偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
披露する曲アンケートも終わり振り入れ。明日には校内の生徒だけとはいえ御披露目である。スピード感がおかしい。そう思ってフタを開けてみるとなんだがフリーの部分が多い気がする。
「プロじゃないんだから1日でガチれるはずないじゃん」
とはセラス先輩の弁で思わず私含め1年生一同唖然とした。所謂おまいうって奴。
「葵は圧が強い。マイカは必死過ぎ。みおんは楽しいのは分かるけど観客のこと見てなさすぎ」
こないだのFes×LIVEを後から振り返って自分でもどうかな~って思ってる部分をズバリつついてくる。セラス先輩、めっちゃ見てる。
「だからフリーを多めにしたの。その部分でどうステージを、空気感を作るのかよく考えること」
週明けの時のおふざけテンションはどこ行ったとツッコミたくなるくらい冷静な指示だ。
これが瑞河時代に桂城先輩をトップスクールアイドルまで鍛え上げたセラス先輩のもう一つの顔。
この人も面白い、と思う反面、私の両隣は頭を抱えていた。
「え?只でさえ部活紹介ので難航してるのにフリー?無理」
「楽しくなると周り見えなくなるっすよね」
「それじゃあ早速練習するよ」
振り入れそのものは丁寧に。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、、、と構成ごとに分解して一回の動きを限定して覚える。一通りやったらくっつけて通しでやり、微調整を入れる。くっつける部分など細かくフリーの部分を入れることでかっちり合わせる部分は実はそれ程多くならないようにしているあたりなるほど。1日で振り入れするための工夫が散りばめられている。
1回、3回、、、と数を重ねていき、つどセラス先輩から指摘が入る。セラス先輩も一緒に動いている筈なのに後ろに目が付いているみたいに良く見てる。
「じゃあ基礎は出来てるみたいだから今日はおしまい。自主練してもいいけど、30分までね」
じゃ、と解散指示がありセラス先輩は一足先に着替えに行った。
「セ、セラス先輩がこんなにスパルタだとは」
ぜーぜーと肩で息をする紫輪さんと
「フリーって、どうすれば・・・どうしてた?」
体力的には余裕そうなマイカちゃんがそれぞれ頭を悩ませていた。
「とりあえず続ける?」
「あの、どうせなら現地でどうですか?その方が感覚掴みやすいと思うんすけど」
「そうだね。そうしよっか」
リハーサルルームを急いで綺麗にして私達は足早に中庭のステージに足を運んだ。
稀に演劇部や吹奏楽部が使っていたりするらしいのだが、今日は幸いにして誰もいない。
「じゃあ、私はカメラ撮ってようか」
今回の課題のメインは言わずもがな、マイカちゃんとみおんちゃんがメインだ(と私は思っている)。
「じゃあやろっか」
通しをして録画を確認して、と繰り返し、間違いなく振りの決まっているところは出来るようになってきた。
けれどもフリーの部分のわざとらしさがまぁ抜けない。
「どう思うマイカちゃん?」
「表情がひどい。それとどうして良いのか分からなくてまごついてるのを必死になって誤魔化してる」
「紫輪さんは?」
「楽しんでるのは分かるし、手を振ったりしてるけど、そうしてる自分が楽しい、みたいな?」
言語化が若干怪しいけど紫輪さんも、マイカちゃんも直さないといけない部分については分かってはいるみたいだった。
「お互いに気付いたところは?」
「・・・紫輪さんはお客さんがいればなんか直りそう」
「言って良いのかな・・・作り笑いしようとして出来てないから、いっそ表情作らなくていいと思う」
何度も録画再生を繰り返せば流石に紫輪さんも気付いてしまう。マイカちゃんが笑顔を作れない事を。
「私思うんすよ。例えば美味しいもの食べたりしたら自然と顔の力が抜けたり、目が開いたりするじゃないですか?だから無理に顔を作らなくても、楽しいって思えたら勝手に顔が動くんじゃないかって」
体力も減ったからかいつもより遠慮が無い言い方だ。
「そんな行き当たりばったり!」
「ほら。今は不安とか不満が表情に出てるじゃないですか。気持ちは表情に出る証拠ですって」
「・・・マイカちゃん」
「葵」
「スクールアイドル、楽しい?」