偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話   作:マーケン

138 / 156
8月16日(日) 師弟

 すっかりご無沙汰してしまったけれど今日は近江町市場に顔を出した。

 世間のお盆休みと呼ばれる期間も最終日。観光客の足もほんの少し落ち着きを見せつつも行き交う人はまだまだ多く、初めましての人もそうでない方にも挨拶とお店の宣伝をしていたらあっという間に時間が過ぎていた。

 

「おつかれ小鈴サン」

 

「広実さんもお疲れ様です」

 

 一仕事終えた頃に声を掛けて来たのはスラっと背の高いちょいヤンキー風味のある大道広実さんだ。れいかさんのいる店で働く同僚(といっても徒町は不定期の臨時要員だけど)だ。

 広実さんは去年からここでアルバイトをするようになってから出会った徒町のお友達だ。

 

「Fes×LIVEの準備進んでるか?手伝えることあったら言ってくれよな」

 

「ありがとう。準備の方はバッチリ進んでるよ。今回の準備は外注の割合が多いから手は足りてるハズなんだけど、もしピンチになったら何卒」

 

「おう。当日は会場に行くから気軽に声掛けてくれ」

 

 スクールアイドルが好きで憧れていて、競技規定としてのスクールアイドルではないかもしれないけれど、その心にはスクールアイドルの輝きがある。そんな人だ。

 

「セラスサンと一年生の・・・」

 

「みおん後輩だね。2人には新曲の準備をして貰ってるんだ」

 

「いきなり任せるとかスパルタだな師匠」

 

「セラス先輩もいるから大丈夫。それにDOLLCHESTRAって曲作りについてはなんやかんやで感覚派なんだ」

 

 綴理大先輩は言わずもがな、さやか先輩もフィジカル面では理論派だったけど、サウンド面については身に染み付いたDOLLCHESTRAらしさを自然と足していた。そして徒町もまた言わずもがな。もちろん、ちょっとずつ違いはあるけれども、こう、注ぎ足し継ぎ足しを繰り返す秘伝のタレのようなものだと思っている。

 

「今年の、3人になったDOLLCHESTRA、めちゃくちゃ楽しみだ!店でもFes×LIVEの宣伝、ちゃんとしときますから」

 

 実は今日手伝いに来たのは宣伝という意味も僅かながらあったり、なかったり。

 吟子ちゃんは運営部分を、姫芽ちゃんはSNSでの告知を、私は地元民へのPRをと自然と分担して動いている。ちなみに泉ちゃんは遊撃として手が足りない所を補ってくれる。

 

「今年の夏もFes×LIVEで締めるぞー」

 

「そう言えば広実さんは何か夏らしいことやれた?」

 

「実は第2回Bloom Garden Partyに行ってきた。だまで」

 

「だまで!」

 

「レポもnoteにあげてるから見てくれ」

 

 本当にいつの間に、だが夏を満喫しているようならなによりだ。

 

「つまりスクールアイドルで夏がはじまり、スクールアイドルで夏が終わる。これを風流って言うんじゃないか?」

 

「マジ雅だよ!」

 

 はじめて出会った時は浮かない顔をしていることもしばしばあったけれど、こうして生き生きとしている広実さんを見ると私もパワーを貰える。

 私だけじゃない。これまでのDOLLCHESTRAはこうやって近江町市場で色々なものを貰っているのだ。

 Fes×LIVEが終わったらセラス後輩とみおん後輩をまた連れてこようと、そう思った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。