偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
あちこち駆け回って昨年度はバタンキューしたけれども今回はペース配分に助けられてか遠征中も遠征後も特に体調を崩さずにこれている。えらい私。
だけどーーーーーー
「ちょっと過酷すぎたかもね」
「面目ないっす・・・」
みおんが風邪でダウンした。
帰ってきてから緊張が抜けたのだろう。最初はいつも通りにしていたのだが、段々とシンドそうな雰囲気をしだして体温を測らせたらこの通りだ。
「体調悪い時は自己申告すること。スクールアイドルは先々人前に出ることも多いから自分だけの体じゃないんだから」
「セラス先輩がそれ言うっすか?」
瑞河復活のために長野〜石川を往復していた時、復活が確定して私は過労で倒れた。その時のことを言っているのだろう。
「先人に学びなさい。私もみおんも人前で取り繕うクセがあるんだから」
今だってベッドに横になりながら全然平気っすよ風に私に話しかけてくる。
こんなんじゃ休まらないだろう。様子を見に来ただけなので私は早々に退室しよう。
「取り繕ってるっての分かっちゃいます?」
「少なくとも、風邪なんか大したことないですアピールしてるのは分かるよ」
もしかしたら語尾にスをつけたりとか後輩感出しているのも後輩らしくあろうという気持ちの表れなのかもしれない。
「私、蓮ノ空に来て、自分の好きなものが間近に感じられる生活に憧れてたんです」
身体が弱っている時、普段は口にしないようなことを口走ったり、普段思わないようなことを考えたりする。
本当はとっとと休ませた方がいいのだけど、少しでも気が紛れるのならこの話くらいは付き合おうと思う。それにみおんのことを私はまだよく分かっていない。自分語りしてくれるのなら正直助かる。
「DOLLCHESTRAに気持ちを軽くしてもらって、そんな大好きなユニットを誰かが受け継いでくれるのを眺めてる。そのつもりだったんすけど」
「捕まっちゃったね」
「自分なんてって気持ちもあるけど、DOLLCHESTRAに触れていられる時間が楽しくて。私の好きなDOLLCHESTRAとは違うけど」
「伝統って難しいよね。どうあっても原典のままではいられない」
スリーズブーケの"Reflection in the Mirror"が長い時を得て原曲"逆さまの歌"から変遷したように、ユニットだって最初の理念が残っているのかも分からない。
それでも先達から素敵だと感じたもの、自分が好きなものを込めて今を作っている。
「はい。だからせめてみんなの胸を借りる気持ちを忘れないようにしたいなって」
「それで後輩・舎弟ムーブ?借りてきた猫みたいにならないでよ」
「そうっすね。色んな地域の凄いスクールアイドルの人達は今でも誇りを持ってた。当事者意識がちゃんとあったっす」
「それを見て何か感じた訳だ」
「まだ言葉が纏まんないんですけど、ちゃんとしたい」
「・・・ならまずは風邪を治すところからだね」
私はそう言って部屋から出る。
ちゃんとしたい、か。難しいことを言ってくれる。