偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
週が明け、月が替わり、制服も替わる。衣替えの時期の到来だ。
えんじ色のセーラーワンピースの冬制服もシックで瀟洒だけど、白の半袖夏制服は涼やかでどちらも違った味がある。
徐々に高まる湿度を感じてきた今日この頃、衣替えはベストタイミングだろう。
試着以外では初めて袖を通す夏制服。鏡で全身チェックしておかしなところが無いか確認する。
スカートの丈感とかストレートに着ると一番締まりのいい着こなしになるところは蓮ノ空の制服のセンスの良さだ。
時にはこの制服がそのままステージ衣装として使われたりもするのでちょっと動いて可動域の確認してみたりも。うん。動きやすいし、鏡の中の自分の姿はそれなりに様になっているように思えた。表情以外は。
内心の不満は意図しなくても顔に出るのに笑顔だけは意識しても上手く作れない。
「ラブライブ!フェス、か」
セラス先輩が言い出してからラブライブ!やスクールアイドル界におけるターニングポイントとなったスクールアイドルのパフォーマンス映像を見た。どれもみんな輝いてて、きっと"乗り越えた"人達なんだろうなと、そう思った。
だからラブライブ!フェスでそんな人達に出会えたら、何かヒントがあるかも知れない。自分が変わるような何かが。そう思うと幽かに胸の高鳴りがする。そんな気がする。百生部長も口をすっぱく言ってくれるがこの感覚を逃がしてはならない。一つ一つの心の動きを捉える。その先にきっと答えがあるのだと。
「もしも許可が下りたら」
早ければ今日、ラブライブ!運営から返事がくる筈なのだ。
許可さえ下りれば動き出せる。そうなれば私は私のためにも全力でラブライブ!フェス開催に向けて手伝うつもりだ。
入学する前にはこんな風に何かに打ち込むなんて想像もしていなかった。
ただ逃げて嵐が過ぎ去るぎるのをそっと見送る。そんな風に思ってた。
でもあの日、Bloom Garden Partyの日に出逢ったお節介でお人好しで、でも自分の楽しさを最大限に追及するあの人。そしてスクールアイドルクラブを見て変わろうと思った。思ってしまった。
一度そう思ってしまったのなら今更止まれない。
私は自分の笑顔を。自分を取り巻く世界を感じる心を取り戻す。鏡の中の自分の表情からはそんな気概を感じた。笑顔からは程遠いけれど。
「忘れ物なし」
制服の構造がちょっと違うからスマホやキーケースなどポケットに入れた感覚が微妙に違うけど、身に付けるもの、持つものを持って私は部屋を出る。
「行ってきます」
入部体験の時に百生部長から貰った寝そべりぬいぐるみに見送られて。