魔王を頂点とした魔族は人間の集まりくらいしていた王国を何度も襲い、人間を混乱に陥れた
しかし人間もやられてばかりではない
強き人間達は勇者となり、自ら打って出て魔族を倒した
そして、ついに魔王をも倒し世界に平和がもたらされた
そう思われたが…
今度は自らの職を失った勇者達が暴徒化
盗賊同然となり各地にのさばった
一方、王都では”魔法”と呼ばれる技術が最近台頭しつつあり…
そんな世界のお話です
やれ治安が悪いだ、勇者だ、賊だ、魔法だ。
そんなことはさておき、王国の最も辺鄙な土地にある要塞があった。
その要塞の一室にはとあるゴブリンが一匹。
誰が呼んだか名前は”ゴルゴリ”。
ゴルゴリの容姿は、緑髪、金眼、頭部に小さく生え頭髪に覆われた角を除いて人間そっくりだ。
そんなゴルゴリはその部屋の机に向かって伏していた。
腹が減ったのだ。
なぜ腹が減っているのか?
そもそも何でゴブリンがいるのか?
説明しよう。
そのそもゴルゴリ達ゴブリンも魔族の一員だった。
しかし、ゴブリン族というのは皆おし並べて無能。
力も弱ければ、怠慢ゆえにマシな頭も碌に使わない。
とはいえ、同士討ちもまずい。
そこで、ゴブリン族はこんな人ひとりも来ないような荒地で見張りをさせられているのだった。
いわば左遷、窓際族。
そんなゴブリン達は食料だけはちゃっかりもらいながらぬくぬくと暮らしている内に…
子孫も碌に作らず、そしてついには魔王も殺され、今や人間にすら忘れらてしまった
そして、現在のゴルゴリに至る。
さて、ゴルゴリである。
ゴルゴリ「お腹減った…苦しい…と言うよりもう痛い」
とにかく腹が減っている。
ここ十年分の食料も数日前に全てを食い尽くしてしまった。
そんなことを思いながら昨晩からずっと突っ伏している。
ゴルゴリ(このまま死ぬのか?餓死なのか?)
そんなことを思っていたその時、
ドサリ
と外から大きな音がした。
ゴルゴリ(何があったんだ?)
思わず窓辺に駆け寄る。
ゴルゴリ(おいおいどう見ても自然音じゃねえよな。最近人間社会では元勇者が暴れてるって聞くし、盗賊だけは頼むからやめろよ…)
そう願いながらそろりと顔を覗かせると
砦の前に倒れているのは、大きなカバンを背負った男だった。
結論から述べよう、その男は傷だらけで、既に死んでいた。
そして、それはゴルゴリにチャンスが開かれるきっかけでもあった。
いや、最初に男を見た時は助けてやろうと思ったのだ。
包帯と水を抱えて男の元へ駆け寄ったし。
助けて、そしたら何かのお返しが貰えるかも、と思っていたのだ。
しかし来た時には、その男は既に死んでいた。
そこで、ゴルゴリはせめてでも男の持ち物を有効活用しなければとカバンの中を漁ったのだ。
ゴルゴリ(いやその、これは狼藉ではない。死体漁りでもないぞ。もったいない精神に基づく資源の有効活用だ)
ゴルゴリは根本的には魔族なのでこういうところもあるが、まあ見逃してやって欲しい。
さて、ゴルゴリがカバンを漁っていると不思議なものを発見した。
腐った食料、水、色々と入っていたが不思議なものというのは
数冊の分厚い本。
一冊目は「新発見!魔臓の働きとその基礎」
二冊目は「基礎魔法習得」
三冊目、これは分厚い紙束で題名がなかった
四冊目が、「魔法使いギルド試験への手引き」という薄めの冊子
これらが入っていた。
ゴルゴリ(なんなんだ、これ?)
そしてゴルゴリは、今後彼の人生を大きく変えるきっかけの本を、手に取り、読むこととなる。
ゴルゴリ(生き残るなら、これしかない!)
全ての本に目を通したゴルゴリはそう思った。
彼の心を真っ先に捉えたのは一番最後の冊子、「魔法使いギルド採用試験への手引き」だった。
その内容をまとめると、こうだ。
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屈強な勇者たちが暴徒と化してしまった今、新しい力「魔法」の使い手による治安維持が不可欠だ。
そこで、近年、王都では魔法の研究、そして魔法使いによる治安維持を行う「魔法使いギルド」が発展した。
そして、近々これらギルドでは新しい組員を一斉採用するつもりである。
名付けて「ギルド試験」!
とにかく人手不足だ!
履歴書、血統書不要、我こそはという者は来れ!
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そして、残りの本は魔法に関する本。
ゴルゴリ(賭けるしかない、このチャンスに!)
それから、ゴルゴリは腐った食料を口に詰めてはすぐさま荷物をまとめ、翌朝には砦はあとにしたのだった。
目指すは王都、そして採用試験!