偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話 作:マーケン
目の前に広がるシュバリエグリーンに染まる景色。そこに足を伸ばすように一歩、一歩とステージを前へと歩みを伸ばす。
"瞬き 巡るよ 旬春瞬"
それはあっという間に終わった春への惜別。
星が流れるように過ぎた日々を明日への楽しみにするために、この瞬間をかき回す。
号令のようなホイッスルの音を皮切りに私はタオルを大きく回した。
いわゆるタオル曲だ。
去年のみらくらぱーく!を見ていて羨ましいと内心密かに思ったいたから今回のFes×LIVEで私も冒険しようと思ったのだ。
"遠くに響く あの声も 空を駆ける あの影も"
思えば随分と人から貰ったものだ。Tシャツを捲ってノースリーブにした腕を回してみんなを煽りながら改めて思った。
誰かの楽しいに感化されたことも、こういうちょっとおどけたように羽目を外すのも、スクールアイドルクラブでの日々がもたらしたものだ。
格好良い王子様を欲している子には悪いけれど、今年の私は遊び心を隠したくはないんだ。
"張り付くシャツで汗ぬぐい 行くんだどこまでも"
客席降りしてみんなの間を走り抜る。
驚く顔、仰け反る人、膝を折る人、熱気のまま拳を突き上げる人、本当に沢山の人がこの瞬間を楽しんでいて、感情の坩堝を行く私は間近に見えるその一つ一つの顔を目に焼き付けた。
"更に次へと シューシューシュー"
瞬間を捕まえて、熱気を巻き込み、来る夏へと思いを馳せる。
みんなと過ごす暑い日々を私は待ち遠しく思っているからね。
最後は宙に舞うタオルの景色をみんなで作り、新曲"旬春瞬"は幕を下ろした。
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余韻に浸る、という事を覚えた私も流石に気持ちを切り替えなければとお風呂上がりに捕まえた葵くんをラウンジに連れ込んで撫子祭の思い出についてファミレス雑談していた。ファミレスではないけれどね。
「スクールアイドルクラブに入ってか桂城先輩の印象かなり変わりましたね」
「そうかい?なら嬉しいかな」
去年までとは違う姿を感じているということは自分の見せていなかった一面を見せられるようになっているということだ。まぁそれに対して理想像を壊されたと思う人もいるかもだけど。
「入る前はシンパシーを感じてたんですけど、何か先を越されたような感じですね」
言われてみれば葵くんも私同様、やれば何でも出来てしまうタイプ。
生来の気質を葵くんは振り回されているのかもしれない。だけど、それについての答えを私は持ち合わせていない。
「たぶん私のケースは君のケースは違う」
「ですよね。ただ蓮ノ空ならきっとって、そう思ってます」
どこか寂しそうに言う葵くんの言葉がいやに耳に残った。