偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
今日は新年度初の部長会議。
吟子ちゃんが会議に出席している間、私達は手分けして部活体験に来てくれた子達を指導していた。
私、安養寺姫芽は部室を使って初日から参加している子達にWith×MEETS体験をさせている(テストモードで)。
大所帯になっても場所を圧迫しないようにと、来た日であれやってないこれやってないとならないよう初日はこれ二日目はこれというようにフローチャートに方式にしているのだ。
初日から来ている子は流石にスクールアイドルへの志があって自分でトレーニングなどしていたようだけど配信ともなると流石にあたふたしている。配信の練習なんて個人チャンネルでも持ってないと中々できないし、はっきり言ってこれについては慣れの割合が大きい。
取り敢えず一年生には自己紹介配信を想定して好きに喋らせている。
その姿を可愛いなぁ、と眺めつつあからさまに放送禁止用語とか言ったら天の声で注意していく。
放送禁止じゃないけど、言うとメンドクサイ類いのワードとかどうやって教えようかとか考えているといつにもまして眉毛が困っている吟子ちゃんが戻ってきた。
「どしたの吟子ちゃん?話聞こか?」
「何その下心ありそうなの・・・まぁいいや。ちょうどWith×MEETSの体験やってるみたいだし、先に話しておこうか」
なんだなんだ、とまだ入部していない一年生を含め私は傾聴の体勢をとると吟子ちゃんから信じられない言葉が飛び出した。
「部長会議前に関係のある部活もあるからって先生から告知があって・・・今年はWith×MEETSがあまりできなそう」
気まずい数秒の沈黙の後、みんな唖然としているのだ。
いやいやいや待て待て、急になんでそんなことに!?
「姫芽なら心当たりあると思うけど、去年から配信が不安定だったでしょ?」
そう言われると少なからず、というか多々心当たりがある。Fes×LIVEの時に配信が途切れた時はもう散々だった。私達はステージから動けないから手伝ってくれている友達がSNSへの告知から配信の復旧までやってくれて事なきを得たが本当に大失敗に終るところだった。
余談だが、それを切っ掛けにステージを手伝ってくれる人向けのトラブル対応マニュアルを整備することになったので転んでもただでは起きない。
「学校も寮も通信系が老朽化しているから今年度から段階的にオーバーオール入るって」
「そゆことかぁ」
卒業した先輩から聞いたネット禁止令ではないのは安心材料だが、物理的な事情ともなると手も足も出ない。
「完全に回線を遮断する訳じゃないけど通信速度はかなり落ちるって」
「そうなるとリアルタイムの配信は難しいね」
「ちょっと対策考えないとだね」
まずいですよ、と放送禁止用語ではないけど言うと面倒な類いのセリフを脳内でぼやきつつみんなが集まるまで対策を考える。
配信をしない、というのはありえない。
蓮ノ空は全寮制であるゆえに顔を出す配信でも他のスクールアイドルに比べてセキュリティ面で安全度が高い。だからこそコンスタントに配信できるというのは強みであるし、近年の蓮ノ空の魅力の1つでもある。
「新年度早々、いきなりピンチだねぇ」
今日来てくれているこの子達のためにも、なんとかしないといけないと、とりあえず配信体験を継続しつつも私は思考を回し続けるのだった。