偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
去年は後輩が入らないと知ったとき素直にがったりした。 だからセラス後輩が瑞河から遥々蓮ノ空に入学し、更には入部してくれて本当に嬉しかった。DOLLCHESTRAに加入こそしなかったけど、みんなの後輩って感じでとても可愛かった。それにさやか先輩が居たから寂しさや不安を感じることもなかった。
「小鈴先輩」
さやか先輩が卒業して、いったんDOLLCHESTRAは私一人になった。けれどもBloom Garden Partyの開催という実績。去年みたいに(外から見て)方針転換したりしていないため、きっと今年は大丈夫。そう思っていた。
「セラス後輩」
私のDOLLCHESTRAのはじまりを象徴する蓮ノ湖。入学して何かを、自分を納得させる何かを打ち立てたい衝動で湖横断しようとして村野さやか先輩と、そしてDOLLCHESTRAと出会った場所。
その湖畔で今すぐにでも叫びたい衝動をぐっと堪えて"みんなの後輩"セラスちゃんと対峙していた。
「ごめんね、セラスちゃん。月末に向けて新曲も準備はしてたんだけど、今回は伝統曲に変えようと思ってる」
「いえ、あれは新入生が来た時のためにって準備してたものって知ってますから。小鈴先輩が気に病むことはないです」
全部のユニットを網羅する。非常勤セラスを早速頼ることになるとは徒町自身も思っていなかった。
「なんか去年のこと思い出すね」
「その節は本当にお世話になりました」
蓮ノ空だから、伝統じゃないから、恩返ししたいから。そんな気持ちで雁字搦めになっていたセラスは去年、自分の本心を封じてDOLLCHESTRAに入ろうとしていた。
それを直感的に違うと察した徒町は本心はどうなのかとセラスに問い掛け、それが切っ掛けでEdel Note一年限りの復活という異例を生み出したのだ。
「あれから一年経ってセラスちゃんとDOLLCHESTRAのパフォーマンスできるなんてね」
新入生がDOLLCHESTRAに入らない。それはとても残念ではあるけれど、その気持ちとセラスちゃんとやれて嬉しいという気持ちは両立する。
「私、ちゃんとDOLLCHESTRAを受け継ぎますから」
「セラスちゃん?」
「私の今の夢は受け継いで、次に繋げることです。瑞河では出来なかったことを今度こそ果たす。だから、DOLLCHESTRAのセラスではなくても、ちゃんと、繋げますから!」
思えばEdel Note解散してからのセラスちゃんの目標をちゃんと聞いたのは今日が初めてだった。
「去年、DOLLCHESTRAに入るっていってぬか喜びさせちゃったから。だから今年は本心からの気持ちを小鈴先輩に伝えたくて」
「そっか・・・そっかぁ」
その気持ちも言葉も、あるいはセラスちゃんがDOLLCHESTRAに入りますというよりも嬉しかった。
なら私はこれまで受け取ってきたもの、そして私自身が伝えたいものを遠慮無くセラス後輩
託そう。そう思ってーーーーーーー
「なんで、ここに?」
聞き覚えのない声に振り返る。
「学校から対岸なのに、なんで!それもよりにもよってDOLLCHESTRAの!」
見覚えのない子が、腰を抜かしていた。
「ここは徒町にとって大切な場所だから・・・ってことを説明されたい訳じゃなさそうだね」
なんとなくそう思った。
それによく見れば見覚えはないけれどもどことなく、身に覚えのある雰囲気がその子からは感じられた。
「良かったら少し練習、観てってよ」
「私達スクールアイドルやってるので、観られた方が身が引き締まるんだよね」
私の誘いに何かを察したセラスちゃんが乗ってくれる。
「なんでこんなことに・・・」
私は腰を抜かしている子に手を差し伸べると、ぶつぶついいながらもその子は私の手を取った。
「徒町はスクールアイドルクラブDOLLCHESTRAの徒町小鈴です」
「紫輪みおん、一年です」
2年前DOLLCHESTRAと出会った場所で、徒町はまた新しい出会いと巡りあった。