偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
昨日のFes×LIVEの反応は上々だった。特にセラス後輩も加入した106期DOLLCHESTRAは温かいコメントが多く寄せられていた。
「ということで、プレイバックしてみよう」
「小鈴先輩、流石にこれ何回目か言わないとダメですかね?」
「嬉しくてついね~」
セラスちゃんから珍しくジト目で見られる。
でも嬉しいことは何回でも共有したくなるものだと徒町は思うのです。
「という訳でポチ」
折角DOLLCHESTRA3人で徒町の部屋に集まっているので時間は有効に使わなければならない。
みおんちゃんに促すと、みおんちゃんはやれやれと言う風に肩を竦めて昨日のFes×LIVEの映像を再生した。
暗転したステージの微かな目印を頼りに移動する。
ポジション0、すなわちセンターに私は立つと目の前でキラキラと輝く光の海から目を反らし下を向いた。
コンマ数秒の静寂。客席から息を呑む気配が緊張感を高まらせる。
静寂を破る4連シンバル。ドラムの打ち込みがリードするDOLLCHESTRAの新曲"オーバーテイク"
曲の始まりとともに閃光のようにチカチカと照明が明滅する。
顔を上げて客席を真っ直ぐ射貫くように見詰める。
加速する鼓動はペダルを踏んだエンジンのように私を昂らせる。
"出だしで躓いたって 何回同じとこ回ったって"
それは誰かの背中を見るスタートだった私達の歌だ。
無様で、綺麗ではなくて、でも徒町は、セラス後輩は、みおんちゃんは立ち上がるのを、進むのを止めない。
膝を折ったり、手を付いたり、そんな大きな振付は私達の道のりの過酷さをより困難に見せる。けれども、こける時も立ち上がる時も全力であることはやめない。それが今のDOLLCHESTRAだ。
"全力で浴びるのなら きっと雨も気持ちいいさ"
前に、前にと手をのばすのを止めない。
泥にまみれ、雨に曝され、それでもめげずに進み続ければ、いつか浴びるのは称賛と栄光のシャワーだ。
"光る風を追い越して まだ誰の背もない景色へ"
センターには徒町が、セラス後輩が、みおんちゃんが競うように入れ替わり、曲の終わりまでステージを駆け抜ける。
私達は何度も色々なところで追い掛け、追い抜き、駆け抜けるのだ。
こうして私達106期DOLLCHESTRAは改めてスタートを切った。みんなより出遅れたけれど、それも徒町達らしいあり方だとそう思う。
いつか誰かに認められるように、それ以上に自分を誇り、認められるように私達は歩き出す。止まらない時の速さに負けないように。