偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
スクールアイドルクラブ、まだ新入部員が2人しかいないらしい、と噂がまことしやかに聴こえてきたのは昨日からだ。一人はスリーズブーケ志望だけど、もう一人はDOLLCHESTRAとみらくらぱーく!どっちになるか分からないとかなんとか。
先週なんかはスクールアイドルクラブの入部体験凄く人がいる、みたいな話だったのに一体全体どういう事なのか。
ことここに至っては流石にちょっと真実を知りたい。
私、紫輪みおんは同学年かつ一度だけ会話したことあるというだけの縁で昼休みの時間を使ってスクールアイドルクラブに入部した錦上マイカと接触した。
「すみません、相席良いですか?」
「どうぞどうぞ・・・って、前に会ったね」
入部したという事実だけで、錦上さんからはどこか少しだけ立ち振舞いが凛としているような印象を受けた。
「この前は名乗ってなかったね。私は紫輪みおん」
「私は錦上マイカ。もしかしたらもう知ってるかもだけどね」
「うん。知ってた。スクールアイドルクラブのことは学校のどの情報よりも耳に入るから」
「それで何が聞きたいの?」
たぶんクラスの子とかにも事情聴取を受けているのだろう。錦上さんはこれから聞かれるであろう内容にややうんざりした様子で話を促した。
「スクールアイドルクラブ、というかDOLLCHESTRAはどうなるの?」
「やっぱりDOLLCHESTRAファンだったか・・・もし葵が入らなくても徒町先輩がいるし、セラス先輩も猛特訓してる。無くなりはしない」
ある程度は情報押さえてるでしょ、と自分はスリーズブーケに入るつもりであるということを端折って錦上さんは語った。
「錦上さん的にその葵って子はドルケとみらぱどっちに入りそうなの?」
「葵はたぶんみらぱだよ」
どこらへんに根拠があるのか分からないけど結構自信ありげに言った。
非常勤としてセラス先輩がいるとしても新入生が入らなければ来年以降のDOLLCHESTRAにやや暗雲が立ち込める。
「106期のDOLLCHESTRA、どうなっちゃうの?」
「あれ?103期の原理って訳じゃないんだ」
「103期が一番好きだけど、それはそれなの」
圧倒的に103期が好き。でも例えば徒町先輩がそれを真似ても同じ味にはならない。個人的な好みの問題として最近のDOLLCHESTRAは違う(好みではない)と思っているけれども、それ則ちどうなっても良いと思っている訳ではない。
そもそも103期時代の2人から直接指導を受けている徒町先輩にはDOLLCHESTRAを繋いで貰わないと困るのだファンとして。
「なら入れば?」
「え?」
「DOLLCHESTRAにさ。入ればいいんじゃない?」
錦上さんは呆れたようにズバッととんでもないことを言ってきた。
「外からあーだこーだ言っても仕方ないでしょ?こうやってわざわざ大した仲でもない人に話を聞きに来るくらい好きなんでしょ?」
「好きだけど」
「その前髪は?インナーカラーは?カーディガンは?本当はなりたかったんじゃないの?DOLLCHESTRAに」
ああ、あまりにも出歯亀が過ぎたんだ、とやらかした自分が嫌になる。子供みたいにちょっとのことで周りが見えなくなって、こうして錦上さんを怒らせて。
「DOLLCHESTRAは紫輪さんが思ってるよりずっとタフだよ。新入生の私が言うのも何だけど」
錦上さんは定食をかっ食らって席を発った。
「私は」
ただ好きなだけの人間に何か言う資格なんてない。スクールアイドルの活動は活動している当人のためのものだ。それをどうこうしようなんてファン失格としか言えない。
「全然成長してないじゃん」
人よりも精神的な成長が遅いと自覚している。だからボロがでないように、取り繕えるようにとちょっと距離を置いていたのに。スクールアイドルは私の気持ちを簡単に掻き乱す。