偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
蓮ノ空の校庭は運動系の部活が盛んでない割にトラックもあるし芝は手入れが行き届いていてかなりしっかりしたものを持っている。正直宝の持ち腐れの気もするけど、今日という日にはこれ以上の舞台は無いだろう。そして、文化系の学校であるだけあり、装飾とかがいやに凝っている。使いまわしとはいえ入場門は落ち着きと華やかを両立するようなえんじ色で綺麗に塗装されているし、選手入場で持つプラカードはデコられている。組みごとに違うデコりかたでその段階から張り合っている様子が伺える。
そして、これまでのイベント事のノウハウを集結しているのかプログラム進行のアナウンスやBGMの音響がやたらいい。
それなのに競技そのものはレベルがそれ程高いわけではない。実力が低レベルで拮抗しているがために泥試合が多く、どちらが勝つのか分からないという変に見応えのある体育祭だった。
「マイカちゃん、パン食い競争頑張ってたね」
「葵もリレー、凄かったね。みおんは玉入れで大活躍だったね」
「普通っすよ、みんなが動きを躊躇ってるだけです」
スペシャリストが不在の体育祭。ともなるとどんな人が活躍するかと言えば思い切りのいい人だ。
年頃の花も恥じらう女子高生ともなると、外見を気にして激しく動くことを躊躇する傾向にあるけれども、そんな感性なんてはじめから無いみおんは、縦横無尽に動き回っていた。スクールアイドルクラブで増えはじめた体力も相まって運動量と試行回数で成績を出していたのだ。
「みんな体操着だってのに汚れること気にしたり、前髪気にしたり、気が散りすぎなんですよ」
「みおんちゃんらしいね」
今年初めての蓮ノ空の体育祭を経験した106期生の3人は体育祭終了後、込み合う風呂を後に回して食堂で早目の夕食をとっていた。
今日の日替わりメニューは体育祭を意識してかガッツリ系。ニンニクもマシ放題と寮という隔離空間だからこそ許される大罪。
もちろん3人ともその罪を甘んじて受け入れている。今日は寮が臭くても誰が臭いのか分からないのだから入れ得なのである。
「マイカちゃん、楽しかった?」
「事あるごとに聞くよね葵。まぁ普段と違う刺激を受けられたよ」
「またそうやって。素直じゃないところも可愛いけどさ」
つんつん、とマイカの頬をつつく葵の手を何の躊躇いもなく除けるマイカの様子にみおんは苦笑した。
「私は楽しかったっすよ?こう、プリミティブな衝動で動けるというか」
「みおんちゃん、焼け野原でも作りたいの?」
葵の言うことに疑問符を浮かべるみおんを他所に、ふと気づいたようにマイカは葵に確認した。
「葵は?葵は楽しかったの?」
「私?私かぁ・・・順位を競うって点だと退屈だったけど、エンターテイメントとしてなら楽しかったよ」
お風呂が空くまでの時間、3人はそんな雑談に興じるのだった。
なんだかんだで付き合いの良いマイカ。積極性のある葵。距離感が分からない故に踏み込むみおん。スクールアイドルクラブが生んだ縁で3人はなんだかんたで一緒にいることが多かった。
これはそんな一時の日常の1ページだ。
女子高の体育祭の様子なんて観られるわけないだろ。
観たい人は結女体育祭に行くように