偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
週末には体育祭がある。標準的な学校行事だし、運動は特別得意でも苦手でも無いのでそれだけならば特に思うことはない。
「これ、おへそまで出てるんですけど」
応援合戦でパフォーマンスはまぁ分かる。声出しを煽る役目は人前に出る人達程効果的だからだ。だけどこの露出の多さはなんとかならなかったのかなぁ。そりゃ先輩達が着ていたら凄く絵になると思うけど。
「チアリーダーモチーフだからね。花帆先輩と一緒に作った自信作・・・なんだけど、自分で着るのはハードルが高いっていうのは分かる」
百生部長も自分で作ったこととモチーフはどうあれ自分が身に付けることの恥ずかしさの板挟みなのだろう。頬を掻いている。
「というかそのくだりは姫芽とやって既に敗北しているので今更変えられません」
「百生部長弱すぎじゃありません?あ、すみません。流石に言い過ぎました」
ただまぁ、百歩譲って着るとして、チアリーダーのような弾ける笑顔なんて私に出来る気がしない。不気味に顔を歪める自分の姿を想像して、自分の笑顔のイメージが沸かないことに鬱々とする。
「私、たぶん笑顔作れませんよ?」
「そこはほら、練習と思って」
「練習って」
「今出来ないことを直ぐに出来るようになんてならないんだから、大きい声出して、体から酸素抜いて、頭を空っぽにした時、どんな表情になっているか想像できる?」
確かにこういう機会でもなければそんなシチュエーションにはならない。やったことのない試みに対し初めから成果はないと決めつけるのはよくないことだ。
「あと折角だから撫子祭なんだけど、伝統曲をやろうかなって考えてるんだよね」
「チア衣装からインスピレーションでも受けました?」
「正解」
OPENING!FesLIVEの時は用意してくれた新曲"水面ラビリンス"を披露した。
入部して2週間そこらでライブだというのに完全新規の曲を用意していると言われた時は驚いたけど、そこまでしてくれることにこんな私でも歓迎してくれてるのかなとスクールアイドルクラブの懐の広さを感じた。
百生部長は私に沢山の初めてを体験させようと色々と考えてくれている。練習はともかく伝統曲の披露というのは初めてなので緊張なのか興奮なのか心臓が高鳴っている。
「伝統を引き継ぐ。私の個人的な目標に付き合わせることになるけど、力を貸してくれる?」
「はい。スリーズブーケの、後輩ですから」
だから私は貰った分はちゃんと返せるようにと、そう思っている。