偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
もしかしたら私は禁断の扉を開いたのかも知れない。というのも、晴れてみらくらぱーく!に加入した令沢葵ちゃんのことだ。
何をしても飲み込みがどえらい早い。そして努力を惜しまない。もしかしたら努力とすら思っていないかもしれないが。
とにかく全てを飲み込むように、いきいきと色々なものを吸収していく。
いや、いきいきと言うよりギラギラしている。
「お疲れ様です。姫芽先輩」
「お疲れ様ー。初めてとは思えないほどしっかり喋れてたね」
「With×STATIONで何度か喋ってますからその延長ですよー」
お昼休みの時間を使って来週のOPENING!Fes×LIVEの宣伝を兼ねてみらぱラジオショート版を放送したのだ。
葵ちゃんはリアルタイムでのお喋りは初めてだったけど、まるで緊張した様子もなかった。
楽しんでいるのは間違いがない。けれどもそこには隠しきれない上昇志向を感じられた。
うかうかしていると食われる。そんなひりついた緊張感に覚えがある。ゲームの大会で優勝目指してガンガンやってた頃のあの感覚。
「先ずはスクコネで月間MVPを取りますよ」
「お、やる気だねぇ」
「日野下部長は入部早々、月間MVP取ったんですよね?」
「よく調べてるじゃん。本気だね?」
「はい。リアルタイム配信が出来ないのは痛いですが、録画にも強みはありますし、去年までの蓮ノ空と差別化出来て悪くはないと思うんですよね」
「編集の時間考えると更新頻度保つの大変だけどね」
「どんとこいです」
自分の経験則だとこの状態は成すこと成すまで止まらない。
そして今は配信でと言っているけれどもいずれはどこにその矛先が向かうのか予想がついている。
これは早いところ部内でも根回ししとかないと大変なことになるなぁ。
「私、実はこれまで明確にトップを取ったことないんですよね」
「そなの?何でも出来そうな感じだけど」
「井の中の蛙で頂点取って次行ってました」
井の中の蛙大海を知らず、空の深さも知らない状態なのだろうけど、問題はその蛙がどうやらガマ親分というところだ。
「じゃあ、葵ちゃんの部屋にトロフィー沢山並べようか」
「是非お願いします」
私もブレーキ役なんてのは性に合わない。
久し振りにこう、闘争本能がワクワクしている。
今年のみらくらぱーく!は暴走特急。燃え尽きるか走りきるかのチキンレース。とことんやってやろうじゃないの。なんてね。
どうなるか分からないDOLLCHESTRAのことに口出しするような余裕はもしかしたら無いかもしれない。内心で小鈴ちゃんに詫びを入れて私達はそそくさと放送室を後にした。次の授業までそんなに時間は無いのだ。