偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
中学に上がって以降、休みの日に昼まで寝ちゃってー、とか起きれないよねー、とかそう言う同級生が増えていって驚いたのを覚えている。
私は全然起きれないなんてことはなくて、遅くても07時00分には起きてからみんなの言うことがピンとこなかった。
ゆっくりテレビを観ながら朝食を食べ、普段学校に出る時間以降の番組を観るのは新鮮でそれだけで得した気分になれた。でも同級生の多くはそんな風には思わないらしい。
こんななんてことない些細な違いの積み重ねが私を取り残されたような気持ちにさせる。
けれども、習慣なんてのはそうそう変わることもなく、私はゴールデンウィークだというのに他の多くの寮生よりも早く起きて人気の少ない寮の食堂て寂しく朝食を食べることが多かった。
「おや?おはよう。随分早起きじゃないか」
「あ、おはようございます。桂城先輩」
朝から隙なく凛とした立ち姿だけで絵になりそうな桂城先輩が、特徴的なクラゲカットの長い襟足を揺らしながら食堂に顔を出した。
「私はいつもこれくらいの時間になると自然と目が覚めてしまうんです」
「良いことじゃないか。それなのに何故そんなに後ろめたそうなのかな?」
食堂の番人たる御姉様方からトーストベースのモーニングセットを受けとると自然な足取りで私の対面に座った。
「見て分かる通り、みんなって休みの日は遅くに起きるものみたいなんですが、その気持ちが私には分からなくて」
「寂しいかい?」
「寂しい・・・そうかもしれませんね。また私だけ遅れてるんだ。と思って」
ふむ、と桂城先輩はなんでも見通せそうな燈色の瞳で見詰めてきた。そこにほんの少しの同情を揺らして。
「疎外感、か」
「え?」
「いや。本来日が昇ったのなら起きるのが自然なんだ。こんなところくらい他の人よりも自然なことに寄ってても罰はあたらないだろう?」
それは飾り気のない、ごくごく平凡な物言いだった。
「自分と人の違い。いつか違いそのものを楽しめるようになれたらいいね」
結局のところ、公序良俗に反さない範囲の行動の善し悪しを決めるのは自分なのだから。
「ところで桂城先輩はこんな時間に起きて、今日はお出かけですか?」
「いや。実は特にこれといった予定はないんだ。紫輪さんは今日はどうするのかな?」
「私はこの一月の授業内容の復習をしようかなと思ってます」
部活に入部するのが遅かったくせにスクールアイドルのことを考える時間が多く、授業に身が入っていない時間が多かった。連休明けたら中間テストも近いので流石に勉強については人並みにならないと不味い。
「赤点でも部活停止、とかはならないけど、補修行きは避けようじゃないか」
どこかのFUJISHIMAさんのように、とクスクスと桂城先輩は笑った。
正直、勉強については笑い事ではないので私には乾いた笑いを返すだけで精一杯だった。