偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
Fes×LIVEに向けてステージを作る予定の卯辰山公園ふれあい広場に私は足を運んでいた。今日から設営の作業が行われるのだ。幸い、本番当日までギリギリ天気も持ちそうな予報だ。
「来年ここを使うかは分からないけど、記録取っとけば次やる時の参考になるでしょ」
「それでVlogですか、流石吟子部長。さす吟」
「変なこと言ってたらセリフはカットするからね、セラス」
先ずは作業にあたって規制線を張る。
小雨が降っていて関係者以外見当たらないから寧ろ好都合だ。
吟子部長は一緒に来てくれている有志の蓮ノ空生、毎度お手伝いしてくれる演劇部、映像部、DIY部の人達、そして学校OBの人達に指示出しをしている。
学外の、それも市のイベントの一部とかではない完全主宰ライブの時にはこうやって力を貸してくれる人達に本当に助けられている。
ステージ設営や資金といった問題はスクールアイドルプロジェクト協賛となるためそれ程でもないけれども、下準備については自分達でやらなければならないからだ。
「ステージエリアの確認、導線の確認OKですね。それではここからはマンパワーになります」
「無理に多く持とうとはしないように、1人一枚を徹底してください。足元が濡れているので転倒にはくれぐれも注意で」
「「ご安全に」」
樹脂製の地面養生材を1人一枚ずつひたすら運んで芝の上に並べていく。一枚一枚がパズルのピースみたいになっているので組みやすく、汎用性が高くて重宝している。
一枚一枚が10kg以上の重量があるけれども、地面養生の類いの中では軽量な方なのだ。
かわいい、ではない。いや、かわいいのだけど、か弱い乙女である私には中々重労働だ。
けれども、マンパワーとは案外バかにできないもので、みんなでせっせと運んでいると果てしないと思うような作業でも終わるものである。
「ふ、ふふ。今日限定でマッスル系スクールアイドルを名乗ろうかと思います」
「お疲れ様、セラス。皆さんもありがとうございました。今日の残りの作業は軽作業になりますので、ここでいったん解散となります」
「「本日は本当にありがとうございました。また明日からもよろしくお願いします」」
OBの方々はそれぞれのお住まいに、蓮ノ空生は寮に向かってそれぞれの帰路につく。
私と吟子部長は過去の記録を確認しながら天然の支柱となる桜の木に目印をつけていく。
過去のFes×LIVE映像を観ても分かる通りここでのステージ装飾は毎回同じ仕様でやっているため、ガイロープの吊元が決まっているのだ。
木材を痛めないよう、頑丈な場所が選ばれているのでそこは間違えられない。
「私達スクールアイドルがライブやったりイベントやったりは当たり前じゃないからね」
「去年は沢山の人に支えられましたしね」
地域あっての蓮ノ空。来た時よりも美しくの精神で場所をお借りしているのだ。
「来年は上級生はセラスだけだから。めんどくさいと思われるとしても注意しないといけないことは口に出さないといけないからね」
「はい」
段取り組んだり、丁寧に現場の確認をしたり、注意喚起したり。スクールアイドルの華やかなステージの裏にはそういう小さな事の積み重ねが大事になる。何をするにも根本の理念を忘れてはならない。
「今年の、106期の子達にも伝えていこうね」
「今年の子は私みたいに手のかからないって訳にはいかなさうですけど、覚悟してくださいね」
「セラスにも苦労させられてるよ」
「現在進行形!」
物分かりは良いし理屈には理解を示す。これまでの触感では106期生はそういうタイプだけど、それはそれとして感覚的には理解していないとかなりそうで末恐ろしい。
普通が過ぎる故に自分の好きや関心を理解していない錦上マイカ。
欲深く、なんでもこなせてしまう為に際限がなくなってしまう令沢葵。
そしてーーーーーー
「どうなるかな?紫輪さんは」
「結構拗らせてそうなので小鈴先輩の力で光堕ちして貰おうと思っています」
人よりも心の成長が遅いと自認している故に自信がない紫輪みおん。そんな自分の心の支えになった103期時代のDOLLCHESTRAが好き過ぎる余り、他への興味に蓋をしているとセラスは感じている。
「セラスにも後輩が出来て良かったね」
「・・・そうですね」
気の抜けない一年になりそうだ。と一昔前のやれやれ系主人公のようにセラスはそう思った。