偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
蓮ノ空女学院は学問・文化・芸術に特化した学校だ。だから運動系の部活も必然的に技の出来映え点や芸術点があるようなものになり、陸上競技や球技といった多くの高校で当たり前にあるような運動部がなかったりする。それが何を意味するかというと、学校内に限定すればスクールアイドルクラブの運動能力はかなり上位に食い込むということだ。
「泉ちゃんが頼みだよ」
「ああ。頼まれたからには精一杯頑張らせてもらうよ」
朝のホームルームが終わって、一限が始まる前の5分間。ノートや教科書を準備しながら隣近所のクラスメイトと雑談に興じる。内容は自然と直近に迫る体育祭の話題になった。その流れでクラスメイトから頼られることが多い。去年なら考えられないことだ。
もう一年蓮ノ空で過ごしたからか、良い意味でみんな私という存在に慣れてくれて気安く話し掛けてくれるようになった。
「とは言え、一人でどうにかなるものでもないしね。楽しんでやってこう」
「蓮ノ空の体育祭はエンジョイ系だしねー」
自分でいうのもあれだけど転入したての頃はそれはもうクラスに芸能人が来たみたいな扱いだったし、みんな牽制して声を掛けてくれないし、掛けてくれても畏れ多い、とか王子様扱いとか、とても同級生にする距離感じゃないので困っていたものだ。
「そう言えばチアやるんだって?めっちゃ写真撮るね」
「撮るのは良いけど晒すのは止めてくれよ?」
「私をプリクラ晒すナツミみたいに言わないでよ」
「そのネタ、分かる人はどれくらいいるんだろうね?」
ローラの傷だらけというゴールデンボンバーの曲の一節。私じゃなければ見逃しちゃうだろう。いや本当に。
「そういって拾ってくれるからぶっ込めるよね」
「やれやれ・・・・・・やれやれとかリアルで言うんだな」
完全なる私達の身内ノリで笑いが起きる。他愛のないきっと数分後には忘れてしまうような会話。去年の私ならそれをきっとフラットな気持ちでしていただろう。けれども今はそんな他愛のないヒトトキをアホだなぁとか笑いながら楽しむことが出来ている。
誰かに寄生しなくてもその時その時に気持ちが動く。そんな日々を私は今過ごせている。
セラスが、スクールアイドクラブのみんなが私を変えてくれた。いや、戻してくれたからだ。
蓮ノ空女学院3年生、桂城泉。スクールアイドルクラブ所属の大人になる前のモラトリアムな女の子。なんてね。
蓮ノ空の生徒で居られる残り9ヶ月。そんな毎日を噛み締めて私は色のついた季節を巡ろう。
明日は虹ヶ咲8th東京公演に参加しますので更新が滞る可能性が高いです