流行廃りに結果が左右されやすく、どうしても大会というスタイルに不向きな方向性のスクールアイドルは不遇に過ごしていた。
そんなおり虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は自分の好きを自由に表現すること。流行廃りに関係なく、大会に囚われないスクールアイドルの在り方。それを表現する場所、スクールアイドルフェスティバルを開催した。
当時はスクールアイドル主催の大規模イベントというのはかなり珍しく、虹ヶ咲は地元お台場を広く使って開催したことで注目を集め、スクールアイドルの魅力発信方法に一石を投じたのだ。
蓮ノ空としてもBloom Garden Party開催にあたって当然参考にしているのだが、まさかスクールアイドルフェスティバル初回開催メンバーの高咲侑さんがあれほどまでバイタリティのある人とは思っていなかった。本当にシゴデキ侑さんって感じでラブライブ!フェスで悩んだら本当に相談した方がいいなと思った。
ただ、虹ヶ咲メンバーは個人個人、今でもかなり自由に動き回っているとのことでフルメンバーでの参戦は出来ないかもと言っていた。スクールアイドルはグループ全盛期の時代にソロ主体で活動していたので予定のあう人が出る、というのは今も昔も変わっていないと侑さんは笑っていた。
「遂にここまで辿り着きましたね」
今日は秋葉原と神田、神保町の間にある音ノ木坂学院にやって来た。
去年卒業した梢先輩が憧れたスクールアイドル、μ'sの母校だ。
μ'sはラブライブ!第2回での優勝グループなのだが、スクールアイドルブームという側面から見るとその役回りは大きい。
初代王者のA-RISEは圧倒的な実力とカリスマ性で人気のグループ、いわば特別な才を持つ高嶺の花だった。もしA-RISEが連覇していたらスクールアイドルとは、ラブライブ!とは特別な人の楽しむためのものなのだと思われブームにはならなかった可能性が指摘されている。
だがμ'sという普通の子が頑張って、全力で、そんな姿が眩しい、どこか自分でも頑張ればなれるかもしれないと思わせる存在がA-RISEを破り、ラブライブ!優勝を果たした。
その上で、自分を呼び水としてイベントまで開催して、スクールアイドルとは楽しいものなんだと世に知らしめた。
μ'sはスクールアイドルブームを加速させたブースターの役割を果たしたのだ。
「ドサ回り最終地。長い旅でした」
セラスの言葉には実感が籠もっていた。
結果論だけど参加表明してくださった皆さんの反応を見るに態々顔を出さなくても出演してくれたように思うけれども、各地のスクールアイドルの先輩と言葉を交わすことは刺激になった。
「スクールアイドルの方ですか?」
並木道を抜け、階段を登り切るといよいよ見えてくるのが音ノ木坂学院の校舎だ。
息を整えがてら眺めていると不意に学校の生徒さんから声を掛けられた。
「よく来るんですよ。スクールアイドルの人」
「すみません。お邪魔して」
「いいんですよ。μ'sは優勝旗のレプリカだとかそういうの何も残さなかったんですけど、今はチュン先生が居ますからね」
それではごゆっくり、と丁寧に頭を下げて生徒さんは去っていった。
「チュン先生?」
「たぶん、これから会う先生のあだ名じゃないかな」
μ'sメンバーの1人が今は母校で教員をしている。今日はその人に会いに来たのだ。
「じゃあ入ろっか」
Dear梢先輩。
私は今日、ついに貴方の憧れと対面することになります。
今度沢山お話しますね。 百生吟子より。