幼かったあの日の事を、今でも鮮明に思い出す。
生い茂った緑の中にある、巨大な杉の木を中心とした空間。人工物が全くないそこを、知っている人たちは『久遠杉公園』と呼んでいた。そこは限られた人しか入れなくて、一度だけ友達を誘った事もあったけど、公園に着いて振り返ったら私一人だった事をよく覚えている。
そこで過ごした最後の日、いつの間にか杉の根元に空いた洞、気になって覗いてみた先にいた痩せ細った男の子。私は泣きそうになるほど底なしの虚ろなその瞳を見て、両親に助けを求める声を涙ながらに上げながらその痩身に駆け寄った。握った手の感触は今思えば不自然なほど希薄で、温もりも冷たさも伝わってこない。そんな彼に、両親が駆け寄って来るまで呼び掛け続けていた。
『イヤだ、消えないで!』
初対面の相手にすぐ駆け寄ってそう声をかけれたのは、幼さ故だったのか、それとも……
そして今
花の女子高生となった私の目の前に、七色に光る電柱がある。
「デ、デジャブ……」
あの後、公園と共に初めから存在していなかったかの様に消え、今では都市伝説の中でのみの存在となっている巨大な杉の木と、七色に光る……ゲーミング電柱。意味不明な響きだ。だが、そうとしか言いようがない。それまでにこの造語と意味不明な電柱はマッチしている。まだあの杉の木の方が……いや、あれもあれで100メートルを優に超えるデカさでギネスで出ていないどころか公的に認知されてなかったし、公園の外からは見た覚えは無かったし、現実離れはどっちもどっちだったか。
閑話休題
改めて見てもジャンルは違えど既視感を覚えてしまう。こう、中から何かが出てくるかのような……
プシュー
その予感に答えるかのようにゲーミング電柱がスモークを吐き出した。続いて電柱の真ん中に突然扉のような切れ目が入り、その扉に竹をモチーフにした取っ手が生えて観音開きに開いてゆく。
そこには
カラカラカラ
「ふぇ……ふぇ……」
ふりふりのクッションとピンクのガラガラ、クルクルと回る小さなメリーゴーランドの玩具、そして、それらベビー用品の主たる赤ちゃん。
──今は昔……ではなくて。
──今とあんまり変わらない、少しだけ未来の世界。
──ゲームしている普通の女子高生ありけり。
──名をば、酒寄彩葉となむいいける。
──彩葉って呼ぶべし♪
──彩葉が家につくと、なんと、もと七色に光るゲーミング電柱なむ一筋ありける。
──あやしがりて寄りて見るに、電柱の中光りたり。
──それで彩葉はこう言ったの。
「取り敢えず、元気そうで何より!」
──あれ?
「おい、それ俺の時の事思い出して出た言葉か?いや、心身共にクソ不健康だったが」
「イチ兄!」
──あれれれ?
──あなたダレ!?