偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
今日はみらくらぱーく!としての活動はお休み、と姫芽ちゃんから聴いている。なんでも部屋に籠もってゲームする日、所謂チートデーなのだそうだ。分かるかどうかはさておき何をやるのか気になったので聞いたみたところデジモンワールドをやるらしい。以前手に入れ初代プレイステーションで遊べるから丁度いいからと言っていた。
デジモンというのは私もぼんやりとは知っているけれど、今回やるタイトルはRPGゲームとしてはシリーズ初のものらしい。去年発売されたデジモンのゲームが好評だったようで今回はそこから着想を得たようだ。
まぁゲームのことは姫芽ちゃんからあとで感想を聞くとして、じゃあ今日はその相方もお休みかなと思ったが一人で基礎練習、衣装作り、曲のアレンジについての熟考と無駄なく黙々とやっていた。
どうやら最近スイッチが入っているのか集中力がとにかく凄い。
ただ、根を詰め過ぎても今日はストッパーがいないのでソロで身軽な私が基礎練習の時は付いていた。
「桂城先輩も1を学んで10を知るタイプですよね」
夏場の基礎練習は午前中が基本だけど夕方にまた身体を動かすというので勝手に付き添ってストレッチを手伝っている。そんな時、不意に令沢君はそんな事を言ってきた。
「それは過大評価じゃないかな?精々が1を学んで4を知る程度だよ」
「謙遜になってないのに凄い謙遜しているように聞こえるのなんでだろう?」
背中合わせに逸らすストレッチ、バディバックだ。令沢君が何を考えているのか、何を思っているのかその表情から読み取ろうとすることは出来ない。
「桂城先輩は飽きたりしないんですか?入部してから見てきましたけど、ちゃんと毎日が楽しそうに過ごしてるなって」
「なるほど。楽しそうか」
はたから見てそう思われるというのが地味に嬉しい。
今年の私は自由に表現の世界を満喫している。それが伝わっているようならこれ以上のものはないだろう。
「私は夢中になると直ぐに勝てるようになってしまって」
「それで飽きると?」
「はい。自分にないものが欲しいんです。だから手にはいるとどうしても興味が薄れてしまって」
令沢君のそれはなるほど。どちらかと言えば成績とか数字がはっきりしているものが基点になっているように思う。
「となると困ったな。参考になりそうな意見が出せそうにない。私とはスタート地点が違いすぎる」
私のはじまりは演劇と言って良いだろう。つまり表現の世界の話だ。
言うまでもないけれど、こちらは明確に数字で優劣をつける分野ではない。
個体値として似たような成長曲線を持つ星の元に生まれた私達だけれどその成り立ちは全然違うようだ。
「だが、それこそスクールアイドルなんてあやふやな分野は君を飽きさせないと思うけどね」
「ラブライブ!優勝で終わらない、と?」
「君次第だよ。ラブライブ!をはじめとした競技系のスクールアイドル大会は勿論ある。だけど仮にそれに優勝したとして、その時君が満足してまた飢えるのかどうか?」
「・・・そろそろ曲のリハやりたいんで」
「ならカメラマンをやらせてもらおうかな」
個人的な意見になるが表現の世界は底も無いし頂点も無い。評価軸が自己満足と他者承認の2軸あるのだが、他者承認は物質的には天井は存在するけれども現実的には青天井。
そして自己満足については沼にハマり込んでしまえばもう底はないのだ。
汗水流して一曲通しリハをしているこの子のハマり方は、はたから見てもう沼に入り込んでいるように私は思った。