偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話   作:マーケン

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4月7日(火) 錦上マイカの昼食事情

 全寮制の学校での生活はまだまだ慣れない。

 引っ越したばかりで片付けに使ってしまった休日。新しく始まった高校の授業。スクールアイドルクラブ(体験だけど)。それらの忙しさにかまけて、私はまだ自炊ができないでいた。決して学食や寮の食事が美味しいだとか、自炊は面倒だとかではなく、新生活が慣れていないからだ。慣れて、いない、からだ。

 

「また来てしまった」

 

 見上げるほど高い大きな窓には小雨ぱらつく空が覗いている。今日もまた私、錦上マイカはお昼のため学食へと足を運んでいた。

 全寮制の学校とあり大きく立派な作りの食堂はいるだけで学生という身分を忘れそうになる。恥ずかしながら未だにお上りさん気分は抜けていないようだ。

 

「日替わり定食Bお願いします」

 

 とはいえいちいち感動していたらキリがない。

 どうやらこの時期はわたしのように本当にやむを得ず学食に来ている一年生が多いため早く動かないと席を確保するのが難しいのだ。

 ここ最近は窓側で景色を眺めながら食事するのがマイブームなので、定食を受け取ってそそくさと窓際の席を探す。

 窓際には4人座れるテーブル席しか無いので一番手だと気まずくないのだが、今日はどこを見てももう誰かしらが座っている状態だ。

 先輩が座っているテーブルに相席するのは躊躇われるので、自然と同じ学年を示す制服の赤いスカーフを探した。

 

「すみません、相席良いですか?」

 

 幸い直ぐにそれは見つかった。もっとも、スカーフ以上に青いカーディガンが目立っていたが。

 

「ぞぞぞ、じゃない。どぞどぞ。同じ一年でしょ?遠慮しないで」

 

 頭に二つお団子を付けたカーディガンの子は、うどんを啜りながら気安い感じで着席を勧めてそのまま話し掛けてくれた。

 

「あなたスクールアイドルクラブの子でしょ?」

 

「え、いやいや。体験だけです。まだ」

 

「そなの?」

 

「ってか何で知ってるの?」

 

「スクールアイドル好きだからねぇ」

 

 その子はそう言っていたずらっぽく笑った。

 言われてみるとなるほど。髪の毛にインナーカラーを入れる。そしてカーディガン。もう卒業しているがDOLLCHESTRAにいた夕霧綴理先輩、村野さやか先輩の概念を自分なりのカラーに取り入れたファッションだ。スクールアイドル好き、には説得力があった。

 

「同類・・・!」

 

 私もまた村野さやか先輩と同期の日野下花帆先輩に影響を受けた身。流石にちょっと嬉しい。

 

「ま、あたしは見る専だけどね」

 

「ならないの?」

 

 スクールアイドルに、とは言うまでもない。

 

「あたしがスクールアイドルになれるわけないじゃん、ムリムリ!」

 

「それ、ムリじゃなかった、ってなるやつだよ」

 

 どうやら興味はあれどもあまり進んで話したいことでも無いようで彼女は音を立ててうどんを平らげると席を立った。

 

「あなた達の活躍、楽しみにしているからね」

 

 そう言い残してDOLLCHESTRA概念の子は食堂を後にしたのだった。

 

「私も人のこと言えないか」

 

 未だ入部届を出してないのに人にとやかく言えない。

 もし次に話す機会があるならその時、私は入部しているのだろうか?

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