偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
今日はユニットの基礎練習を終えた後に百生部長に連れられて大倉庫に来ていた。
「部活紹介記事書くにも資料があった方がやりやすいでしょ?困ったらここが一番だから」
「話には聞いてましたが本当に迷いそうな大きさですね」
資料保存庫らしく自然光は最小限にされ、頭よりも高い棚がずらりと並んでいる様は圧巻だった。
その中の一角、スクールアイドルクラブのスペースの前に案内されたのだが、歴史や過去の実績があるからなのか結構広めにスペースを貰えているようだ。
「持ち出し厳禁とかそういうのってあります?」
「特には無いけど、古い物を手に取る時は気を付けてね。前、古の衣装を発掘した時は大変だったんだから」
「分かりました。なるべく古そうなものには手をつけないようにします」
実際、あまりにも古い情報ともなると逆に現代との道筋を繋ぎにくいためちょっとした部活紹介程度の記事にお出しするには適さないだろう。
となると調べるならここ数年のことになるか、と思うと自然と頭に浮かぶのは日野下花帆先輩の笑顔だった。
「花帆先輩は103期生。梢先輩は102期生だよ」
「流石に・・・分かってますよ」
「花帆先輩がどんな感じだったのか気になるでしょ?」
普段真面目であまり冗談を言うタイプではない百生部長は珍しく悪戯っぽい顔をしている。
「葵が言ってました。笑顔の天才だって」
「確かに。あれにやられちゃう人も多いのなんの」
うんうんと懐かしそうに頷く百生先輩はいつもより饒舌だった。
「BGPの時に色々聞きました。天性のものだけじゃない。裏打ちされたものだって。それが人に広がっていくって」
「完璧な人では無かったし、勢いでなんとかしちゃうような所も沢山あった。でも、関わった人を楽しいと思わせる。そんな所が欠点なんて気にしなくさせるんだよね」
そう言って一冊のファイルを取り出す。蓮ノ空に伝わる楽曲一覧と背表紙に書かれている。
「これ、まだ私が整理中なんだけどね。これがこうなってこうなるなんて普通気付かないでしょ?」
"逆さまの歌"から"Reflection in the mirror"への変遷や経緯が纏められたページがある。
「私が好きだった逆さまの歌。でもどこかで変わって、変わったことが忘れられて・・・それを見付けてくれたのが花帆先輩。それとスクールアイドルクラブのみんな」
百生部長が特別な思い入れがあったというだけの、ただそれだけのことで一生懸命探してくれたのだと言う。そう言うところが人を惹き付けるのだと。
「だから私もね。やれることはしたいと思ってる」
「記録の整理ですか?」
「鈍感系?そう言うとこだよ錦上さん」
ぽすっ、とファイルで肩を叩かれる。
「別に私はーーーーーなんて思ってそうな顔してるから私が勝手に喋らせて貰おうかな」
次に取り出したのはアルバム。
ページを開いてはこの時どんなことがあって、どうして、と百生先輩のお喋りに長時間付き合わされる事となった。運動後の疲れとか空腹感とかそんなのを忘れるような、そんな時間で気付いた時には完全に日が暮れていた。