偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
月曜日が近いよ、というより月曜日そのもの。
結局土日は部屋の整理に使ってしまった。だけどそのかいあって段ボールから無事に荷物は取り出せた。
これがマンガでも入っていようものなら引っ越し作業の手を止めて読んでいたであろうが、今は電子書籍の時代。作業前に友人である錦上マイカにタブレットを預けていた私、令沢葵は中々賢いなと自画自賛していた。
「マイカはもう部屋片付いた?」
寮から登校するまでの間、隣を歩くマイカに話を振る。
桜を背景としたマイカの綺麗な長い赤毛が良い案配にコントラストとなっていて短い登校時間が更に短く感じそうだと思った。
「片付いたよ。私はそんなに荷物は持ってきてないから」
「華の女子高生がねぇ」
「いいの。私はここで今までの私から変わ・・・いやここで花咲くの」
花咲く、その独特の言い回しはマイカから良く聞く。厳密にはマイカの言葉ではなくつい先日卒業していった蓮ノ空のスクールアイドルクラブの先輩、日野下花帆さんの決まり文句だった。
マイカはその日野下花帆さんがいたからこそ蓮ノ空に入学したのだから当然ながら色々と影響を受けている部分は多い。
「花咲くねぇ・・・スクールアイドル、本当にやるの?」
スクコネを使ったリアルタイム配信が殆ど出来なくなる今年、どうあっても日野下花帆さんと全く同じ活動という訳にはいかないからだ。
「やれると思う?」
「いやいや、急に弱気にならないでよ。もう蓮ノ空に入学したんだよ!あとに引けないでしょ」
「でも、ほら、去年はラブライブ!出ないって後だしされて蓮ノ空から出ていった生徒もいたって言うし・・・」
「それは覚悟ガンギマリしてた人だからでしょ!マイカそういうタイプじゃないじゃん」
入学式の日には「日野下花帆のいた場所を確かめる(キリッ)」なんて言っていたのが懐かしい。
ぶれぶれじゃんね、と思いつつも人間だからしかないよね。
「そうこうしてるうちに学校着いちゃったね。このままじゃあっという間に放課後も来るし、部活体験期間も終るよ?」
急かすつもりはないけど、私はマイカの背中を押す。というよりスクールアイドルクラブに押し付ける。だってマイカがステージに立つ姿はきっととても絵になるから。
「今日も行くんでしょ?」
「うん」
とりあえずまだ糸は繋がっていることに安堵した。一日の始まりは可もなく不可もなく。世は全てこともなし。卯辰神のご加護があらんことを。
そう、私達の高校生活はまだ始まったばかりなのだから。