偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
線が示すは世界を分かつ別れ道。大きなものから個へと生まれ変わるための導線。走らせる刃は迷いなく、命の元が出来上がる。
ナニカだったものは糸を通して名前を刻まれ、形ある物へと姿を変える。
転写と裁断と縫製。言ってしまえばそれだけなのだけど、それぞれの工程には意味がある。なんて私は以前そう思っていた。そう思っていれば大変な工程でも苦ではなかったしそれが楽しいとも思っていた。
でも、最近は意味がある、というより工程の一つ一つには物語がある、と思うようになった。それはきっと物語が大好きな花のような先輩の影響なのだろう。本人には絶対に言わないけど。
「柄物なんかは特にだけど生地にも表情があるの」
今日の部活体験ではみんなで衣装制作をしている。とは言っても実際の衣装を作るには時間も予算も足りないので、寝そべりぬいぐるみの衣装だ。
「どう魅せるのかを考えながら作ってみましょう」
加賀縫の工房を営んでいる実家には時折、引っ越しや遺品整理などで引き取り手のいない着物などが人伝に回ってきたりする。古くなって傷んでいるものなども珍しくなく、使える部分だけ再利用したりする。今回使っている生地などがまさしくそれだ。
「質問良いでしょうか?」
「はい錦上さん」
「なんでベースになる寝そべりが全部日野下花帆
さんなのでしょうか?」
「良い質問ですね。シンプルに沢山あったからです」
明るい髪色をした花帆先輩(寝そべり)に似合う衣装を作るには色彩感覚を働かせなくてはならない。工程に差が無い分、こうした部分で工夫する余地を作っているのだ。なぜ沢山あるのかは、私にも心当たりはない。
ただ、錦上さんは私の説明にイマイチ納得していないような怪訝な表情をしていた。
まぁ、今日は作る楽しさ、難しさを体感することがメインなので、細かいことは気にしない。
「今日作った衣装を着せたら花帆先輩に写真送るからね」
「ーーーーーー!」
その一言に錦上さんは驚いた表情を見せ、その後物凄い集中力を見せた。
他の参加者も続いて集中する人、連れと相談しながら手を動かす人。はじめから型紙を使う気の無い破天荒な人。色々なタイプがいるけれど、みんな自分なりに楽しそうに作業していた。
このままみんながスクールアイドルクラブに入るということはたぶん無いだろう。けれども、こういった原体験が今後の蓮ノ空生活に何かしら役に立ってくれると私はそう信じて今日もスクールアイドル生活を送っている。
後日談、というか夜、皆が作った衣装を着せた寝そべり集合写真を花帆先輩に写真を送ったら「吟子ちゃん、私のこと好きすぎ。私も大好きだよ」なんて返事がきた。
私が作った訳じゃないって言ったのに、花帆先輩のだらっ