偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
みおんちゃんの作詞作業が終わった。その事に地味に衝撃を受けている自分がいる。
取り立てて秀でたものもない子が、私でもまだ出来ていない事をやったのだ。なんというのだろう。不思議な感覚だ。
勉強やスポーツならば自分が手を付けていない分野だから先を行かれたというだけで直ぐに追い越せるとそう思うだろう。事実、今までそうだったのだから。
だけれども創作という分野であると追い越せる、とかそういう明確な基準だとかが無い。
究極的には自分が良いと思ったのものこそが至高の世界。それがたまたま誰かに響くかどうかの話でしかないのだ。
「とりあえずお疲れ様、でいいのかな?」
「とりあえず、ってのがちょうと良いと思うっす」
部活あがりにシャワーのタイミングがみおんちゃんと一緒になったので何となく近況をお互いに話している。普段から一緒にいるから近況もなにも全部知っているんだけどね。
「これで名実ともにDOLLCHESTRAになれたじゃん」
「成れた、んでしょうかね?でも身が引き締まる気持ちはありますよ」
私達は例えるならば新しい色の絵の具だ。
パレットに既に出来上がった色の中に自分を足すのだ。その変化を考えると足すことを躊躇う気持ちも分かるし、その変化を自分自身が受け入れられるかという悩みも分かる。
特に私の所属するみらくらぱーく!は近年はめぐるりカラーが強く出ていて、安養寺先輩はそれに上手く合流していると思う。
なら私はといえばめぐるりカラーより寧ろ安養寺先輩寄りの人間なのでだいぶバランスが偏ると思うのだ。
「もしかしたらそれで3ユニットあるのかもね」
「どういうこと?」
「自分達だけだと変化を認められないかもし)ない。足踏みしてしまうかもしれない。でも鏡写しのように同じ境遇のユニットが隣にいたら?」
「他所の変化は認めやすい。それが翻って自分を認めるための理由にもなるわけね」
ユニットが3つあることは伝統だから、で済ませていたけれどもなるほど。成り立ちという部分は確かに特に語られていない。
みおんちゃんは反射的に思った事をこうやって口にすることもあるけれど、素直な疑問とかは時に自分の盲点にも気付かされる。
「そういう理由づけとかに思いを巡らせられるの、結構ロマンチックだよね。みおんちゃんは」
「そんなことはじめて言われたっす」
シャワーを止めて一足先に脱衣所に向うと、みおんちゃんもまた済ませたのか合わせたのか脱衣所に来た。
「女子校だし、格好いい女子から口説かれる、なんてシチュエーションもちょっと夢見てたけど、まさか葵さんに口説かれるとは」
「いや、口説いてはないんだけど」
「私の純情!?」
夢見がちガールが炸裂しているけれども、実際、素直にそう思ったから口にしただけなのだ。
「それに格好いいより可愛いジャンルじゃない、私って?」
「ボーイッシュ路線似合いそうですけど?」
いつかトライするのも悪く無いかな、と可愛い下着を身に着けながら思う。
・・・Calvin Kleinでも買うか、と思ったけど却下した。スポーティだけど案外高いのよね。