偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
撫子祭に向けて資材調達する時間がある最後のチャンス。ここを逃すと平日放課後に弾丸しなければならないため、この日の蓮ノ空生の朝は早かった。
週一しか動かない学校のバスなど宛にならないので当然市営バスになるのだが強者は徒歩でダウンヒルだ。かくいう徒町もその一人で、二人目にセラス後輩が、三人目にみおん後輩がいた。
撫子祭の調達の前に近江町市場でのお手伝いがある。セラス後輩がDOLLCHESTRA入りしてから初めてのお手伝いなので改めて報告しなければならない。
「れいかさん!遂に、セラスちゃんがDOLLCHESTRAに入りましたよ!」
「あらあら。今年のDOLLCHESTRAは賑やかになりそうね」
「任してください。私が、いえ、私達が沸かしてやりますとも」
私達の窓口になってくれるれいかさんはセラス後輩のことを勿論知っているので話が早い。
それにしても賑やかに、というのが盛り上がる的なニュアンスとはちょっと違う気がするけどその小さな疑問も朝イチから動き出している人波に飲まれて消えていった。
「もうすぐ撫子祭でしょ?楽しみねえ」
「毎度のことながら今年も皆様にお世話になります」
近江町市場には少なくない数の蓮ノ空OBがいたり、単純に地域の活動に協力してくれる人が沢山いる。廃パレットだとか段ボールだとか文化祭で何かと消費する物資をお裾分けして、更には蓮ノ空にまで届けてくれたりするのだから頭が上がらない。
「みんなにも伝えておくね。それに、セラスちゃん」
「はい?」
「Edel Noteの"咲かnow!"、鮮魚系のお店で大人気なんだよ」
「ま、まことですか!?」
「セラス先輩、驚きすぎて武士語になってるっす」
"咲かnow!"はその語感の通り魚を曲中にふんだんに散りばめたコンセプト的にはコミックソングなのにインテリジェンス溢れた妙作となっている。
その枠で例えるなら、みらくらぱーく!のマハラジャンボリーのようなものだ。
「嬉しいです。魚を食べると頭が良くなるあれと同じ扱いなんて光栄です」
「ユニットは解散しても作った物が残って誰かに届く。なんだか素敵だね」
誰が作ったのか?何て曲なのか?何一つ知らないけど頭に残る音楽。それは作曲家として一つの到達点なんだろうなと徒町は思った。
「こうなったら市場を私達の曲で埋め尽くせるように・・・」
「セラス先輩!それはDOLLCHESTRAコミックユニットルート入るやつですー!抑えて」
「小鈴ちゃん。大変な後輩抱えちゃって、ずいぶん楽しそうじゃない?」
流石はれいかさん。よく分かってくれてる。
こんなに愉快なDOLLCHESTRAなんて想像もつかなかったけど、きっと面白いことが起きる。
「これが106期DOLLCHESTRAですから。観ていてくださいね、れいかさん」
根拠は無いけど、確信をもって私はそう答えるのだった。